1 / 9
第1話 スカイツリーから駆け出すアクマ
しおりを挟む
【この作品はフィクションです。実在の地名、建物、人物とは一切関係ありません】
【暴力描写、反社会的描写が相当量出てきます。苦手な方はご遠慮ください。作者には政治的意図は一切ありません。大人のファンタジーとして楽しめる方にお送りしています】
俺は夜の街を見下ろしていた。
煌めくビルの窓。
闇を引き裂くネオン。
車のライトが流れていく。
俺が居るのはスカイツリー。
その最頂上部。
人は上がって来ない筈なのに、金網で囲われてる。
俺はその金網に立って、夜の東京を見回しているのだ。
高い。
本来なら恐怖で体が竦んでしまいそうだ。
だが、俺の胸に沸き上がるのは爽快な高揚感のみ。
なんせ、ゲームの中なのだ。
何一つ危険は無い。
この快感を思いっきり味わおう。
俺は金網から駆け出す。
夜の空中へ。
何も無い空間を俺の足が蹴る。
透明なガラスが在るかの様に何かが俺の足の裏に応える。
俺は跳ねるように夜の空を舞う。
おっ、電車が走っていく。
メタリックな輝き。
中には通勤帰りの人々が見える。
寝ているサラリーマン。
スマホに見入るオフィスレディー。
特急なのか、デザインの違う列車も見える。
白いボディーの先端は流線形。
未来風なデザインてヤツかな。
俺はロケットランチャーを構える。
近代兵器、バズーカ砲なんて呼んだりもするヤツ。
兵器らしく地味なグリーンに塗られたそれを肩に担ぎ上げる。
通常列車の方に砲身を向ける。
左手で砲身を抑え、右手でトリガーボタンを押す。
良く狙いもせず俺はロケットランチャーを撃った。
その先端から火花を上げる何かが飛んでいく。
打ち上げ花火の様な音が聞こえる。
何かが通常列車に当たり、大爆発を起こす。
轟音が周囲に響き渡る。
列車はバラバラ。
俺の肩に有る兵器から撃ち出された弾は列車の中腹部に当たった。
中央の3車両位が吹き飛び、残骸しか残っていない。
列車の先頭と後部は残っている。
中に居る人々は衝撃で倒れている。
列車の外に投げ出された人。
片足が無い。
爆発で吹き飛ばされたのか。
オフィスレディーらしき女性は首がおかしな方向を向いている。
どう見ても生きてはいないだろう。
あっひゃっひゃっひゃひゃひゃ。
俺は笑い転げる。
凄まじくリアルな映像だ。
世の中進歩している。
ゲームのVR映像なんてもう現実と区別が付かない。
だけどこれは現実じゃない。
当たり前だ。
俺が空を跳べる筈が無いし、ロケットランチャーなんて持っている筈も無い。
だから俺に罪悪感なんて物は無い。
だってゲームなのだから。
あそこに死んでる人々。
死に損なって、苦痛の呻き声を上げる奴らだって造られた映像に過ぎないのだ。
罪悪感なんて感じる奴が居るとしたら、それこそゲームと現実の区別が付かない危険な奴だろう。
俺は夜の空を駆け回る。
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ…ハァッハッハッアヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
この頃の俺は焦っている。
胸に重く圧し掛かる重圧感。
就職活動が思うように行っていないのだ。
俺は既に大学四年生、夏休みも終わっている。
まだ内定を一社からも貰えていない。
俺の棲むTOKYOは未曽有のウイルス性肺炎による混乱で偉い事になっていた。
TOKYOだけじゃなくて全世界だけどな。
最初のうち面白がってた俺。
大学の知人たちも一緒だ。
学校は行かなくてもいいし、テストは無し。
レポート提出もいい加減。
とくりゃ遊び放題。
良い事ばかりでも無い。
バイト先のファミレスは営業時間を減らした。
俺のシフトは大幅に削られた。
挙句、営業をしばらく取りやめると言う。
せっかく時間が余ってるってのに、遊ぶ金が無い。
別のバイト先を探そうとした俺だが、親に止められた。
「アンタ、もう就職活動でしょ。
内定貰ってからにしなさい」
何だよ、だったらもっと小遣いよこせよ。
就職活動を本気でやり出した頃には笑えなくなった。
まだ騒ぎは収まる様子が無い。
学校でやる筈の就職説明会も中止になった。
卒業した先輩たちが来て為になる話をしてくれるってアレ。
毎年、行っていた企業説明会も無し。
どこの会社も説明会は行わない。
ネット上で説明動画を公開したり、一時間のWEBミーティングが有る程度。
