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イナンナの暗黒神殿
復讐する男Ⅱ
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狂った老人どもの妄執が生み出した幻想だった。
「エレシュキガル神の慈悲によって、あなたたちは若さを取り戻すのです」
娘たちは俺と同じ、タライで天井の棘で刺し殺されようとしている。
押し潰された娘の生き血を浴びれば若返れる。
そんな狂った発想をもっともらしい言葉で語っている。
クレイブンの悪事は山賊と通じているだけじゃなかった!
攫ってきた女性を狂気の生贄に捧げていたのだ。
フレデリカが逃げ出したくなるのは当然だ。
巨大タライが天井に向かって上がっていく。
中にいる娘たちは何をされるか分かったのだろう。
叫びをあげる者、許しを請う者さまざまだ。
悲鳴がタライと天井から反響して壇上に響く。
おっそろしい事に客達はそれを聞いて笑みを浮かべているのだ。
愉悦の笑み。
コイツラ……本気で若返れると信じているのか?!
それとも、自分達より下の存在を殺す事、それ自体に喜びを感じている……
止めよう。
こんな人間どもの精神構造を理解しようとするだけ、無駄な行為だ。
会場が興奮に包まれるなか、壇上へと俺は飛び出していった。
タライのハンドルを回す大男のハゲた頭に斧を叩きつける。
頭から血と脳漿を吹き出しながら大男は倒れた。
大男の大剣が転がっていたのを拾い上げる。
壇上に居る者たちが俺を見て慌てふためく。
「な、なにしやがる?!」
「テメェ、何もんだ!」
俺は立て続けに警備らしき武装した男どもを巨大な剣で切り裂く。
後ろから襲って来ようとするヤツには斧を叩きつける。
偃月刀と斧の二刀流だ。
「なんだ、キサマは?!」
俺に指を突き付ける紳士服を着た男性。
まだ状況が理解できていないのだ。
返事をするコトも無く、剣を腕先に振るう。
大剣は片刃の造りで切れ味が良い業物だった。
重さを利用し振るうだけで人の肉体を切り裂く。
貴族の腕先はアッサリ、肘から先が切り落とされていた。
叫び声を上げて、壇上から下へ転がり落ちる男。
見物していた観客たちがパニックになる。
さきほどまで何かの余興かと勘違いしていた輩も多かったようだが。
既にそんな余裕は無い。
揃って逃げ出そうとしている。
その間もおれは武装した連中と戦っている。
警備に配置された賊はそれなりの実力者なのだろう。
慌てていた賊どもだったが、すぐに徒党を組んで俺に反撃してきた。
俺は自分に対して突き出される剣を、槍を、あらゆる武器を全く無視して、偃月刀と斧の二刀流で周り中を切り裂いていた。
そのたびに頭が舞い飛び、腕が落ちる。
壇上は血の海になっていた。
賊の男達もパニックに陥るのに時間はかからなかった。
「剣が刺さってる!
刺さってるのになんで死なねーんだ!」
「オレの槍が……槍が心臓を貫いたのに!」
真夜中俺が殺されるとどうなるか。
答えはすでに出ていた。
刺された瞬間、痛みは有るのだ。
だが怒りのアドレナリンがおれの身体中を駆けめぐり、痛みを無視する。
最初は身体に刺さった剣は抜いていた。
抜いてその剣を相手の身体めがけて投げてやった。
そのたびにおれの身体から傷はウソのように無くなる。
途中から面倒くさくなり、剣や槍を身体に突き立てたまま俺は暴れた。
偃月刀を振るい、体に刺さった槍を前に突き出す。
目の前の男が胸に槍を生やしたまま倒れる。
横の筋肉オトコの顔半分が宙を飛び、血がシャワーのように舞う。
「こいつバケモノだ!
暗黒神の使いだ!!」
誰かが叫ぶ。
確かに顔を面で隠し、血まみれで殺しても死なない俺はバケモノのようだっただろう。
悪夢から這い出てきた存在だ。
見覚えのある若い男が震えながら膝まづいていた。
「お許しください。
暗黒神の使い様。」
数日前、ダデルソンと一緒に俺を襲った男だ。
「おれには病気の母がいるんです!
おれが薬を届けなかったら母も死んでしまう。
助けてください!」
ガタガタ震えながら許しを請うてくる。
すでに股間からは小便を洩らしている。
俺は頭に思い浮かべる。
腐った死体の中に落ちていた白いブラウス
……うまくすれば、売り場の一角をまかせてもらえるかも……
……明るい若い娘の笑顔……
俺は身体に刺さった槍を抜いて、若い男に向ける。
「許して……
許してください、暗黒神さま……」
俺の腕は口を開けた男の喉元に槍を突き刺していた。
「エレシュキガル神の慈悲によって、あなたたちは若さを取り戻すのです」
娘たちは俺と同じ、タライで天井の棘で刺し殺されようとしている。
押し潰された娘の生き血を浴びれば若返れる。
そんな狂った発想をもっともらしい言葉で語っている。
クレイブンの悪事は山賊と通じているだけじゃなかった!
