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後編
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3、
この馬鹿女貴様の様な馬鹿女は悪魔神様に相応しくないが仕方が無い死ね死んでしまえそのまま野良犬に死体を喰わせてやろう有り難く思え生きていても何の意味も無いお前が野良犬に施しを与えることが出来るのだ。
男はかすれ声で喋っておりその声はおよそ他人に理解されるため分かり易い抑揚を付けると言った話し方とは程遠く文脈とその言葉の意味を理解する為に俺は時間を必要とする。更に言葉の意味を理解しようとするよりも男の行動に俺は気を取られる。男は包丁を絵里に向けており躊躇なくその凶器が振るわれるのを俺の視線は捉える。首から左胸にかけてを男の包丁は切り割いており絵里の美しい首筋から血が溢れ出すのを俺は見る。白いシャツを着た絵里の胸元から血が流れ出し白いシャツが見る見る内に赤黒く染まるのを見て俺は悲しい気分になる。あの白いシャツを絵里の膨らんだ胸が押し上げている光景は例えようもなく魅力的であったのにその光景をもうニ度と見る事は出来なくなってしまったその事実に俺は絶望的な気分になる。
あはははあはははあはははあはあはあお前みたいなのでも血は赤いのか。
包丁を手に持った男が喋りながら笑っており普通に考えたならば嘲笑い貶す言葉であったけれども口から発せられた言葉はかすれており抑揚を持たず何の意味も持たない音の連なりの様に俺には感じられる。
絵里が首元を抑えながら泣き笑いの表情でしゃがみ込みそのまま玄関先の床に倒れ伏すのを俺は見る。
なにこれ首が切れているの私の血なの。
そんな言葉を発しながら倒れる絵里を俺は見ていて言葉を聞いていてもちろん絵里の発する音は魅力的で有ったのだけれども残念ながら首を包丁で切られたためかその発音ははっきりせず声も小さく俺には聞き取り辛い。
人間二人が血を流し血にまみれた玄関先で包丁を持った男が笑い声と言えないような声で笑い玄関から部屋の中へ土足で上がっていくのを俺は眺める。男は肩に掛けた鞄から筆を取り出し絵里の血に筆を浸し絵里の部屋の壁に何かを書き出していて玄関先で倒れ自分の意識の宿った肉体が徐々に体温が下がっていくのを感じながら俺はそれを眺める。それは魔法陣の様に見えなくもない図形であり稚拙なヘブライ語らしき物と英語のアルファベットが入り混じり数学的魔方陣の要素も組み込まれ書いている人間にとっては何かの意味が有るのであろう事は俺にも理解出来る。
あははっはあはあはははあははあはあ。
多分男なりに書きたい図形を完成させたのであろう男は笑っているのか息を切らせているのか分からない状態になっており筆で図形を書く事は止めていてそんな男を眺めたくは無いけれど俺は眺める。
はははっはははははあやはり駄目かあの様な価値の無い糞の様な馬鹿女では駄目なのだくそしかし糞の様な馬鹿女しかこの世には居ないのだどうすればいいのだいや自分は悪魔神様を召喚し呼び覚ますと言う偉大な事を成し遂げようとしているのだその様な偉業が簡単である筈が無くだからこれも試練で有るのだ糞の様な馬鹿女を殺し続ける事がいずれ偉業の一歩に成るのだ偉業を成し遂げるとはその様な事なのだ。