一体何本の動画を見りゃいいのか、幾つミーティングに参加すりゃいいのか、さっぱり分からない。
大学に問い合わせて見ても一緒だ。
大学側もこんな事は初めて。
何とも言えないしか言ってくれない。
大学が分からないのだ。
俺に分かる訳無いじゃん。
俺は別に大企業じゃなきゃ嫌だとかそんな高望みはしていない。
もちろん有名企業には入れりゃいいけど、難しいこと位分かってる。
中小企業である程度安定してりゃ充分。
年間休日は多い方が良いよな。
だけど全く感覚が掴めないのだ。
会社で開かれる説明会にでも行けりゃ、周りの学生のレベルが分かる。
企業の人の食い付き、俺と話が弾むかどうか。
そんな事で俺でもイケル、ここはレベルが高すぎて俺には無理。
そういった雰囲気が掴めそうな気はするんだが、WEBミーティングじゃ全く分からない。
同じゼミの連中と話してみる。
リアルで会うんじゃなくて、ZOOM会話。
「就活どうよ、俺全然ムリだわ」
「俺も、俺も」
「幾つの会社に就職希望出せばいいんだろな」
「とりあえず、数出しとくしか無いんじゃね」
俺は彼女とも話す。
付き合ってる彼女。
同じ大学の学生。
彼女の家の近くの公園で二人で逢う。
「就活どうよ、俺全然ムリだわ」
「あははは、アタシも一緒」
「やっぱり、そうだよな。
全然雰囲気掴めねーよ」
「今年はどこの会社もまともに新人入れないって言うし。
就職浪人して来年に掛ける方が良いのかもって」
そうなのか。
女子はそれもアリなのかもしれん。
だけど就職浪人したらしたで、来年の印象は当然良く無いだろ。
第一親が許さんよな。
とにかくハジから就職志望書類送ってみる。
ハジからメールが届く。
「誠に申し訳ありませんが・・・・」
「・・希望に添いかねる結果となりました事を・・・」
「本年度は採用を既に締め切っており・・・」
「貴方様が今後より一層活躍される事をお祈り申し上げます」
似たような内容。
やたら文章だけは丁寧なメールが帰ってくる。
向こうがへりくだってるので俺が虐めてるような気にすらなる。
知りもしない人たちにやたらめったら俺の今後の活躍を祈られてしまうのだ。
余裕が有るかの様に言ってるが、俺の胸はドンドン重くなってる。
メールを開くたびに心臓が冷える。
血液の流れがおかしくなってんじゃね。
本気でそう思うのだ。
くっそ。
気晴らししないと心臓に悪い。
俺はVRヘッドセットをスマホにリンクさせる。
聞いた事も無いメーカーの安いゴーグルじゃない。
有名メーカーの本格的なヤツ。
ビックリする位高かったが、その頃の俺はファミレスのバイトに入りまくってて財布に余裕が有った。
目的はまあまあ、あまり大きな声では言えない動画を見る事だ。
俺は20歳越えてるし、動画を買うのに何の支障も無い。
後から調べるとVR動画を見るだけなら五千円くらいのゴーグルでも問題無かったらしい。
チキショウ。
俺のウン万円返せ。
そんなモノに金使うなら、彼女に使えよ。
そんな内なる声も聞こえる。
だけどな、外出も外で他人と会うのも推奨されてない。
デートしようにも映画館だってやってないのだ。
俺はトイレに行くふりをして、両親の部屋の明かりがもう消えてるのを確認する。
ヘッドセットを着けて音量を大きくしてると本当に外部の事は分からない。
俺が頭にヘッドセット、下半身に手をやってる、そんな場面を親に見られたら死ねる。
安全な環境を確認して、俺は動画に没入する。
セーラー服の少女二人が俺の目の前に現れる。
右のツインテールちゃんが俺にキスする。
左の前髪パッツンが俺の下半身に手を伸ばす。
俺は翻弄されっぱなし。
そのまま俺は動画を切り替える。
ミニスカートのオフィスレディー。
俺はお姉さんを襲う。
嫌がってる筈なのにやたらイロっぽい声を出すお姉さん。
助けを求める彼女をベッドに追い詰めて服を脱がせる。
お姉さんが怯えた悲鳴を上げる。
・・・・・・・。
俺は下半身の始末をして、ベッドに寝っ転がる。
ヘッドセットは着けたままスマホでネットニュースなんかを眺める。
そのうちネットニュースもVRになるのだろうか。
幾ら何でもデータ量が大きくなりすぎるか。
俺は適当にニュースをスクロールさせる。
胸に少しだけわだかまり。
最近嫌がるお姉さんを押し倒す動画ばかり観てる気がする。
導入には別の動画も観るのだけど結局最後はそれだ。
俺どうしたんだろう。
