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イナンナの暗黒神殿
地下にいる男Ⅰ
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俺はイナンナ神殿に出向いて、美人の聖女サマに会う。
カニンガムに勧められた通り神殿に行って良かった。
そこで俺は悪役鉄面ダデルソンを見つけるが、地下に囚われてしまう。
ついでに金ピカに身を飾るイヤな男にも会う。
とてもツイてないぜ。
俺は牢屋に閉じ込められた。
曲剣の大男が俺をさんざんぶん殴って誰の指図か吐かせようとしたが、誰の指図も受けていないのだ。
吐きようが無い。
「オレが殺さないと思ってナメてんじゃねーのか」
大男は俺の左手に手を伸ばす。
灼熱のようなモノが左手に産まれる。
俺の小指は人間の関節の構造からあり得ない方向を向いていた。
関節からポキリとやられたのだ。
グッ……グァアアアアアアア!!!
俺の喉からは獣のような音が発せられている。
意図的に出したんじゃない。
叫び声でも上げないとやってられないのだ。
「どうだ?!
あと9本有るんだぜ」
俺が意識を失うと、水をぶっかけて正気に戻す。
そんな時間が続いた。
俺は何度も意識を無くしたのでどの程度の時間だったか分かり様が無い。
大男の次は鉄面男・ダデルソンだ。
縦に細い鉄の筋が入った兜。
開いた空間から少し面相が見えている。
「なぁいくら貰ってるんだ?
その倍出すぜ」
痛めつけられて元気の無い俺に葡萄酒を差し出してくる。
口元に近付けられたボトルに俺は口を着ける。
痛みを誤魔化すのにアルコールは持ってこいのシロモノだ。
「クレイブン侯爵は知ってるだろ。
この辺じゃ一番の権力者だ。
そいつに恩を売っておけば一生楽しく生きていける。
なぁ、こっちに寝返れよ」
いわゆるアメとムチというやつだ。
俺は殴られ過ぎてボンヤリしていたので聞き流した。
頭がシャッキリしていたら、アメの方に飛びついていたかもしれない。
ダデルソンはあきらめて出ていく。
葡萄酒までも持って行ってしまう。
「話す気になったら言え。それまでメシはお預けだ」
どうやら飢えさせる方針に転換したようだ。
俺は一人になった牢屋で自分の手を見つめる。
ところどころの指があり得ない向きを向いていて、すでに感触が無い。
ただ熱さだけが有る。
自分の手じゃないみたいだ。
クソッ!
誰か剣で刺してくれないかな。
そうすればキレイサッパリな体になるんだが。
当たり前だが牢屋に凶器になりそうなモノは無い。
俺の腹時計はすでに深夜だと告げている。
今までに何度も痛い目に遭って学習していた。
夜になっても死なない事には傷は治らない。
傷がキレイに消えるのは死んだ時だけだ。
この仕組みを考えたヤツを呪うぜ。
俺は夜目も聞くが、耳も夜になると少し良くなる気がする。
身体能力も上がっているかもしれない。
精密機械で検査したわけじゃない。
たまにそう感じる程度だ。
その耳が誰かが牢屋に近づいてくると告げていた。
やれやれ、深夜まで残業とはご苦労さん。
ワーカホリックは異世界にもいるね。
だが牢屋に現れたのは飛び切りの美貌の持ち主だった。
聖女サマ、フレデリカだ。
満身創痍でクッションのないベッドに横たわってる俺に彼女は近づいてきた。
「ひどくやられたのね。大丈夫?」
布で俺の血まみれの顔を拭ってくれる。
「あいたた 血が固まってるんだ」
「そうね。お湯を持ってこないとダメみたい」
俺に身をよせるフレデリカはやはり美人だった。
「なんのマネだい?
聖女サマにサービスされちゃ緊張して夜も眠れない」
「フフッ……ご飯を持ってきてあげたのよ。
感謝して欲しいわ」
彼女はハムや野菜を挟んだパンと水筒を差しだしてくる。
「方針を毒殺に切り替えた訳じゃないだろうな」
「失礼ね。
いやなら食べなくてもいいのよ」
むくれてみせるフレデリカは昼間見た聖女の顔とは雰囲気が違う。
美人なのは変わらないが、話しやすい下町の娘のようだった。
「ゴメン。悪かった。いただくよ」
サンドイッチを一口食べたおれは自分が腹ペコだったことに気付く。
あっという間に平らげ、水筒を飲み干す。
水筒の中身はお茶だった。
もしかしたら上等なモノだったかもしれないが今のおれには香りを楽しむ余裕は無かった。
「すまないがもう少しないか?」
「呆れたわ。
口もきけないほど痛めつけたって聞いたのにずいぶん元気なのね」
「誰でもとりえがあるだろう。
俺はタフなだけがとりえなんだ」
フレデリカはコロコロ笑う。
「後はデザートくらいよ」
彼女は肩にかけた包みから果物を取り出してくる。
俺はそれも一瞬で胃の中に放り込む。
「ああ、生き返った。
思い返してみると今朝から何も食べてなかったんだ。
本当に感謝するぜ」
カニンガムに勧められた通り神殿に行って良かった。
そこで俺は悪役鉄面ダデルソンを見つけるが、地下に囚われてしまう。
ついでに金ピカに身を飾るイヤな男にも会う。
とてもツイてないぜ。
俺は牢屋に閉じ込められた。
曲剣の大男が俺をさんざんぶん殴って誰の指図か吐かせようとしたが、誰の指図も受けていないのだ。
吐きようが無い。
「オレが殺さないと思ってナメてんじゃねーのか」
大男は俺の左手に手を伸ばす。
灼熱のようなモノが左手に産まれる。
俺の小指は人間の関節の構造からあり得ない方向を向いていた。
関節からポキリとやられたのだ。
グッ……グァアアアアアアア!!!