男は一人で喋っておりやはりその言葉には抑揚が無く意味を理解するのは俺には難しい。その様な無駄な音の連なりを発しながらも男は行動もしておりそれは俺の愛する絵里の体に触れシャツを切り割き剥ぎ取る事で腹部を外に出すと言う動作でありそのため絵里の白い肌引き締まったお腹と御臍が俺の視界に飛び込んでくる。通常であれば無限の魅力で最上の幸せを俺にもたらす筈のその光景はしかし絵里の肌からあの剝きたての果実のような瑞々しさが失われており青白く感じるその肌は幸福を感じさせる処か俺は悲しみを感じる。
くははくくあひゃひゃはひゃひゃくくけけけけけけけ。
男が絵里の腹部を包丁で切り割き更に絵里の白い肌を赤く染めるその作業は男に取っての偉業をやり遂げた後の息抜き的行動なのかもしれないと俺は推測する。しかしその様に目の前の男の精神の構造や行動の理由を考える事自体が無駄な試みで何の益も無い作業だと俺は理解している。
人間は血液の20%を失うと出血性ショックを引き起こし30%ともなると生命の危険と言われ50%に達すると心停止の状態に陥ると言う知識が俺には有る。だから生命の危機と呼ばれる状態で近く心停止を起こすであろう俺の体は立ち上がるどころか腕一本動かない状態であると言うその常識に俺は従う。一方で悪魔崇拝者の成り損ないの男が絵里の可愛らしい御臍に包丁を刺し更に膨らんだ胸に刃物を突き入れ下腹部の下着を弄り回す光景は俺と言う人間が怒り狂う事に成っても当然であると俺は思う。
だから俺の体を立ち上げ絵里の下腹部の下着を弄り回した挙句刃物を突き刺していた男の体に俺は手を掛ける。出血で人間の体が動かない事も常識で絵里の体を凶器で刺される事に怒り狂い黙っていない事も常識ならばどちらの常識を取るかは俺の判断で有り自由に振る舞って良い筈だと俺は考える。
飛び跳ねた目の前の男がその愚かしそうな外見に似合わず機敏に動き自分を守る姿勢を取って距離を取りつつ俺の方向に包丁の先端を向けるのを俺は見る。
何故だ何故動いているあの出血で動ける筈が無い既に死んでいる筈だ死人が動いているのか死人が動く筈が無い動くとしたら唯一つ悪魔神様の御力だ
男が飛び退いた後の絵里の体を俺は見つめる。切り裂かれて人間の腹としての形状を留めていない絵里の腹部からは内臓が溢れ赤黒い血と油にまみれており俺と言う人間に無限の幸せを与えてくれた筈の可愛らしい御臍は既に見つける事が俺には出来ない。もしかしたら絵里を見つめるよりも俺に向かって凶器を構える男に対処する事の方が一般的な判断では優先的に行うべき事なのかもしれなかったが絵里を見つめる事の方が俺にとっては遥かに優先すべき事だと俺は考える。
絵里好きだ好きだ愛してる魔法の呪文を唱えてみるが俺の情動は物悲しいままでその言葉を唱えるだけで精神が浮き立ち目の前の絵里を抱きしめたい口づけをしたい食べてしまいたいと言う情動が蘇って来ないのを俺は感じる。
何が違うのかと俺は考える。もちろん絵里は傷つき腹部は損傷を受け内臓がはみ出て血と油に塗れてはいるがそれだけの差で有り数分前までの人間の女性である事には違いが無い筈だと俺は思う。それは逆に考えるとそれだけの差で揺らぐほどの愛しか俺は絵里に対して持っていなかったと言う事にならないかと言う疑問を俺は持つ。
包丁を持つ男が俺の体を長細い棒おそらくは清掃用具と思われるそれで突いた事によって俺は思考を中断する。
悪魔神様悪魔神様なのですか何故その様な男の体を使って降臨なされたのです。
何故自分の崇拝の対象かもしれない存在に対して清掃用具で突こう等と考え付くのかやはり一般常識を外れた人間であるのだろうと俺は納得する。
אני לא אל שדים
I'm not a demon god
