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貧民街の魔少年

廃墟で戦う男Ⅱ

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「狩りだ!
 奴隷狩りの連中が来てる!」

随分と物騒な単語が飛び出して来たじゃないか。


「サマラは?」
「今呼びに行ってる」

銀髪の少年は建物の外の様子を覗う。
行きがかり上俺も付き合った。


「ずいぶんと凶悪な面相の奴らだな。
 少なくとも愛犬の散歩に来たんじゃなさそうだ」

馬車から降りて来た連中が俺の視界に入る。
人間だけじゃない。
犬も連れている。


「……まずいね。
 人数が多い」
「馬車が2台か……
 人数は……20人はいるな」

「普通は4、5人しか来ない。
 ここのところうまく追い払っていたんだ」
「子供だけでか?」

「建物に入ってきたら薬を嗅がせて、動きが鈍いところなら子供でも殺せる。
 後は……強い仲間がいるけど、今はいない。
 そのタイミングを見計らってきたんだと思う」


武装をした男達が建物に近づいて来ていた。
連れている犬まで凶悪な面構えだ。
勿論お座敷犬じゃない。
黒と茶色の毛、人間に近い体躯。
向こうの世界のドーベルマンに似たタイプ。
牙がちょっとばかり軍用犬より飛び出ているのがご愛敬。

黒魔犬ブラックドッグだ」
「アイツら……人間まで食べちゃうんだよ」

周囲の幼い子供達が怯える。

「イナンナの街は武器を抜き身にするのは許されないと聞いてるんだがな、行儀の悪い連中だ」
「そんなの守る人はここにいないよ」


男たちが犬を放つ。

グルゥ……グアァァァァアッ!!

こちらに猛烈な勢いで走る獣ども。
建物の近くでその勢いはいきなり落ちた。

ガウッ!
キャイーン!

落とし穴に落ちるモノ、ヤリに貫かれるモノ。


「罠のオンパレードだな」

「罠で動けなくして毒矢でトドメを刺すんだ」
「大人があんなにいちゃトドメにはいけないよ」

子供達が俺に教えてくれる。

犬は何頭も倒れたが罠を越えたヤツが近づいてくる。
その後を人間達が近づいてくる。

「犬を先に行かせて罠を破るとはな。
 動物愛護団体からクレームがくるぜ」
「……ドウブツアイゴ……?」


「入り口に網が仕掛けてある。
 身動き取れなくなったら矢で攻撃するんだ」

美少年の合図で子供達が入り口の脇に待機する。

みんな投矢・ダーツゲームで使うようなヤツを持っている。

アレに毒が仕込まれてるワケか。
俺ならこんな危険地帯には近づかない。
もちろん犬は恐れげなく飛び込んでくる。

網にかかってもがく犬たち。
死のダーツが飛んでいく。

オッソロシイねぇ。
どちらが被害者か分からない。


「剣を貸してくれ」
「……あなたが僕たちの味方とは限らないな」

俺は銀髪の少年に言う。
美少年は賢しげな顔で応えるが、それどころじゃないのだ。

「人間達も近づいてくる。
 早くしろ!」

「……さっき妹ちゃんにキスをプレゼントして貰ったからな。
 そのプレゼント代くらいは働いてやるぜ」


黒魔犬ブラックドッグどもは網に絡まって動けなくなっているが、悪運強く抜け出してきたヤツが子供を襲う。

グルルゥゥ!!……グァッ!ガアアア!!!!

派手な牙が子供達に向けられる。

その寸前だった。
俺の剣が犬の胴体を刺し貫く。

美少年に渡された剣は手入れがいいとは言えないシロモノだったが、贅沢は言っていられない。
網の中でもがいてる犬どもにも俺はトドメを刺す。
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