暴力的に女性をどうこうするような動画に興味なかった筈なのに。
あの動画をダウンロードしたのだって、暴力的なヤツだったからじゃない。
お姉さんがイロっぽかったからだ。
一応レイプ物になってたけどサンプル画じゃそこまでハードじゃなかった。
だけど中身見たら後半に向けてさらにハードになっていく。
お姉さんを色々な方法でいたぶるのだ。
時にねちっこく、時に暴力的に。
最初は罪悪感が有って、俺はあまり見てなかった。
今では毎日のように観ている。
多分ストレスが溜まってるのだ。
苛々してたら暴力的にもなる。
もうあの動画を観るのは止めよう。
フィクションとして割り切って楽しめばいい。
そんな気もするのだけど、やはり見慣れてしまうと精神が荒む気がする。
だんだんレイプ物じゃないと興奮できなくなるとか、そんな人間になっちまったらコワイ。
明らかにヤベー奴だ。
男友達にだってそんなヤツ居たら嫌だろう。
俺はフッと思いついて検索する。
セクシー女優の名前、あのオフィスレディーのお姉さん。
あの女優が気に入ったのなら、同じ女優でレイプ物じゃない動画をダウンロードすればいい。
そして後悔した。
お姉さんは誰かに似ていると思っていた。
服装も髪型もOL風にしていたから気づかなかった。
女優が女子大生風にしてる動画のパッケージ画。
それは俺の彼女によく似ていたのだ。
ああ、もちろん実は彼女が隠れてセクシー女優のバイトをしてたなんて話じゃない。
少し似てるだけだ。
瞼の少し垂れた目元、鼻と口のバランス。
顔は似てるけど、身体は別物。
服の上から見たって女優さんの方が巨乳、足だって長い。
なんか、これ彼女をディスってるみたいだな。
彼女はもちろん可愛い。
プロポーションがイマイチなんて事は無い。
もちろんグラビアに出てるような連中と比べれば胸は小さい。
だけど人並みには有る。
俺は彼女で充分なのだ。
問題は俺が女優さんを無理やり乱暴する動画を好んでいて、その乱暴される女優さんが彼女に似てるって事。
こう整理すると、俺ってヤバイ奴じゃね。
【暴力描写、反社会的描写が相当量出てきます。苦手な方はご遠慮ください。作者には政治的意図は一切ありません。大人のファンタジーとして楽しめる方にお送りしています】
俺は夜の街を見下ろしていた。
煌めくビルの窓。
闇を引き裂くネオン。
車のライトが流れていく。
俺が居るのはスカイツリー。
その最頂上部。
人は上がって来ない筈なのに、金網で囲われてる。
俺はその金網に立って、夜の東京を見回しているのだ。
高い。
本来なら恐怖で体が竦んでしまいそうだ。
だが、俺の胸に沸き上がるのは爽快な高揚感のみ。
なんせ、ゲームの中なのだ。
何一つ危険は無い。
この快感を思いっきり味わおう。
俺は金網から駆け出す。
夜の空中へ。
何も無い空間を俺の足が蹴る。
透明なガラスが在るかの様に何かが俺の足の裏に応える。
俺は跳ねるように夜の空を舞う。
おっ、電車が走っていく。
メタリックな輝き。
中には通勤帰りの人々が見える。
寝ているサラリーマン。
スマホに見入るオフィスレディー。
特急なのか、デザインの違う列車も見える。
白いボディーの先端は流線形。
未来風なデザインてヤツかな。
俺はロケットランチャーを構える。
近代兵器、バズーカ砲なんて呼んだりもするヤツ。
兵器らしく地味なグリーンに塗られたそれを肩に担ぎ上げる。
通常列車の方に砲身を向ける。
左手で砲身を抑え、右手でトリガーボタンを押す。
良く狙いもせず俺はロケットランチャーを撃った。
その先端から火花を上げる何かが飛んでいく。
打ち上げ花火の様な音が聞こえる。
何かが通常列車に当たり、大爆発を起こす。
轟音が周囲に響き渡る。
列車はバラバラ。
俺の肩に有る兵器から撃ち出された弾は列車の中腹部に当たった。
中央の3車両位が吹き飛び、残骸しか残っていない。
列車の先頭と後部は残っている。
中に居る人々は衝撃で倒れている。
列車の外に投げ出された人。
片足が無い。
爆発で吹き飛ばされたのか。
オフィスレディーらしき女性は首がおかしな方向を向いている。
どう見ても生きてはいないだろう。
あっひゃっひゃっひゃひゃひゃ。
俺は笑い転げる。
凄まじくリアルな映像だ。
世の中進歩している。
ゲームのVR映像なんてもう現実と区別が付かない。
だけどこれは現実じゃない。
当たり前だ。
俺が空を跳べる筈が無いし、ロケットランチャーなんて持っている筈も無い。
