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第28話 魂を喰らうモノ
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「ナイト、気を付けて!
この人達ってば操られてるんだって」
ジーフクリードはナイトに聞こえるよう叫ぶ。ナイト・マーティンの同学年の少年である。
ジーフはハンプティ・ダンディと一緒にいる。王都から来たと言う役人。
彼等は襲われている。狼の頭部が着いた毛皮の外套《マント》を着た男が大剣を振り回すのだ。ハンプティはそれをなんとか避けているし、ジーフはその後ろに隠れているのである。
その先でナイトは同じく狼の外套《マント》を着た男と対峙している。槍を構え、男が襲い掛かってくるのである。
「ハンプティさんが言う事がホントなら着ているマントが人狼は誰だ?って言う正体不明のモンスターと見せかけて、実は呪われた装備なんだって。
まー、この役人が言う事がホントならだけどね。
この見た目だけ少しハンサムな人ってばてんで役に立たないの。
役立たず人なの。
その話もどこまで真実かはあやしーよね。
相手は大人だしー、とりあえず信じたように行動してるけどさ。
全部うのみに出来るほど、この役立たず人信用出来ないよね」
ハンプティの後ろに隠れながら思いっきり大声を出すジーフなのである。
「…………キミは人の後ろに隠れて危機を乗り越えていると言うのに。
何故そこまで平気な顔で罵詈雑言を言う事が出来るのだ?
辺鄙な場所に住んでいる人間と言う者は子供であっても、精神が歪んでしまうものなのか」
「あっ、それだけじゃなかった。
コイツらこっちを襲ってくるってゆーのに、こっちからあんま攻撃しちゃダメなんだって。
人間だからさ、斬ったら殺人罪になるとか―言うんだよ。
この役立たず人ってばホント役立たずな事ばっか言うよね。
そいでもって、少し攻撃したくらいじゃ効かないの。
ギガントのヤツがー、ホラあいつバカじゃない、こっちの話聞かないで攻撃しちゃったの。
なのに操られてるもんだからこの戦士達あんま気にしないの。
痛がりもせず、襲ってくんの。
………………
………………
あれっ?!
これってよく考えたらスゴイぴんちじゃない?
ええーっ!? 嘘でしょ、ヤメてよ。
この呪われた装備に操られた人ってば、手加減した攻撃位じゃ効かない。
それで本気で致命傷与えちゃったら、殺人罪になる。
これってば、詰んでるじゃない。
出口無いじゃない。
解決出来ないじゃない。
回答出来ない問題を子供達に出すようなモノじゃない。
えええーーーっ!!!
どうすんのさ。
子供が精神に傷を残しちゃうよ」
「だから、最初から危険な事態だと言っている」
「嘘だね!
ハンプティさん、得意げに人狼は誰だ?のウンチク語ってただけじゃない。
状況の把握なんてして無かったでしょ。
今僕が言って気が付いたくせに、最初から気が付いてた、なんて顔したって騙されないからね」
だがしかし、黒髪の少年はジーフの言葉を聞いているのか、気にせず剣で男を狙う。
その長い刀身が狼の外套に触れた途端であった。
ボロぼろと崩れ落ちた。狼の頭部が着いた毛皮が崩れボロ布の様に細かい裂地となり、風に吹かれて行くのである。
ハンプティはあんぐりと口を開けた。下顎が胸の辺りまで来ている。一般的にコレをアゴが外れた状態と呼ぶのである。
そしてナイト少年はそのまま剣を投げた。ハンプティを襲おうとしていた男が被った狼の外套に。長剣の刀身がキレイに吸い込まれた。と、見るや狼の毛皮がボロボロと崩れていくのである。後に残ったのは普通の人間の男。呪われた装備に操られた後遺症なのか、くたくたと地面に倒れてしまった。
ハンプティはさらに口を開けた。すでに下あごが地面に着いてる。鼻まで下に伸びている。せっかくのイケメンがカバみたいなおもろかしい顔面になってるのである。
そして投げた筈の長剣がナイトの手には戻ってきている。
「なにさらすーっ!!
伝説の魔剣じゃとゆーとるじゃろーが!
気軽に投げるんじゃないっ!!!」
「……便利だ」
投げナイフより破壊力もあるし、手に素早く戻ってくるのがいい。今後はこのように使おう、そう納得しているナイト・マーティンである。
「…………何故だ!?」
アゴを地面に着けた男が言う。えいっと自分の下あごを引っ張って無理やり元に戻す。この状態じゃ喋りにくい事この上無い。
「私はさっき少年を見ながら思っていた。
考えていたのだ!
小説の独白《モノローグ》のように!
ナイト・マーティンどうするのだ?
いくら大人びており、信じられないような殺気を発したとは言え、年齢的には8歳の少年。
このオーディンヴァレーの危機的状況に何か出来るのか?