男が魔法陣らしき物に描いていた言語に沿ってヘブライ語と英語で俺は答える。しかし男はまともに反応せずどちらの言葉も理解出来ていないと俺は理解する。何故ヘブライ語で呼び出した悪魔に日本語で会話を試みるのかその思考は俺には理解出来ないし理解する必要も無いと俺は思う。
男が言う悪魔神がどの様な概念か分からないがそれに近い存在では俺は無い。日本語で言えば悪霊小悪魔ジン精霊と言った言葉が近い筈だと俺は思う。日本には一億三千万に近い数の人間がいてその中には俺に近い存在を宿している者も大勢いて正式な統計は不可能であるしどこまでを俺に近いと言うかにも影響されると俺は思う。目の前の男にも微小では有るが感じられ邪妖精位の言葉が近いだろうかそれとも夢魔心に住み着き歪んだ方向へ導くと人が呼ぶ存在を俺は感じている。
悪魔神様では無い悪魔では無い神では無い何故この場に居る己悪魔神様を騙ったな自分を謀ろうとしたな。
死んだ筈の人間が起き上がり自分を脅かしたその現実を男は激高する事で解決しようと試みていると俺は理解する。男が突き出してきた刃物を動かない筈の手で俺は受け止める。刃が俺の左の掌に刺さり抜けなくなり慌てて俺の手から刃物を抜こうと苦心する男を俺は眺める。男から左手をもぎ取ると俺の視界に入る左手には手の甲から突き抜けた刃物が有り抜けた部分の刃先だけで10cmは越えているのが俺に見て取れる。凶器を失い呆然とする男に左手の裏拳を俺は振るう。俺の拳が男の顔に触れる前に左手の甲から突き出た刃が男の顔に当たり刃物は男の下顎の骨に当たり骨まで切り裂く事は出来ないが男の頬から唇に掛けての皮膚は大きく切れたのが俺には見える。
ぐぎゃはあうあうあうあうあうああああああ。
通常から発する言葉が聞き取りにくい男は唇の肉を斜めに切られ血と唾液を口周辺に溢れさせており聞き取りにくい言葉が更に聞き取りにくくなっているが元々意味の有る事は喋っていない位は俺にも予想が着く。
頬に手を当て蹲る男の頭にに俺は右手を当てる。4分の3ozグラム法で言うとおよそ21.262グラムが男の体から消失した筈だと俺は思う。男が頬に手を当てたポーズのまま前のめりに倒れそれ以降動かなくなるのを俺は見る。
玄関先に倒れている人間の女性の死体に俺は近付く。動かなくなり音声を発する事が無くなり俺の情動を揺り動かす事が無くなった存在で俺には無価値で有ると俺は思う。しかし数分前までの情動を俺は覚えている。好きだ好きだ愛してるそんな言葉を何万回繰り返しても足りない気がする俺の感情を俺は覚えている。動かなくなった女性の死体と俺の感情を揺り動かした絵里この差はおよそ21.262グラムの何かで埋まるのだろうかと俺は考える。
女性の肉体を俺は回復させる。材料は有ると俺は思う。転がってる男の死体を俺は食す。腕を足を肉を骨を血液を髪の毛を俺の口の中へと俺は入れていく。俺の腹に有った筈の切り傷が見る間に塞がって失われていた体内を循環する体液が補充されるのを俺は感じる。適当に俺の肉体を俺は千切る。女性の死体の損なわれた部分に近い部位である俺の首の肉を指で千切り取り女性の死体の首に充てる作業を俺はする。同様に俺の腹の肉を毟り取って女性の死体の腹部に俺の胸の肉を引き裂いて女性の死体の胸へとそれぞれ作業を俺は繰り返す。
女性の死体は既に死体と呼ぶのが適当でないと俺は思う。心臓が動き出し血液が巡回しており肺が動き体内に酸素を取り入れ二酸化炭素を吐き出しているのを俺は観察する。その既に死体と呼ぶのが適当でないであろう女性の体におよそ21.262グラムの何かを俺の体から俺は移動させる。俺の体は凶器を持っていた男の肉体およそ60キログラムを咀嚼して体内に取り込んでおりそれ位は誤差の範囲に過ぎないと俺は考える。