だから俺に罪悪感なんて物は無い。
だってゲームなのだから。
あそこに死んでる人々。
死に損なって、苦痛の呻き声を上げる奴らだって造られた映像に過ぎないのだ。
罪悪感なんて感じる奴が居るとしたら、それこそゲームと現実の区別が付かない危険な奴だろう。
俺は夜の空を駆け回る。
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ…ハァッハッハッアヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
この頃の俺は焦っている。
胸に重く圧し掛かる重圧感。
就職活動が思うように行っていないのだ。
俺は既に大学四年生、夏休みも終わっている。
まだ内定を一社からも貰えていない。
俺の棲むTOKYOは未曽有のウイルス性肺炎による混乱で偉い事になっていた。
TOKYOだけじゃなくて全世界だけどな。
最初のうち面白がってた俺。
大学の知人たちも一緒だ。
学校は行かなくてもいいし、テストは無し。
レポート提出もいい加減。
とくりゃ遊び放題。
良い事ばかりでも無い。
バイト先のファミレスは営業時間を減らした。
俺のシフトは大幅に削られた。
挙句、営業をしばらく取りやめると言う。
せっかく時間が余ってるってのに、遊ぶ金が無い。
別のバイト先を探そうとした俺だが、親に止められた。
「アンタ、もう就職活動でしょ。
内定貰ってからにしなさい」
何だよ、だったらもっと小遣いよこせよ。
就職活動を本気でやり出した頃には笑えなくなった。
まだ騒ぎは収まる様子が無い。
学校でやる筈の就職説明会も中止になった。
卒業した先輩たちが来て為になる話をしてくれるってアレ。
毎年、行っていた企業説明会も無し。
どこの会社も説明会は行わない。
ネット上で説明動画を公開したり、一時間のWEBミーティングが有る程度。
一体何本の動画を見りゃいいのか、幾つミーティングに参加すりゃいいのか、さっぱり分からない。
大学に問い合わせて見ても一緒だ。
大学側もこんな事は初めて。
何とも言えないしか言ってくれない。
大学が分からないのだ。
俺に分かる訳無いじゃん。
俺は別に大企業じゃなきゃ嫌だとかそんな高望みはしていない。
もちろん有名企業には入れりゃいいけど、難しいこと位分かってる。
中小企業である程度安定してりゃ充分。
年間休日は多い方が良いよな。
だけど全く感覚が掴めないのだ。
会社で開かれる説明会にでも行けりゃ、周りの学生のレベルが分かる。
企業の人の食い付き、俺と話が弾むかどうか。
そんな事で俺でもイケル、ここはレベルが高すぎて俺には無理。
そういった雰囲気が掴めそうな気はするんだが、WEBミーティングじゃ全く分からない。
同じゼミの連中と話してみる。
リアルで会うんじゃなくて、ZOOM会話。
「就活どうよ、俺全然ムリだわ」
「俺も、俺も」
「幾つの会社に就職希望出せばいいんだろな」
「とりあえず、数出しとくしか無いんじゃね」
俺は彼女とも話す。
付き合ってる彼女。
同じ大学の学生。
彼女の家の近くの公園で二人で逢う。
「就活どうよ、俺全然ムリだわ」
「あははは、アタシも一緒」
「やっぱり、そうだよな。
全然雰囲気掴めねーよ」
「今年はどこの会社もまともに新人入れないって言うし。
就職浪人して来年に掛ける方が良いのかもって」
そうなのか。
女子はそれもアリなのかもしれん。
だけど就職浪人したらしたで、来年の印象は当然良く無いだろ。
第一親が許さんよな。
とにかくハジから就職志望書類送ってみる。
ハジからメールが届く。
「誠に申し訳ありませんが・・・・」
「・・希望に添いかねる結果となりました事を・・・」
「本年度は採用を既に締め切っており・・・」
「貴方様が今後より一層活躍される事をお祈り申し上げます」
似たような内容。
やたら文章だけは丁寧なメールが帰ってくる。
向こうがへりくだってるので俺が虐めてるような気にすらなる。
知りもしない人たちにやたらめったら俺の今後の活躍を祈られてしまうのだ。
余裕が有るかの様に言ってるが、俺の胸はドンドン重くなってる。
メールを開くたびに心臓が冷える。
血液の流れがおかしくなってんじゃね。
本気でそう思うのだ。
くっそ。
気晴らししないと心臓に悪い。
俺はVRヘッドセットをスマホにリンクさせる。
聞いた事も無いメーカーの安いゴーグルじゃない。
