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『秋は栗なのか芋なのか』の章
第22話
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「実は・・・・」
和泉さんが話し出す。
いつもの様に長尾家へ帰って来た和泉さん。
えいっと玄関に座り込んじゃう。
「ふにゃーん、疲れたよう」
他の人には聞かせられない甘え声。
もしも会社の人間に聞かれたら真っ赤になって隠れるしかない。
「大丈夫ですか」
六郎さんが歩いてやってくる。
「はいはい、土間に座り込まないでくださいってば」
さっと和泉さんのカバンを持ち引き上げていく六郎さん。
あれ。
「抱きあげてくれないと歩けない~」
チラっと和泉さんに目をやる六郎さん。
「ウソですね、今日はそんなに疲れてないでしょう」
バレてる。
今日は遅くこそなったものの、別の課の営業プレゼンを聞いてただけ。
和泉さんはそんなに疲れてない。
「はあ、疲れてないのに疲れたフリをした和泉さんに六郎さんが肩を貸してくれなかったと」
「アタリマエだな、自分なら玄関で張り倒してるぞ」
餅子ちゃん、綱乃ちゃんの反応が冷たい。
ひどい~。
ホントに六郎さん、変なんだってば。
「はあ、アーンしたのに食べてくれなかったですか」
「ほう、着替えを手伝ってくれなかったのか」
「「アタリマエだ」」
「和泉さん、普段何やってんですか」
「新婚ホヤホヤでもそうそうしねーぞ」
「ええっ、六郎さんいつもやってくれるもん。
ストッキング履く時は身体に掴まらせてくれるし、
お味見にあーんてしてくれるから、あたしも必ず返すんだもん」
・・・・・・・
「分かりました。
私達にとっては普通になっただけだと思いますが、
和泉さんにとっては六郎さんがおかしい。
そこまで何とかいいとしましょう」
「餅子、よくいいと出来るな。
アタシはムリ」
「そいで六郎さんがおかしくなったのはいつ頃からなんですか」
うーん。
「丁度、餅子ちゃんと金津くんが家に来てくれた頃からかな」
餅子ちゃんは少しだけ思い出す。
そう言えば和泉さんの家に柿取りに行ったっけ。
落ちて来る柿の木の枝を受け止めた六郎さん。
その時、枝で引っかいて六郎さんは負傷。
ホッペタから血が流れてる。
和泉さんが六郎さんの手当てをしたのだ。
和泉さんは六郎さんの傷口を確認。
目を近づけて、頬をよく見る。
二人の顔は急接近。
六郎さんは少し顔を逸らす。
「動かさないで」
和泉さんは六郎さんの顔を抑えて固定。
「はい、終わりです」
「ありがとうございます」
消毒と絆創膏を貼り終えて和泉さんは救急箱を仕舞いに行く。
餅子ちゃんはぼーっと眺める。
少し六郎さんが顔を赤らめていたような。
「甘粕さん、金津君の方は」
「平気です。
元気に木登りしてますよ。
若いですし、もう気にしてないでしょ」
「彼は柿が好きで来てるんですよね。
働かせてしまった分、
たくさん持って行って貰いましょう」
「そうですね。
柿崎さんが好きらしいですよ」
「………………
柿が好きなんですよね?」
「そうだったかな。
柿(崎)さんが好きとか言っていたような……」
とぼけて六郎さんの反応を伺う餅子ちゃん。
あまり六郎さん表情は変わって無いな。
いつもの様にニコニコしてるだけか。
そこへ戻ってくる和泉さん。
「あれ、六郎さん。
なんか有りました?」
「いえ、何のことですか?