血と油に塗れた俺の手と体を慎重に洗い洗った手で絵里の体を絵里の寝具の上へと俺は運ぶ。寝具の上へ寝かせた絵里を見て俺の情動が動かされるのを俺は感じる。絵里の色付く頬に顔を寄せたいその可愛らしい顔を抱きしめたい二の腕を撫でさすりたい形よく盛り上がった胸肉に俺の顔を埋めたいと俺は欲する。
このまま絵里の寝姿を眺めていたいがまだやる事が残っているのを俺は知っている。玄関に転がった男の衣服俺の口から胃に収めても良いのだけれどこの肉体の消化器官にはよろしくない事を俺は知っている。床に溢れた体液を拭い近くのドラッグストアで購入して来た消臭剤を俺は撒く。男の衣服をマンションのベランダで丁寧に俺は燃やす。衣服の灰と包丁を小さな紙袋に入れてコンビニエンスストアのゴミ箱に俺は捨てる。
全て終えると既に街は暗く絵里の部屋に有った時計の針はは0時を過ぎているのを俺は見る。絵里の寝具に俺の肉体を俺は横たえる。絵里の寝具は一人用で俺は窮屈に感じるがその分絵里と俺の肉体が密着し言い表しようの無い幸福に俺は包まれる。
4、
大学の受講を終えて校内の中庭を僕は歩く。37兆2000億個の僕の体内に有る細胞が引っ張られるのを僕は感じている。僕の引っ張られていく足の先に何が待っているのか僕にはもう分かっている。
あっきゃーきゃー。
僕の顔を見て絵里の近くに居た女友達が声を上げる。騒めきながら絵里から離れて行くいつもの事では有るけれどいつもより若干騒がしい気がして僕は違和感を覚える。絵里の友人の一人が僕に近付き囁くけれど何を言ってるのか早口で僕は聞き取れない。
寝ちゃった絵里に何もしないなんて紳士じゃん見直したけど今度は二人とも合意の上で最後までやりなよ中途半端じゃ絵里だって落ち着かないよ。
良く聞き取れなかったけれど多分こんな様な内容の事を囁いたと僕は推測する。絵里と僕は並んで歩きだす。絵里の頬はいつも以上に赤らんでいて少し興奮してるみたいだと僕は思う。もちろんその顔も魅力的で僕は絵里に視線を吸い寄せられている。
好きだ好きだ愛してる。比留間君その言葉言い過ぎなんだよもっとさりげなく大事な場面で言ってよ。じゃあさりげなく好きださりげなく愛してる。今朝は御免なさい最低男とか強姦魔とか言い過ぎたと思う悪かったと思ってるのだって朝起きたら隣に比留間君が寝てるんだもの驚くでしょ驚いてつい言い過ぎてしまったの。うんそうだったねもう気にしてないというか最初から気にしてないよ。少しは気にしてよ比留間君だって悪いよいつの間に寝ちゃったのか覚えてないけど何も言わずに女性の隣で寝るのだってどうかと思うよ。そうだね一人用の寝具だものね窮屈だったかい御免ね。いやそういう意味じゃないよもうまあいいけど私の体に何の痕跡も無く奇麗だったし友達に相談したらその状態で何も無いなんて奇跡みたいだって言うしむしろ信じられない位紳士だから比留間君を大事にしてあげろなんて言われちゃったし。そうなんだ僕なんて普通だよ奇跡みたいに絵里に惹かれていて絵里と一緒に居ると有り得ない位幸せだって言う以外は普通だよ。だから言い過ぎなんだよ比留間君。
絵里と一緒に話をしながら僕は歩く。気が付くともう絵里の部屋の有るマンションのエントランスに居て絵里は顔を赤らめて僕に言う。
今日も泊っていく。うんもちろんだよ。じゃあ歯ブラシとかパジャマ買いに行こうか。うん一つ確認しておきたいんだけど。何かな。今日は何もしないって言う約束はしないよ。
クリーム色の壁とブラウンの扉の前で絵里を僕は抱き締めた。