しかも唯一の頼りになる大人。
甲種役人であり、常識も弁えた顔面偏差値の高い男。
こんな時の為に現れたようなハンプティ・ダンディはと言えば。
小生意気な輩ではあるが未成年であるが故に、子供を守るために敵と戦かわなければいけない!
ナイトを救うわけにはいかないのだ!!
相手は攻撃しても効かない人狼は誰だ?。
本気で斬ってしまえば有罪。
こうしている間にも村にはモンスターが溢れている。
この四面楚歌の状況をどうする!
どうするのだ!? ナイト・マーティン!!!
その様に胸の中で思っていたのだっ!
なのに……何故一瞬で状況が変わっている!?」
「なんだよ、ハンプティさんが脅かすからさ。
どうしようもないのかと思っちゃった。
単に操られてる人間を攻撃しないで外套《マント》の方を切れば良かっただけじゃないの。
騙されたー。
ホントにハンプティさん、役立たず人だよね」
「違うっ!
狼の外套《マント》を攻撃すれば良いだけだったならば、
私だって打っていた。
あの畑に落っこちてう〇こ塗れになってる輩だって外套《マント》を切っていたぞ」
「あー、そっか。
う〇こ塗れになってるヤツね。
そう言えば外套《マント》も切ってたかも……」
「フッフッフ。
それこそがワシが吸精の魔剣だからじゃー。
魂を吸い取るんじゃー。
吸い取ってワシの力にするんじゃ。
思考するんだって、こうやって持ち主と会話するんだってエネルギー食うんじゃ。
魂でも吸い取らんとやってられんわい」
ナイトに対して剣が喋る。話し声があたりの空間に広がってはいない。言ってみればナイトの心の中にだけ、話しかけているようなのである。
「どうじゃ、ワシ使えるじゃろ。
役に立つじゃろ。
さすが伝説の魔剣じゃろーっ!」
「まぁな」
自動的に手に戻ってくるだけ投げナイフよりは良いかもしれない、そんな風に考えてるナイトである。
「なんじゃ、子供、分かってるでは無いかー。
それに引き換えあの男と来たら!」
「……あの男?」
「アーサーとか名のるやつじゃ。
なかなかの魔力《マナ》を持っておってのう。
これはなかなかの持ち主かと思ったんじゃ。
ところがあの男、ワシが話しかけたらのう。
チェンジ!
女の子ボイスにチェンジ!
とか言い出しおって。
出来ないの?
坂本マーヤの声は?
堀江ユイ、田村ユカリでもいーよ。
それも入ってないの。
んじゃ要らない。
ジジィ声の入ったアイテムとか誰が使うんだよ!
などとゆーて、ワシをほっぽり出して使ってないんじゃー!!!」
この人達ってば操られてるんだって」
ジーフクリードはナイトに聞こえるよう叫ぶ。ナイト・マーティンの同学年の少年である。
ジーフはハンプティ・ダンディと一緒にいる。王都から来たと言う役人。
彼等は襲われている。狼の頭部が着いた毛皮の外套《マント》を着た男が大剣を振り回すのだ。ハンプティはそれをなんとか避けているし、ジーフはその後ろに隠れているのである。
その先でナイトは同じく狼の外套《マント》を着た男と対峙している。槍を構え、男が襲い掛かってくるのである。
「ハンプティさんが言う事がホントなら着ているマントが人狼は誰だ?って言う正体不明のモンスターと見せかけて、実は呪われた装備なんだって。
まー、この役人が言う事がホントならだけどね。
この見た目だけ少しハンサムな人ってばてんで役に立たないの。
役立たず人なの。
その話もどこまで真実かはあやしーよね。
相手は大人だしー、とりあえず信じたように行動してるけどさ。
全部うのみに出来るほど、この役立たず人信用出来ないよね」
ハンプティの後ろに隠れながら思いっきり大声を出すジーフなのである。
「…………キミは人の後ろに隠れて危機を乗り越えていると言うのに。
何故そこまで平気な顔で罵詈雑言を言う事が出来るのだ?
辺鄙な場所に住んでいる人間と言う者は子供であっても、精神が歪んでしまうものなのか」
「あっ、それだけじゃなかった。
コイツらこっちを襲ってくるってゆーのに、こっちからあんま攻撃しちゃダメなんだって。
人間だからさ、斬ったら殺人罪になるとか―言うんだよ。
この役立たず人ってばホント役立たずな事ばっか言うよね。
そいでもって、少し攻撃したくらいじゃ効かないの。
ギガントのヤツがー、ホラあいつバカじゃない、こっちの話聞かないで攻撃しちゃったの。
なのに操られてるもんだからこの戦士達あんま気にしないの。
痛がりもせず、襲ってくんの。
………………
………………
あれっ?!
これってよく考えたらスゴイぴんちじゃない?
ええーっ!? 嘘でしょ、ヤメてよ。
この呪われた装備に操られた人ってば、手加減した攻撃位じゃ効かない。
それで本気で致命傷与えちゃったら、殺人罪になる。
これってば、詰んでるじゃない。
出口無いじゃない。
解決出来ないじゃない。
回答出来ない問題を子供達に出すようなモノじゃない。
えええーーーっ!!!