俺の喉からは獣のような音が発せられている。
意図的に出したんじゃない。
叫び声でも上げないとやってられないのだ。
「どうだ?!
あと9本有るんだぜ」
俺が意識を失うと、水をぶっかけて正気に戻す。
そんな時間が続いた。
俺は何度も意識を無くしたのでどの程度の時間だったか分かり様が無い。
大男の次は鉄面男・ダデルソンだ。
縦に細い鉄の筋が入った兜。
開いた空間から少し面相が見えている。
「なぁいくら貰ってるんだ?
その倍出すぜ」
痛めつけられて元気の無い俺に葡萄酒を差し出してくる。
口元に近付けられたボトルに俺は口を着ける。
痛みを誤魔化すのにアルコールは持ってこいのシロモノだ。
「クレイブン侯爵は知ってるだろ。
この辺じゃ一番の権力者だ。
そいつに恩を売っておけば一生楽しく生きていける。
なぁ、こっちに寝返れよ」
いわゆるアメとムチというやつだ。
俺は殴られ過ぎてボンヤリしていたので聞き流した。
頭がシャッキリしていたら、アメの方に飛びついていたかもしれない。
ダデルソンはあきらめて出ていく。
葡萄酒までも持って行ってしまう。
「話す気になったら言え。それまでメシはお預けだ」
どうやら飢えさせる方針に転換したようだ。
俺は一人になった牢屋で自分の手を見つめる。
ところどころの指があり得ない向きを向いていて、すでに感触が無い。
ただ熱さだけが有る。
自分の手じゃないみたいだ。
クソッ!
誰か剣で刺してくれないかな。
そうすればキレイサッパリな体になるんだが。
当たり前だが牢屋に凶器になりそうなモノは無い。
俺の腹時計はすでに深夜だと告げている。
今までに何度も痛い目に遭って学習していた。
夜になっても死なない事には傷は治らない。
傷がキレイに消えるのは死んだ時だけだ。
この仕組みを考えたヤツを呪うぜ。
俺は夜目も聞くが、耳も夜になると少し良くなる気がする。
身体能力も上がっているかもしれない。
精密機械で検査したわけじゃない。
たまにそう感じる程度だ。
その耳が誰かが牢屋に近づいてくると告げていた。
やれやれ、深夜まで残業とはご苦労さん。
ワーカホリックは異世界にもいるね。
だが牢屋に現れたのは飛び切りの美貌の持ち主だった。
聖女サマ、フレデリカだ。
満身創痍でクッションのないベッドに横たわってる俺に彼女は近づいてきた。
「ひどくやられたのね。大丈夫?」
布で俺の血まみれの顔を拭ってくれる。
「あいたた 血が固まってるんだ」
「そうね。お湯を持ってこないとダメみたい」
俺に身をよせるフレデリカはやはり美人だった。
「なんのマネだい?
聖女サマにサービスされちゃ緊張して夜も眠れない」
「フフッ……ご飯を持ってきてあげたのよ。
感謝して欲しいわ」
彼女はハムや野菜を挟んだパンと水筒を差しだしてくる。
「方針を毒殺に切り替えた訳じゃないだろうな」
「失礼ね。
いやなら食べなくてもいいのよ」
むくれてみせるフレデリカは昼間見た聖女の顔とは雰囲気が違う。
美人なのは変わらないが、話しやすい下町の娘のようだった。
「ゴメン。悪かった。いただくよ」
サンドイッチを一口食べたおれは自分が腹ペコだったことに気付く。
あっという間に平らげ、水筒を飲み干す。
水筒の中身はお茶だった。
もしかしたら上等なモノだったかもしれないが今のおれには香りを楽しむ余裕は無かった。
「すまないがもう少しないか?」
「呆れたわ。
口もきけないほど痛めつけたって聞いたのにずいぶん元気なのね」
「誰でもとりえがあるだろう。
俺はタフなだけがとりえなんだ」
フレデリカはコロコロ笑う。
「後はデザートくらいよ」
彼女は肩にかけた包みから果物を取り出してくる。
俺はそれも一瞬で胃の中に放り込む。
「ああ、生き返った。
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