攫ってきた女性を狂気の生贄に捧げていたのだ。
フレデリカが逃げ出したくなるのは当然だ。
巨大タライが天井に向かって上がっていく。
中にいる娘たちは何をされるか分かったのだろう。
叫びをあげる者、許しを請う者さまざまだ。
悲鳴がタライと天井から反響して壇上に響く。
おっそろしい事に客達はそれを聞いて笑みを浮かべているのだ。
愉悦の笑み。
コイツラ……本気で若返れると信じているのか?!
それとも、自分達より下の存在を殺す事、それ自体に喜びを感じている……
止めよう。
こんな人間どもの精神構造を理解しようとするだけ、無駄な行為だ。
会場が興奮に包まれるなか、壇上へと俺は飛び出していった。
タライのハンドルを回す大男のハゲた頭に斧を叩きつける。
頭から血と脳漿を吹き出しながら大男は倒れた。
大男の大剣が転がっていたのを拾い上げる。
壇上に居る者たちが俺を見て慌てふためく。
「な、なにしやがる?!」
「テメェ、何もんだ!」
俺は立て続けに警備らしき武装した男どもを巨大な剣で切り裂く。
後ろから襲って来ようとするヤツには斧を叩きつける。
偃月刀と斧の二刀流だ。
「なんだ、キサマは?!」
俺に指を突き付ける紳士服を着た男性。
まだ状況が理解できていないのだ。
返事をするコトも無く、剣を腕先に振るう。
大剣は片刃の造りで切れ味が良い業物だった。
重さを利用し振るうだけで人の肉体を切り裂く。
貴族の腕先はアッサリ、肘から先が切り落とされていた。
叫び声を上げて、壇上から下へ転がり落ちる男。
見物していた観客たちがパニックになる。
さきほどまで何かの余興かと勘違いしていた輩も多かったようだが。
既にそんな余裕は無い。
揃って逃げ出そうとしている。
その間もおれは武装した連中と戦っている。
警備に配置された賊はそれなりの実力者なのだろう。
慌てていた賊どもだったが、すぐに徒党を組んで俺に反撃してきた。
俺は自分に対して突き出される剣を、槍を、あらゆる武器を全く無視して、偃月刀と斧の二刀流で周り中を切り裂いていた。
そのたびに頭が舞い飛び、腕が落ちる。
壇上は血の海になっていた。
賊の男達もパニックに陥るのに時間はかからなかった。
「剣が刺さってる!
刺さってるのになんで死なねーんだ!」
「オレの槍が……槍が心臓を貫いたのに!」
真夜中俺が殺されるとどうなるか。
答えはすでに出ていた。
刺された瞬間、痛みは有るのだ。
だが怒りのアドレナリンがおれの身体中を駆けめぐり、痛みを無視する。
最初は身体に刺さった剣は抜いていた。
抜いてその剣を相手の身体めがけて投げてやった。
そのたびにおれの身体から傷はウソのように無くなる。
途中から面倒くさくなり、剣や槍を身体に突き立てたまま俺は暴れた。
偃月刀を振るい、体に刺さった槍を前に突き出す。
目の前の男が胸に槍を生やしたまま倒れる。
横の筋肉オトコの顔半分が宙を飛び、血がシャワーのように舞う。
「こいつバケモノだ!
暗黒神の使いだ!!」
誰かが叫ぶ。
確かに顔を面で隠し、血まみれで殺しても死なない俺はバケモノのようだっただろう。
悪夢から這い出てきた存在だ。
見覚えのある若い男が震えながら膝まづいていた。
「お許しください。
暗黒神の使い様。」
数日前、ダデルソンと一緒に俺を襲った男だ。
「おれには病気の母がいるんです!
おれが薬を届けなかったら母も死んでしまう。
助けてください!」
ガタガタ震えながら許しを請うてくる。
すでに股間からは小便を洩らしている。
俺は頭に思い浮かべる。
腐った死体の中に落ちていた白いブラウス
……うまくすれば、売り場の一角をまかせてもらえるかも……
……明るい若い娘の笑顔……
俺は身体に刺さった槍を抜いて、若い男に向ける。
「許して……
許してください、暗黒神さま……」
俺の腕は口を開けた男の喉元に槍を突き刺していた。
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