この馬鹿女貴様の様な馬鹿女は悪魔神様に相応しくないが仕方が無い死ね死んでしまえそのまま野良犬に死体を喰わせてやろう有り難く思え生きていても何の意味も無いお前が野良犬に施しを与えることが出来るのだ。
男はかすれ声で喋っておりその声はおよそ他人に理解されるため分かり易い抑揚を付けると言った話し方とは程遠く文脈とその言葉の意味を理解する為に俺は時間を必要とする。更に言葉の意味を理解しようとするよりも男の行動に俺は気を取られる。男は包丁を絵里に向けており躊躇なくその凶器が振るわれるのを俺の視線は捉える。首から左胸にかけてを男の包丁は切り割いており絵里の美しい首筋から血が溢れ出すのを俺は見る。白いシャツを着た絵里の胸元から血が流れ出し白いシャツが見る見る内に赤黒く染まるのを見て俺は悲しい気分になる。あの白いシャツを絵里の膨らんだ胸が押し上げている光景は例えようもなく魅力的であったのにその光景をもうニ度と見る事は出来なくなってしまったその事実に俺は絶望的な気分になる。
あはははあはははあはははあはあはあお前みたいなのでも血は赤いのか。
包丁を手に持った男が喋りながら笑っており普通に考えたならば嘲笑い貶す言葉であったけれども口から発せられた言葉はかすれており抑揚を持たず何の意味も持たない音の連なりの様に俺には感じられる。
絵里が首元を抑えながら泣き笑いの表情でしゃがみ込みそのまま玄関先の床に倒れ伏すのを俺は見る。
なにこれ首が切れているの私の血なの。
そんな言葉を発しながら倒れる絵里を俺は見ていて言葉を聞いていてもちろん絵里の発する音は魅力的で有ったのだけれども残念ながら首を包丁で切られたためかその発音ははっきりせず声も小さく俺には聞き取り辛い。
人間二人が血を流し血にまみれた玄関先で包丁を持った男が笑い声と言えないような声で笑い玄関から部屋の中へ土足で上がっていくのを俺は眺める。男は肩に掛けた鞄から筆を取り出し絵里の血に筆を浸し絵里の部屋の壁に何かを書き出していて玄関先で倒れ自分の意識の宿った肉体が徐々に体温が下がっていくのを感じながら俺はそれを眺める。それは魔法陣の様に見えなくもない図形であり稚拙なヘブライ語らしき物と英語のアルファベットが入り混じり数学的魔方陣の要素も組み込まれ書いている人間にとっては何かの意味が有るのであろう事は俺にも理解出来る。
あははっはあはあはははあははあはあ。
多分男なりに書きたい図形を完成させたのであろう男は笑っているのか息を切らせているのか分からない状態になっており筆で図形を書く事は止めていてそんな男を眺めたくは無いけれど俺は眺める。
はははっはははははあやはり駄目かあの様な価値の無い糞の様な馬鹿女では駄目なのだくそしかし糞の様な馬鹿女しかこの世には居ないのだどうすればいいのだいや自分は悪魔神様を召喚し呼び覚ますと言う偉大な事を成し遂げようとしているのだその様な偉業が簡単である筈が無くだからこれも試練で有るのだ糞の様な馬鹿女を殺し続ける事がいずれ偉業の一歩に成るのだ偉業を成し遂げるとはその様な事なのだ。
男は一人で喋っておりやはりその言葉には抑揚が無く意味を理解するのは俺には難しい。その様な無駄な音の連なりを発しながらも男は行動もしておりそれは俺の愛する絵里の体に触れシャツを切り割き剥ぎ取る事で腹部を外に出すと言う動作でありそのため絵里の白い肌引き締まったお腹と御臍が俺の視界に飛び込んでくる。通常であれば無限の魅力で最上の幸せを俺にもたらす筈のその光景はしかし絵里の肌からあの剝きたての果実のような瑞々しさが失われており青白く感じるその肌は幸福を感じさせる処か俺は悲しみを感じる。
