上 下
2 / 18

第2話 主様の声

しおりを挟む
ぬし様でしょか?」
 
 目の不自由なやえでも辺りが明るいか暗いかは分かる。洞穴の中は暗くやえでなくとも何も見えはしない。
 それでも動く物の気配を感じて、やえは誰とも知れない相手に声をかけた。

「私はやえであります。
 里から贄として来ちょります」

 食事として食べるのでも、女として扱うのでも、自分の身体を好きなように使って下さい。
 そんな台詞を言いながら、やえは自分の頬が赤らむのを感じる。
 男女の行為に関しては女衆に教わってきたが、実際にした経験は無い。山のぬし様がどんな相手なのか分からないが、若い娘を好むと言うのなら、その様な扱いも考えられる。

  
「生贄か……
 そんな物を頼んだ覚えは無いのだが、何故か定期的に送られて来るのだな」

 聞こえるのは男の声。少しくぐもった響きだが、間違いなく人間の言葉を喋っている。
 言葉のリズムが里の者と違う。もっと凶暴な雰囲気や、圧倒的な恐ろしさを予想していたのだが、その声には慎重さや何処か理性的な雰囲気を感じる。
 

「……今回は随分と若い娘だな。まだ子供では無いのか」
「子供では無いです。
 やえは今朝13になっちょります。
 あ……安心して下せえ。
 月のもんも来ちょります」

 顔から火が出そうなくらい恥ずかしい台詞。だが必ず自分から申告する様、奥様に言い含められている。
 やえは来るのが他の娘達より遅く、奥様を慌てさせた。
 まずいね。本当に子供じゃ主様に差し出せないよ。薬を食わせると良いかもしれない。
 あわひえしか無かったやえの食卓は急に豪華になり魚が出された。薬味と呼ばれる獣肉まで提供された。
 そのお陰かどうかは知らないが、無事12になって血の道が確認された。


「な!…………月のもの、って……お前、何を言い出している?」

 声の主は驚いている様だ。むせて咳込むような音も聞こえた。

「ちゃんと奥様から聞いちょります。
 月のもんが来ない子供では女として役に立たんって。
 やえはもうお役に立てます。
 使うてくれたら幸せます。
 あ、勿論……
 主様が女としてでのうて、ご飯としてお望みでしたらそれでええです。
 美味しいかどうか自信はもっちょりませんが……」

「娘!
 俺はそんな事は…………
 俺は生贄など望んでいない。
 お前は……もう里に帰れ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

宇宙との交信

三谷朱花
ライト文芸
”みはる”は、宇宙人と交信している。 壮大な機械……ではなく、スマホで。 「M1の会合に行く?」という謎のメールを貰ったのをきっかけに、“宇宙人”と名乗る相手との交信が始まった。 もとい、”宇宙人”への八つ当たりが始まった。 ※毎日14時に公開します。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...