有名メーカーの本格的なヤツ。
ビックリする位高かったが、その頃の俺はファミレスのバイトに入りまくってて財布に余裕が有った。
目的はまあまあ、あまり大きな声では言えない動画を見る事だ。
俺は20歳越えてるし、動画を買うのに何の支障も無い。
後から調べるとVR動画を見るだけなら五千円くらいのゴーグルでも問題無かったらしい。
チキショウ。
俺のウン万円返せ。
そんなモノに金使うなら、彼女に使えよ。
そんな内なる声も聞こえる。
だけどな、外出も外で他人と会うのも推奨されてない。
デートしようにも映画館だってやってないのだ。
俺はトイレに行くふりをして、両親の部屋の明かりがもう消えてるのを確認する。
ヘッドセットを着けて音量を大きくしてると本当に外部の事は分からない。
俺が頭にヘッドセット、下半身に手をやってる、そんな場面を親に見られたら死ねる。
安全な環境を確認して、俺は動画に没入する。
セーラー服の少女二人が俺の目の前に現れる。
右のツインテールちゃんが俺にキスする。
左の前髪パッツンが俺の下半身に手を伸ばす。
俺は翻弄されっぱなし。
そのまま俺は動画を切り替える。
ミニスカートのオフィスレディー。
俺はお姉さんを襲う。
嫌がってる筈なのにやたらイロっぽい声を出すお姉さん。
助けを求める彼女をベッドに追い詰めて服を脱がせる。
お姉さんが怯えた悲鳴を上げる。
・・・・・・・。
俺は下半身の始末をして、ベッドに寝っ転がる。
ヘッドセットは着けたままスマホでネットニュースなんかを眺める。
そのうちネットニュースもVRになるのだろうか。
幾ら何でもデータ量が大きくなりすぎるか。
俺は適当にニュースをスクロールさせる。
胸に少しだけわだかまり。
最近嫌がるお姉さんを押し倒す動画ばかり観てる気がする。
導入には別の動画も観るのだけど結局最後はそれだ。
俺どうしたんだろう。
暴力的に女性をどうこうするような動画に興味なかった筈なのに。
あの動画をダウンロードしたのだって、暴力的なヤツだったからじゃない。
お姉さんがイロっぽかったからだ。
一応レイプ物になってたけどサンプル画じゃそこまでハードじゃなかった。
だけど中身見たら後半に向けてさらにハードになっていく。
お姉さんを色々な方法でいたぶるのだ。
時にねちっこく、時に暴力的に。
最初は罪悪感が有って、俺はあまり見てなかった。
今では毎日のように観ている。
多分ストレスが溜まってるのだ。
苛々してたら暴力的にもなる。
もうあの動画を観るのは止めよう。
フィクションとして割り切って楽しめばいい。
そんな気もするのだけど、やはり見慣れてしまうと精神が荒む気がする。
だんだんレイプ物じゃないと興奮できなくなるとか、そんな人間になっちまったらコワイ。
明らかにヤベー奴だ。
男友達にだってそんなヤツ居たら嫌だろう。
俺はフッと思いついて検索する。
セクシー女優の名前、あのオフィスレディーのお姉さん。
あの女優が気に入ったのなら、同じ女優でレイプ物じゃない動画をダウンロードすればいい。
そして後悔した。
お姉さんは誰かに似ていると思っていた。
服装も髪型もOL風にしていたから気づかなかった。
女優が女子大生風にしてる動画のパッケージ画。
それは俺の彼女によく似ていたのだ。
ああ、もちろん実は彼女が隠れてセクシー女優のバイトをしてたなんて話じゃない。
少し似てるだけだ。
瞼の少し垂れた目元、鼻と口のバランス。
顔は似てるけど、身体は別物。
服の上から見たって女優さんの方が巨乳、足だって長い。
なんか、これ彼女をディスってるみたいだな。
彼女はもちろん可愛い。
プロポーションがイマイチなんて事は無い。
もちろんグラビアに出てるような連中と比べれば胸は小さい。
だけど人並みには有る。
俺は彼女で充分なのだ。
問題は俺が女優さんを無理やり乱暴する動画を好んでいて、その乱暴される女優さんが彼女に似てるって事。
こう整理すると、俺ってヤバイ奴じゃね。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ルール
新菜いに/丹㑚仁戻
ホラー
放課後の恒例となった、友達同士でする怪談話。
その日聞いた怪談は、実は高校の近所が舞台となっていた。
主人公の亜美は怖がりだったが、周りの好奇心に押されその場所へと向かうことに。
その怪談は何を伝えようとしていたのか――その意味を知ったときには、もう遅い。