くははくくあひゃひゃはひゃひゃくくけけけけけけけ。
男が絵里の腹部を包丁で切り割き更に絵里の白い肌を赤く染めるその作業は男に取っての偉業をやり遂げた後の息抜き的行動なのかもしれないと俺は推測する。しかしその様に目の前の男の精神の構造や行動の理由を考える事自体が無駄な試みで何の益も無い作業だと俺は理解している。
人間は血液の20%を失うと出血性ショックを引き起こし30%ともなると生命の危険と言われ50%に達すると心停止の状態に陥ると言う知識が俺には有る。だから生命の危機と呼ばれる状態で近く心停止を起こすであろう俺の体は立ち上がるどころか腕一本動かない状態であると言うその常識に俺は従う。一方で悪魔崇拝者の成り損ないの男が絵里の可愛らしい御臍に包丁を刺し更に膨らんだ胸に刃物を突き入れ下腹部の下着を弄り回す光景は俺と言う人間が怒り狂う事に成っても当然であると俺は思う。
だから俺の体を立ち上げ絵里の下腹部の下着を弄り回した挙句刃物を突き刺していた男の体に俺は手を掛ける。出血で人間の体が動かない事も常識で絵里の体を凶器で刺される事に怒り狂い黙っていない事も常識ならばどちらの常識を取るかは俺の判断で有り自由に振る舞って良い筈だと俺は考える。
飛び跳ねた目の前の男がその愚かしそうな外見に似合わず機敏に動き自分を守る姿勢を取って距離を取りつつ俺の方向に包丁の先端を向けるのを俺は見る。
何故だ何故動いているあの出血で動ける筈が無い既に死んでいる筈だ死人が動いているのか死人が動く筈が無い動くとしたら唯一つ悪魔神様の御力だ
男が飛び退いた後の絵里の体を俺は見つめる。切り裂かれて人間の腹としての形状を留めていない絵里の腹部からは内臓が溢れ赤黒い血と油にまみれており俺と言う人間に無限の幸せを与えてくれた筈の可愛らしい御臍は既に見つける事が俺には出来ない。もしかしたら絵里を見つめるよりも俺に向かって凶器を構える男に対処する事の方が一般的な判断では優先的に行うべき事なのかもしれなかったが絵里を見つめる事の方が俺にとっては遥かに優先すべき事だと俺は考える。
絵里好きだ好きだ愛してる魔法の呪文を唱えてみるが俺の情動は物悲しいままでその言葉を唱えるだけで精神が浮き立ち目の前の絵里を抱きしめたい口づけをしたい食べてしまいたいと言う情動が蘇って来ないのを俺は感じる。
何が違うのかと俺は考える。もちろん絵里は傷つき腹部は損傷を受け内臓がはみ出て血と油に塗れてはいるがそれだけの差で有り数分前までの人間の女性である事には違いが無い筈だと俺は思う。それは逆に考えるとそれだけの差で揺らぐほどの愛しか俺は絵里に対して持っていなかったと言う事にならないかと言う疑問を俺は持つ。
包丁を持つ男が俺の体を長細い棒おそらくは清掃用具と思われるそれで突いた事によって俺は思考を中断する。
悪魔神様悪魔神様なのですか何故その様な男の体を使って降臨なされたのです。
何故自分の崇拝の対象かもしれない存在に対して清掃用具で突こう等と考え付くのかやはり一般常識を外れた人間であるのだろうと俺は納得する。
אני לא אל שדים
I'm not a demon god
男が魔法陣らしき物に描いていた言語に沿ってヘブライ語と英語で俺は答える。しかし男はまともに反応せずどちらの言葉も理解出来ていないと俺は理解する。何故ヘブライ語で呼び出した悪魔に日本語で会話を試みるのかその思考は俺には理解出来ないし理解する必要も無いと俺は思う。
