スキルテスター!本来大当たりなはずの数々のスキルがハズレ扱いされるのは大体コイツのせいである

騎士ランチ

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第二章カスヤロウあがき編

あがき1:カスヤロウ、娘を地獄へ道連れにする

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 私はクレイム。この国で一番頭が良く、どんなピンチもチャンスに変えてきた男。

 私に語りかけてきたマーガレットとかいう奴がただの詐欺師なのか、本当に天使なのか見極め、その正体がどちらにしても骨の髄まで利用してやる。

「話をしたい。まずは姿を見せてくれないか?」
「心得た、ぬうん!」
 
 ボボボンと煙が上がり、声のイメージと寸分違わずヒゲマッチョが出現した。

「改めて自己紹介しましょうぞ!吾輩はマーガレット!貴方様をスキル試用者に足る存在とお見受けし、契約を頼みに来た天使ですぞ!」
「契約をしたいのなら、当然書類は持って来ているのだろう?」
「流石ですな!こちらが契約内容ですぞ!」

 空中に紙束が何枚も出現し、近くの机の上に落ちる。手の込んだ詐欺師という可能性は、契約書に触れた瞬間に消えた。

「神の契約書か」
「ご存知でしたか」
「私は職業上、契約魔術には詳しいのでね」

 この世界には、神や悪魔の作った契約書が実在する。その特徴として、特殊な魔力が紙に込められている事と、圧倒的な強制力がある。故に、これが私にとって特な契約としても簡単にはサインは出来ない。

「君が神の使いなのは信じよう。しかし、契約する前にいくつか質問したい」
「どんとこいですぞ!」

 契約の主な内容、日替わりスキルの事や不死身化の事を確認した私はマーガレットに質問を始めた。

「この契約書に書いてない部分について聞きたい。スキル試用者は全部で何人いる?」
「人間の住む国ごとに一人ずつ、なるべく試用者同士が関係を持たない様に配慮しておりますぞ!」
 
 ふむ、このアーモンド国に加え、カシュー、マカダミア、インゲン、それぞれに一人で合計四人のスキル試用者か。

「他の国にもスキル試用者はおりますが、まず貴方様と会うことはありませんから、他者からの意見抜きにスキルの感想を吾輩に教えて下さいですぞ!」

 そして、この国にはまだスキル試用者はいない、と。

「次の質問だ。もし、私が契約をしなかったらどうなる?スキルについて知る私が、新たに選ばれたスキル試用者と接触し良からぬ事を企むかもしれんぞ?」
「ご心配には及びませんぞ!我ら天使は神から暗示の力を授かっており、スキル試用者の観察に不都合があったと判断したなら、その都度第三者の認識に働きかけますぞ!」

 成る程、こいつの他にも契約者ごとに天使が監視しており、その天使の判断で排除されるか。ならば、契約は絶対にせねばならない。私が断って他の奴が契約して、そいつが得をするのを喜ばしいとは私は思えない。よって、契約。しかし、その前に最後の質問だ。

「この契約の通りなら、聖女は二度とこの世界に来ないから、人類にスキルを与える事にしたという解釈で合っているか?」
「はい、聖女システムの廃止は神の強い意思により決定されましたぞ。私はこの仕事の為に最近作られたので当時の事は直接は見てないのですが、先輩天使によると、ある国の一部の人間が聖女を己の為に利用しようとして、そのあげく大失敗したのを見て失望したそうですぞ」

 それ、私だ。去年私が企んで元王太子が婚約破棄で台無しにしたあの事だ。あの件、こんな形で飛び火しとったんかい。幸い、この天使はその事について特に悪感情を抱いてない様だし、取り敢えず私が原因なのはまだ黙っておこう。

「よい話を聞けた。ならば契約といこうか」

 私は聖女関連での動揺を悟られぬ様に、話を締めくくり契約書にサインする。

【私は契約内容を理解した上で神との本契約を結び、スキル試用者として励む事を誓います。クレイム・ナード】

「さて、行くか」

 契約を終えた私は、席を立ち部屋の外へ向かう。

「どちらへ?まだ、本日のスキルの説明が済んでいませんぞ?」
「それは後で聞く。今から家族会議だ。プライベートな話だから、少しこの部屋で待っていてくれ」

 私はマーガレットを自室に待機させると、娘の部屋に向かった。今までの話で一番重要な部分、それは聖女が本当に二度と来なくなったという情報。神の契約書に書いてあるのなら、それは絶対だろう。ならば、それを逆手に取る。

「マリア、入るぞ」

 領民からの攻撃を恐れずっと引きこもっていた我が娘マリアは、以前より美貌が確実に衰えていたが、まあ許容範囲だ。コレならあの計画を実行出来る。

「お父様、どうしたの?王国と聖女会への借金はどれくらいで返せるの?領民が働かず石を投げてくるのは解決したの?」
「どちらももうすぐ解決する。よく聞けマリア、今日確かな情報源から聖女が二度と来ない事を聞いた」
「それって、やっぱり私達のせいよね?」

 私はそれには答えず言葉を続ける。

「よって、偽聖女を活動させても本物が現れてバレる可能性は無くなった!マリア、今日からお前は真の聖女を名乗れ!」
「ええええ!?」

 実は聖女は我が娘だった。その主張が通れば全ての問題は解決する。私は困惑するマリアを引きずり、マーガレットの待つ自室へと戻った。

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