和泉さん」
「いや今、背中から。
何か怒ってるような焦ってるような。
スゴイ気が吹き出してましたよ」
「そんな事は有りません。
気のせいですよ」
六郎さんはニッコリ笑う。
今の、和泉さんから見るとそんな風に見えるんだ。
餅子ちゃんからはいつもの様に笑ってるようにしか見えなかった。
そんな事が有ったのを思い出した餅子ちゃん。
和泉さんが話し出す。
いつもの様に長尾家へ帰って来た和泉さん。
えいっと玄関に座り込んじゃう。
「ふにゃーん、疲れたよう」
他の人には聞かせられない甘え声。
もしも会社の人間に聞かれたら真っ赤になって隠れるしかない。
「大丈夫ですか」
六郎さんが歩いてやってくる。
「はいはい、土間に座り込まないでくださいってば」
さっと和泉さんのカバンを持ち引き上げていく六郎さん。
あれ。
「抱きあげてくれないと歩けない~」
チラっと和泉さんに目をやる六郎さん。
「ウソですね、今日はそんなに疲れてないでしょう」
バレてる。
今日は遅くこそなったものの、別の課の営業プレゼンを聞いてただけ。
和泉さんはそんなに疲れてない。
「はあ、疲れてないのに疲れたフリをした和泉さんに六郎さんが肩を貸してくれなかったと」
「アタリマエだな、自分なら玄関で張り倒してるぞ」
餅子ちゃん、綱乃ちゃんの反応が冷たい。
ひどい~。
ホントに六郎さん、変なんだってば。
「はあ、アーンしたのに食べてくれなかったですか」
「ほう、着替えを手伝ってくれなかったのか」
「「アタリマエだ」」
「和泉さん、普段何やってんですか」
「新婚ホヤホヤでもそうそうしねーぞ」
「ええっ、六郎さんいつもやってくれるもん。
ストッキング履く時は身体に掴まらせてくれるし、
お味見にあーんてしてくれるから、あたしも必ず返すんだもん」
・・・・・・・
「分かりました。
私達にとっては普通になっただけだと思いますが、
和泉さんにとっては六郎さんがおかしい。
そこまで何とかいいとしましょう」
「餅子、よくいいと出来るな。
アタシはムリ」
「そいで六郎さんがおかしくなったのはいつ頃からなんですか」
うーん。
「丁度、餅子ちゃんと金津くんが家に来てくれた頃からかな」
餅子ちゃんは少しだけ思い出す。
そう言えば和泉さんの家に柿取りに行ったっけ。
落ちて来る柿の木の枝を受け止めた六郎さん。
その時、枝で引っかいて六郎さんは負傷。
ホッペタから血が流れてる。
和泉さんが六郎さんの手当てをしたのだ。
和泉さんは六郎さんの傷口を確認。
目を近づけて、頬をよく見る。
二人の顔は急接近。
六郎さんは少し顔を逸らす。
「動かさないで」
和泉さんは六郎さんの顔を抑えて固定。
「はい、終わりです」
「ありがとうございます」
消毒と絆創膏を貼り終えて和泉さんは救急箱を仕舞いに行く。
餅子ちゃんはぼーっと眺める。
少し六郎さんが顔を赤らめていたような。
「甘粕さん、金津君の方は」
「平気です。
元気に木登りしてますよ。
若いですし、もう気にしてないでしょ」
「彼は柿が好きで来てるんですよね。
働かせてしまった分、
たくさん持って行って貰いましょう」
「そうですね。
柿崎さんが好きらしいですよ」
「………………
柿が好きなんですよね?」
「そうだったかな。
柿(崎)さんが好きとか言っていたような……」
とぼけて六郎さんの反応を伺う餅子ちゃん。
あまり六郎さん表情は変わって無いな。
いつもの様にニコニコしてるだけか。
そこへ戻ってくる和泉さん。
「あれ、六郎さん。
なんか有りました?」
「いえ、何のことですか?
和泉さん」
「いや今、背中から。
何か怒ってるような焦ってるような。
スゴイ気が吹き出してましたよ」
「そんな事は有りません。
気のせいですよ」
六郎さんはニッコリ笑う。
今の、和泉さんから見るとそんな風に見えるんだ。
餅子ちゃんからはいつもの様に笑ってるようにしか見えなかった。
そんな事が有ったのを思い出した餅子ちゃん。
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