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貧民街の魔少年

宿に辿り着いた男Ⅲ

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俺達は夜の街を歩いている。
たちとは冒険者のジェイスン、すなわち俺と筋肉女、そして6人ほどの男の事だ。

俺のまわりを囲むように男と筋肉女が歩いているのだ。
全員黒い紳士服に身を包む男達。
夜の街は昼間程では無いが人通りが多い。
まだ営業してる飲食店も有り、通りにはカンテラが灯されてる。

ところが俺の行く先には誰もいない。
通り過ぎる人々が俺達を見て、怯えながら避けて行くのである。
正確には黒服の男に怯えている。


「街の人はみんなあんたらを知ってるようだな」
「この街でコナー・ファミリーを見て分からないのはお前くらいだ」

マッチョ男が答える。

「有名人とは知らなかった。
 後でサインしてくれよ」



「…………アーニー。
 誰かつけてくるぞ」

言ったのは筋肉女だ。

「なんだと?!」

答えたマッチョ男がアーニーだろう。
アーニーが辺りを見回して、他の男どもに指示を出す。

「そこの脇道に入れ!
 迎え撃つぞ」

意外と判断が早い。
脳味噌まで筋肉で出来ていそうな外見だが荒事には慣れているのだろう。

俺を中心に囲んで黒服どもが立つ。
リーダー格の筋肉二人が前後に分かれる。
後ろにはアーニーと呼ばれたマッチョ男だ。
先頭に居るのは筋肉女だ。

立派なヒップと背筋が俺の目に入る。
グラビアのような光景だが、男性誌の表紙を飾るそれじゃない。
筋肉を鍛える器具の通信販売のそれである。
これで興奮する男がいたらよっぽどの勇者だ。


「ジェイスン、あんたはマザーの客人だ。
 手は出させん」

アーニーが低い声で言う。
なかなかに頼もしい雰囲気の男。

「ああ、事情がサッパリだからな。
 俺は高見の見物させてもらう」

俺は素直にアーニーに頼る事にした。



裏通りに悠然と姿を現したのは、僧侶姿の大男だった。
手に身長を越えるような長い鉄棒を持っている。

「坊さん。
 夜道で女をつけてくるとはいただけないねぇ」
「いやいや、あんたのカッコがあまりにセクシーなんでな。
 ついつい足が勝手に動いてしまった」

勇者がいたみたいだ。


女が楽しそうに笑う。
拳を握り、ファイティングポーズを決める。

「あたしをケイト・コナーと知って、口説いてるんだろうね?」

セリフと同時に殴りかかる。
普通の人間なら、一発喰らっただけで頭蓋骨陥没を起こしそうなパンチだ。
普通の人間なら。

僧侶は拳の先にいなかった。

「……ケイトさんか。
 わしの名はコーザン、覚えておいてくれ」

コーザンの身体は路地裏の闇に溶け込んでいた。
闇の中から、鉄棒だけが舞う。

ケイトの後ろにいた黒服がいきなり打撃を受けて倒れる。
俺の目には坊さんが何処にいるか分からない。


「わしが用事があるのは、その男なんだよな」

いきなり横に現れた坊さん。
コーザンはハゲ頭に手を当て、笑いながら言うのだ。

「素直に渡してくれんかのう」

むろん、俺の事だろう。


「彼はゴッドマザーの客人だ。
 コナー・ファミリーの誇りにかけて手をださせん」

マッチョ男、アーニーが俺とコーザンの間に立ち塞がる。

別方向からはケイトが再度コーザンに殴りかかる。
すると僧侶は姿を消すのだ。

暗闇に黒い衣服で溶け込むように消える。
ハゲ頭が一瞬光を反射するのだけが見える。


「チッ、どうした?
 かかってきな!」
「美人は攻撃したくないなぁ」

ケイトは苛立って、攻撃的な声を上げる。

僧侶はデカイ図体で器用だった。
するすると避けるのである。

他のマフィア男も襲い掛かるが、僧侶はそれを躱して反撃を加える。
鉄棒で腹を突かれ、脳天を撃たれ倒れる男達。
女は攻撃しないと言うが、男には容赦しないらしい。

「困ったのう。
 おヌシ達と遊んでいる間に標的に逃げられたではないか」

ケイトとアーニーが顔を見合わす。

そう、俺はとっくにその場から逃げ出していた。
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