男が言う悪魔神がどの様な概念か分からないがそれに近い存在では俺は無い。日本語で言えば悪霊小悪魔ジン精霊と言った言葉が近い筈だと俺は思う。日本には一億三千万に近い数の人間がいてその中には俺に近い存在を宿している者も大勢いて正式な統計は不可能であるしどこまでを俺に近いと言うかにも影響されると俺は思う。目の前の男にも微小では有るが感じられ邪妖精位の言葉が近いだろうかそれとも夢魔心に住み着き歪んだ方向へ導くと人が呼ぶ存在を俺は感じている。
悪魔神様では無い悪魔では無い神では無い何故この場に居る己悪魔神様を騙ったな自分を謀ろうとしたな。
死んだ筈の人間が起き上がり自分を脅かしたその現実を男は激高する事で解決しようと試みていると俺は理解する。男が突き出してきた刃物を動かない筈の手で俺は受け止める。刃が俺の左の掌に刺さり抜けなくなり慌てて俺の手から刃物を抜こうと苦心する男を俺は眺める。男から左手をもぎ取ると俺の視界に入る左手には手の甲から突き抜けた刃物が有り抜けた部分の刃先だけで10cmは越えているのが俺に見て取れる。凶器を失い呆然とする男に左手の裏拳を俺は振るう。俺の拳が男の顔に触れる前に左手の甲から突き出た刃が男の顔に当たり刃物は男の下顎の骨に当たり骨まで切り裂く事は出来ないが男の頬から唇に掛けての皮膚は大きく切れたのが俺には見える。
ぐぎゃはあうあうあうあうあうああああああ。
通常から発する言葉が聞き取りにくい男は唇の肉を斜めに切られ血と唾液を口周辺に溢れさせており聞き取りにくい言葉が更に聞き取りにくくなっているが元々意味の有る事は喋っていない位は俺にも予想が着く。
頬に手を当て蹲る男の頭にに俺は右手を当てる。4分の3ozグラム法で言うとおよそ21.262グラムが男の体から消失した筈だと俺は思う。男が頬に手を当てたポーズのまま前のめりに倒れそれ以降動かなくなるのを俺は見る。
玄関先に倒れている人間の女性の死体に俺は近付く。動かなくなり音声を発する事が無くなり俺の情動を揺り動かす事が無くなった存在で俺には無価値で有ると俺は思う。しかし数分前までの情動を俺は覚えている。好きだ好きだ愛してるそんな言葉を何万回繰り返しても足りない気がする俺の感情を俺は覚えている。動かなくなった女性の死体と俺の感情を揺り動かした絵里この差はおよそ21.262グラムの何かで埋まるのだろうかと俺は考える。
女性の肉体を俺は回復させる。材料は有ると俺は思う。転がってる男の死体を俺は食す。腕を足を肉を骨を血液を髪の毛を俺の口の中へと俺は入れていく。俺の腹に有った筈の切り傷が見る間に塞がって失われていた体内を循環する体液が補充されるのを俺は感じる。適当に俺の肉体を俺は千切る。女性の死体の損なわれた部分に近い部位である俺の首の肉を指で千切り取り女性の死体の首に充てる作業を俺はする。同様に俺の腹の肉を毟り取って女性の死体の腹部に俺の胸の肉を引き裂いて女性の死体の胸へとそれぞれ作業を俺は繰り返す。
女性の死体は既に死体と呼ぶのが適当でないと俺は思う。心臓が動き出し血液が巡回しており肺が動き体内に酸素を取り入れ二酸化炭素を吐き出しているのを俺は観察する。その既に死体と呼ぶのが適当でないであろう女性の体におよそ21.262グラムの何かを俺の体から俺は移動させる。俺の体は凶器を持っていた男の肉体およそ60キログラムを咀嚼して体内に取り込んでおりそれ位は誤差の範囲に過ぎないと俺は考える。
血と油に塗れた俺の手と体を慎重に洗い洗った手で絵里の体を絵里の寝具の上へと俺は運ぶ。寝具の上へ寝かせた絵里を見て俺の情動が動かされるのを俺は感じる。絵里の色付く頬に顔を寄せたいその可愛らしい顔を抱きしめたい二の腕を撫でさすりたい形よく盛り上がった胸肉に俺の顔を埋めたいと俺は欲する。