どうすんのさ。
子供が精神に傷を残しちゃうよ」
「だから、最初から危険な事態だと言っている」
「嘘だね!
ハンプティさん、得意げに人狼は誰だ?のウンチク語ってただけじゃない。
状況の把握なんてして無かったでしょ。
今僕が言って気が付いたくせに、最初から気が付いてた、なんて顔したって騙されないからね」
だがしかし、黒髪の少年はジーフの言葉を聞いているのか、気にせず剣で男を狙う。
その長い刀身が狼の外套に触れた途端であった。
ボロぼろと崩れ落ちた。狼の頭部が着いた毛皮が崩れボロ布の様に細かい裂地となり、風に吹かれて行くのである。
ハンプティはあんぐりと口を開けた。下顎が胸の辺りまで来ている。一般的にコレをアゴが外れた状態と呼ぶのである。
そしてナイト少年はそのまま剣を投げた。ハンプティを襲おうとしていた男が被った狼の外套に。長剣の刀身がキレイに吸い込まれた。と、見るや狼の毛皮がボロボロと崩れていくのである。後に残ったのは普通の人間の男。呪われた装備に操られた後遺症なのか、くたくたと地面に倒れてしまった。
ハンプティはさらに口を開けた。すでに下あごが地面に着いてる。鼻まで下に伸びている。せっかくのイケメンがカバみたいなおもろかしい顔面になってるのである。
そして投げた筈の長剣がナイトの手には戻ってきている。
「なにさらすーっ!!
伝説の魔剣じゃとゆーとるじゃろーが!
気軽に投げるんじゃないっ!!!」
「……便利だ」
投げナイフより破壊力もあるし、手に素早く戻ってくるのがいい。今後はこのように使おう、そう納得しているナイト・マーティンである。
「…………何故だ!?」
アゴを地面に着けた男が言う。えいっと自分の下あごを引っ張って無理やり元に戻す。この状態じゃ喋りにくい事この上無い。
「私はさっき少年を見ながら思っていた。
考えていたのだ!
小説の独白《モノローグ》のように!
ナイト・マーティンどうするのだ?
いくら大人びており、信じられないような殺気を発したとは言え、年齢的には8歳の少年。
このオーディンヴァレーの危機的状況に何か出来るのか?
しかも唯一の頼りになる大人。
甲種役人であり、常識も弁えた顔面偏差値の高い男。
こんな時の為に現れたようなハンプティ・ダンディはと言えば。
小生意気な輩ではあるが未成年であるが故に、子供を守るために敵と戦かわなければいけない!
ナイトを救うわけにはいかないのだ!!
相手は攻撃しても効かない人狼は誰だ?。
本気で斬ってしまえば有罪。
こうしている間にも村にはモンスターが溢れている。
この四面楚歌の状況をどうする!
どうするのだ!? ナイト・マーティン!!!
その様に胸の中で思っていたのだっ!
なのに……何故一瞬で状況が変わっている!?」
「なんだよ、ハンプティさんが脅かすからさ。
どうしようもないのかと思っちゃった。
単に操られてる人間を攻撃しないで外套《マント》の方を切れば良かっただけじゃないの。
騙されたー。
ホントにハンプティさん、役立たず人だよね」
「違うっ!
狼の外套《マント》を攻撃すれば良いだけだったならば、
私だって打っていた。
あの畑に落っこちてう〇こ塗れになってる輩だって外套《マント》を切っていたぞ」
「あー、そっか。
う〇こ塗れになってるヤツね。
そう言えば外套《マント》も切ってたかも……」
「フッフッフ。
それこそがワシが吸精の魔剣だからじゃー。
魂を吸い取るんじゃー。
吸い取ってワシの力にするんじゃ。
思考するんだって、こうやって持ち主と会話するんだってエネルギー食うんじゃ。
魂でも吸い取らんとやってられんわい」
ナイトに対して剣が喋る。話し声があたりの空間に広がってはいない。言ってみればナイトの心の中にだけ、話しかけているようなのである。
「どうじゃ、ワシ使えるじゃろ。
役に立つじゃろ。
さすが伝説の魔剣じゃろーっ!」
「まぁな」
自動的に手に戻ってくるだけ投げナイフよりは良いかもしれない、そんな風に考えてるナイトである。
「なんじゃ、子供、分かってるでは無いかー。
それに引き換えあの男と来たら!」
「……あの男?」
「アーサーとか名のるやつじゃ。
なかなかの魔力《マナ》を持っておってのう。
これはなかなかの持ち主かと思ったんじゃ。
ところがあの男、ワシが話しかけたらのう。
チェンジ!
女の子ボイスにチェンジ!
とか言い出しおって。
出来ないの?
坂本マーヤの声は?
堀江ユイ、田村ユカリでもいーよ。
それも入ってないの。
んじゃ要らない。
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