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『冬はコタツでみかんだよね』の章

第61話

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餅子ちゃんは軽く酔いながらも確認。

「和泉さん、会社の手続きどうするんです。
 銀行に給与振り込みだって、口座の苗字変わったら振り込みエラー起きちゃいますよ」
「大丈夫だよ。
 銀行口座の名前も変えて無いもの」

「ええっ、もう結婚して数ケ月でしょう。
 何やってんですか?!」

だってだって。
平日は会社が有るし。
家に帰ってきたら、六郎さんがいて。
六郎さんが、二人だけの時は……和泉……なんて呼んできて。
それで……あなた……なんて呼んじゃったりして。
もう。
このこの。
そんな銀行とか、会社の書類とか考えるヒマ有るワケ無いじゃない。

「……あのですね。
 本来なら会社から祝い金だって出るんですよ」

「そうなの?!
 そっか、綱乃ちゃんも一週間お休みって言ってたね。
 それアタシも休んでいいの?」

「うーん。
 結婚してから三ヶ月も経ってから慶弔休取る人なんていませんよ。
 変な前例が出来るって、総務部長に怒られます」

そっかー。
しまったな。
困り顔の和泉さん。

するっと近づいてくる女性。

「餅子さんでしたかしら?」
「はい、甘粕餅子です」

餅子ちゃんの目の前にはフランス人形のような可愛らしい女性。
ウェーブのかかった髪、つけまつげもしてないのに長いマツゲ。
白い肌に桃色の唇。

「甘粕さん。
 姉は少しボケたところが有るんです。
 でもあたし、安心しました。
 甘粕さんのようなシッカリした人が姉の側にいてくれるなんて心強いです」

ニッコリ微笑んで餅子ちゃんの手を取る。
うわー、キレイで可愛い。
なんでもしてあげたくなっちゃう。
でも。

「いや、さすがにどうでしょう。
 忘れてたのは自業自得ですし」

「あらっ、そうなんですか」

秀瑚ちゃんが更に餅子ちゃんに近づく。

「さっき何か言ってましたわよね。
 やきもち焼かせようとしたとか。
 聞いていましたわよ」

餅子ちゃんにだけ聞こえる声。
ええっ、何時から聞いてたの?

秀瑚ちゃんは変わらず可愛らしい顔。
でも微笑みを浮かべたその目。
瞳の中が一瞬ブキミに光ったような……

「会社の方は何とかしましょう……」

つい言ってしまう餅子ちゃん。
別に年下少女に脅された訳じゃ無いからね。
でもなんかこの娘、逆らえない気が。

「そうですか、ありがとうございます。
 和泉姉さん。
 銀行やその他の手続きも、甘粕さんが調べて手伝ってくれるそうですよ。
 頼りになります。
 この方にお任せしちゃいましょう」

「ホント?
 餅子ちゃん、いいの」
「もちろん、良いですわよね。
 甘粕さん」

「は、はい」

なんか逆らえなくなってる餅子ちゃんなのだ。
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