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第5話 夜の山を駆ける狼
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夜の山を駆けていく白狼。
日本狼の体長はおよそ1メートル前後と記録されている。それより現在やえが乗っている狼は相当大きい。やえに勿論そんな知識は無い。
ただ白い獣毛が生えた体にしがみつく。
「ぐぇ!
呼吸が出来ない、首を絞めるな」
「すんません、すんません」
やえが帰らんと言った後、主さんはしばらく黙っていた。そして「背に乗れ」と言った。なので現在、やえは山の主である白狼の背に乗って移動しているのだ。
「だけども、主さん早く走り過ぎじゃ。
何処にしがみついていいか、分からん」
辺りの景色は凄まじい勢いで置き去りにされて行く。強くしがみつかなければ落ちそうで恐ろしい。
「胴体にしてくれ」
そう言われてやえは狼の腹へ手を伸ばす。背中から手を伸ばし、両手をしっかり繋ごうとすると、狼の身体を強く抱きしめるようになる。
「その……あまり強く抱きしめるのはだな……」
「あれ、これも苦しかったですか。
でも主さん、早く走り過ぎです。
手を緩めると振り落とされそうでいけんね」
「分かった、速度を緩める。
…………女人とこんな風に触れ合うのは初めてなのだが……
こんなにも女人とは柔らかくて、良い匂いがする物なのだな」
後半は口の中で呟いており。おそらくはやえに聞こえないつもりで言ったのだろう。
だけど、やえは目が悪い分耳に神経を集中している。間違いなく聞き取っていた。
何だか頬が熱くてポーっとする。身体がフワフワするのは、狼の背で揺られているせいだけでは無い気がする。
狼の移動速度は確かにゆっくりになっていて。やえは腕に込めた力を抜くべきなのだけど。むしろやえの身体と狼の背がピッタリくっつく様に力を込めてしまっていて。主様は当然その事に気が付いている筈なのだけど、それ以上何も言ってこない。
一瞬の様にも、長時間の様にも感じられたその時間は終わった。
「降りてくれ」
主様に言われて、見るとそこには家が在った。丸太を組み合わせた小さな家。
「俺の家だ。
狭くてすまんが、ここで自由に暮らしてくれ」
日本狼の体長はおよそ1メートル前後と記録されている。それより現在やえが乗っている狼は相当大きい。やえに勿論そんな知識は無い。
ただ白い獣毛が生えた体にしがみつく。
「ぐぇ!
呼吸が出来ない、首を絞めるな」
「すんません、すんません」
やえが帰らんと言った後、主さんはしばらく黙っていた。そして「背に乗れ」と言った。なので現在、やえは山の主である白狼の背に乗って移動しているのだ。
「だけども、主さん早く走り過ぎじゃ。
何処にしがみついていいか、分からん」
辺りの景色は凄まじい勢いで置き去りにされて行く。強くしがみつかなければ落ちそうで恐ろしい。
「胴体にしてくれ」
そう言われてやえは狼の腹へ手を伸ばす。背中から手を伸ばし、両手をしっかり繋ごうとすると、狼の身体を強く抱きしめるようになる。
「その……あまり強く抱きしめるのはだな……」
「あれ、これも苦しかったですか。
でも主さん、早く走り過ぎです。
手を緩めると振り落とされそうでいけんね」
「分かった、速度を緩める。
…………女人とこんな風に触れ合うのは初めてなのだが……
こんなにも女人とは柔らかくて、良い匂いがする物なのだな」
後半は口の中で呟いており。おそらくはやえに聞こえないつもりで言ったのだろう。
だけど、やえは目が悪い分耳に神経を集中している。間違いなく聞き取っていた。
何だか頬が熱くてポーっとする。身体がフワフワするのは、狼の背で揺られているせいだけでは無い気がする。
狼の移動速度は確かにゆっくりになっていて。やえは腕に込めた力を抜くべきなのだけど。むしろやえの身体と狼の背がピッタリくっつく様に力を込めてしまっていて。主様は当然その事に気が付いている筈なのだけど、それ以上何も言ってこない。
一瞬の様にも、長時間の様にも感じられたその時間は終わった。
「降りてくれ」
主様に言われて、見るとそこには家が在った。丸太を組み合わせた小さな家。
「俺の家だ。
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