このまま絵里の寝姿を眺めていたいがまだやる事が残っているのを俺は知っている。玄関に転がった男の衣服俺の口から胃に収めても良いのだけれどこの肉体の消化器官にはよろしくない事を俺は知っている。床に溢れた体液を拭い近くのドラッグストアで購入して来た消臭剤を俺は撒く。男の衣服をマンションのベランダで丁寧に俺は燃やす。衣服の灰と包丁を小さな紙袋に入れてコンビニエンスストアのゴミ箱に俺は捨てる。
全て終えると既に街は暗く絵里の部屋に有った時計の針はは0時を過ぎているのを俺は見る。絵里の寝具に俺の肉体を俺は横たえる。絵里の寝具は一人用で俺は窮屈に感じるがその分絵里と俺の肉体が密着し言い表しようの無い幸福に俺は包まれる。
4、
大学の受講を終えて校内の中庭を僕は歩く。37兆2000億個の僕の体内に有る細胞が引っ張られるのを僕は感じている。僕の引っ張られていく足の先に何が待っているのか僕にはもう分かっている。
あっきゃーきゃー。
僕の顔を見て絵里の近くに居た女友達が声を上げる。騒めきながら絵里から離れて行くいつもの事では有るけれどいつもより若干騒がしい気がして僕は違和感を覚える。絵里の友人の一人が僕に近付き囁くけれど何を言ってるのか早口で僕は聞き取れない。
寝ちゃった絵里に何もしないなんて紳士じゃん見直したけど今度は二人とも合意の上で最後までやりなよ中途半端じゃ絵里だって落ち着かないよ。
良く聞き取れなかったけれど多分こんな様な内容の事を囁いたと僕は推測する。絵里と僕は並んで歩きだす。絵里の頬はいつも以上に赤らんでいて少し興奮してるみたいだと僕は思う。もちろんその顔も魅力的で僕は絵里に視線を吸い寄せられている。
好きだ好きだ愛してる。比留間君その言葉言い過ぎなんだよもっとさりげなく大事な場面で言ってよ。じゃあさりげなく好きださりげなく愛してる。今朝は御免なさい最低男とか強姦魔とか言い過ぎたと思う悪かったと思ってるのだって朝起きたら隣に比留間君が寝てるんだもの驚くでしょ驚いてつい言い過ぎてしまったの。うんそうだったねもう気にしてないというか最初から気にしてないよ。少しは気にしてよ比留間君だって悪いよいつの間に寝ちゃったのか覚えてないけど何も言わずに女性の隣で寝るのだってどうかと思うよ。そうだね一人用の寝具だものね窮屈だったかい御免ね。いやそういう意味じゃないよもうまあいいけど私の体に何の痕跡も無く奇麗だったし友達に相談したらその状態で何も無いなんて奇跡みたいだって言うしむしろ信じられない位紳士だから比留間君を大事にしてあげろなんて言われちゃったし。そうなんだ僕なんて普通だよ奇跡みたいに絵里に惹かれていて絵里と一緒に居ると有り得ない位幸せだって言う以外は普通だよ。だから言い過ぎなんだよ比留間君。
絵里と一緒に話をしながら僕は歩く。気が付くともう絵里の部屋の有るマンションのエントランスに居て絵里は顔を赤らめて僕に言う。
今日も泊っていく。うんもちろんだよ。じゃあ歯ブラシとかパジャマ買いに行こうか。うん一つ確認しておきたいんだけど。何かな。今日は何もしないって言う約束はしないよ。
クリーム色の壁とブラウンの扉の前で絵里を僕は抱き締めた。
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ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

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