和泉と六郎の甘々な日々 ～実は和泉さんが一方的に六郎さんに甘えてるだけと言う説も有るけど和泉さんはそんな説にはそっぽを向いている～

『秋は栗なのか芋なのか』の章

第25話

和泉さんは中華飯店へと戻る。
頭の中は聞こえた女性と六郎さんの声。
テルコ……とか言ってたような。
てるこ、照子、テルコ、女性の名前？
……って事は六郎さんが女性を下の名前で呼び捨てにしてる？！
適当に綱乃ちゃんの隣の席に座る。

さっと本庄猪丸が隣へ。

「ほらっ、柿崎。
　キミのドリンク」
「ありがとうございます」

つい杏露酒を飲み干してしまう和泉さん。

「今日は飲むな、和泉」

綱乃ちゃんも一緒にビールを飲み干す。
何杯目だろう。

「杏露酒、ソーダ割で。
　プラスビール大ジョッキね」
「綱乃さん、そこまでです。
　この前も飲み過ぎて寝ちゃったでしょ。
　あたしもう面倒見ませんよ」

「大丈夫、まだ意識無くす程飲んでないよ」
「良いんですか？男に意識の無い綱乃さんの面倒見させますよ」

餅子ちゃんが止めてるけど綱乃ちゃんは止まりそうにない。

和泉さんは届いた杏露酒を飲みだす。
杏露酒、しんるちゅうって読むんだって。
甘くて美味しい。


「柿崎、ウワサの事気にしてるんじゃないかと思って。
　それで不機嫌な顔なのかな？」
「本庄さん、ウワサって」

「柿崎が女性だから係長になるなんて言ってるヤツらがいるだろ」

ああ、なんかそんな話もあったっけ。
すっかり忘れてた和泉さん。

「和泉、主任だろ。
　営業成績はトップクラス。
　係長になる日も近いって前から言われてたじゃん」
「綱乃さん、本庄さんが言ってるのは別です。
　女子の管理職が少なすぎるって話です」

餅子ちゃんは本庄さんの話に心当たりが有る。
和泉さんの会社は男性と女性の割合が6対4くらい。
ところが役職以上の男女比になると8対2。
更に管理職になると9対1になってしまうのだ。

「あれ、国は女性の管理職30％目標と言ってんじゃ無かったっけ？」
「そうですよ」

「んじゃウチの会社全然じゃん」
「いや、でも企業の平均割合は実際その位らしいですよ」

綱乃ちゃんと餅子ちゃんが話してる。
和泉さんは遠い世界の事のように聞いてる。
へぇー、そうなんだ。
杏露酒、美味しいな。
モチロン考えてるのは更に別のコトだ。

「杏露酒、ソーダ割でもう一杯」