□第6回ホラー・ミステリー小説大賞にて奨励賞をいただきました□
※章ごとに登場人物や時代が変わる連作短編のような構成です(第一章と最後の二章は同じ登場人物)。
※結構グロいです。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
©2022 新菜いに
煩い人
星来香文子
ホラー
陽光学園高学校は、新校舎建設中の間、夜間学校・月光学園の校舎を昼の間借りることになった。
「夜七時以降、陽光学園の生徒は校舎にいてはいけない」という校則があるのにも関わらず、ある一人の女子生徒が忘れ物を取りに行ってしまう。
彼女はそこで、肌も髪も真っ白で、美しい人を見た。
それから彼女は何度も狂ったように夜の学校に出入りするようになり、いつの間にか姿を消したという。
彼女の親友だった美波は、真相を探るため一人、夜間学校に潜入するのだが……
(全7話)
※タイトルは「わずらいびと」と読みます
※カクヨムでも掲載しています
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クリーム色の壁とブラウンの扉
くろねこ教授
キャラ文芸
現代物。短編。
『人間の魂は4分の3ozおよそ21.262グラム』
男が言う悪魔神がどの様な概念か分からないがそれに近い存在では俺は無い。
日本語で言えば悪霊小悪魔ジン精霊と言った言葉が近い筈だと俺は思う。
作者的には純愛もののつもり。
グロシーン有り、注意。
声にならない声の主
山村京二
ホラー
『Elote』に隠された哀しみと狂気の物語
アメリカ・ルイジアナ州の農場に一人の少女の姿。トウモロコシを盗んだのは、飢えを凌ぐためのほんの出来心だった。里子を含めた子供たちと暮らす農場経営者のベビーシッターとなったマリアは、夜な夜な不気味な声が聞こえた気がした。
その声に導かれて経営者夫妻の秘密が明らかになった時、気づいてしまった真実とは。
狂気と哀しみが入り混じった展開に、驚愕のラストが待ち受ける。
禁踏区
nami
ホラー
月隠村を取り囲む山には絶対に足を踏み入れてはいけない場所があるらしい。
そこには巨大な屋敷があり、そこに入ると決して生きて帰ることはできないという……
隠された道の先に聳える巨大な廃屋。
そこで様々な怪異に遭遇する凛達。
しかし、本当の恐怖は廃屋から脱出した後に待ち受けていた──
都市伝説と呪いの田舎ホラー
ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する
黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。
だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。
どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど??
ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に──
家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。
何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。
しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。
友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。
ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。
表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、
©2020黄札
強烈撃の擬艦化{別称 進撃の擬艦化}
斉藤美琴【♂】
ホラー
世界中〔日本含め〕は平和であった。
長年の長期頃からずっと平和で過ごしていた。
ところが・・・突如、街の中心が何が起きたのだ。
内陸部 町の中心部に謎の鋼鉄の人工物。
道路の中心にから巨大な塊が道路に塞がっていた。
その大きさは戦艦並み大きさであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる