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その6 危険な瞳

第87話 砂船乗りの料理人

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これは『虎タル』さんから後で聞いたおはにゃし その1

その頃『虎タル』さんは怯えていたらしいわ。

すぐ近くにはとんでもにゃい気配がしている。
森の樹々の中だから人間たちは気が付いていにゃい。

良くこんにゃおっそろしい気配を気付かずにスルー出来るぜ。
人間ってやっぱ不思議な生き物だみゃ。

そんにゃ風に思いにゃがらシッポを立ててる虎猫さん。


近くには護衛団の人がいる。
森の奥から何かを運んできた戦士たち。
少しふくよかな男性、アントナンさんの前に何かを置くの。
護衛団のみにゃらいににゃってしまったコックさん。

「これは?!
 ……これを料理するんですか?」

アントナンさんの前に置かれたのはアンズー。
大きくて青い色の羽を持つ鷲の魔物。
ついでに言うとその頭は鳥の形じゃにゃい。
タテガミの生えた獅子の頭にゃの。

「そうだよ。
 アンズーは少し筋肉質で固いけど、
 味は美味いっていうんだ」

アントナンさんはおっかなびっくり鳥の魔物を持ち上げる。
獅子の顔から牙が見えている。


「ホントに大丈夫ですか?
 魔物なんでしょ。
 毒が有ったりしないですか」

「大丈夫だよ」
「この前も大量に市場に売り払ったんだぜ。
 なんの文句も来ていない。
 大好評さ」

「交易都市の住人をなめんなよ」
「魔物を食うくらいここの奥様方なら慣れてるのさ」

アントナンさんをからかうように言う護衛団の人。
浅黒い肌でターバンを巻いた戦士たち。
魔物ダェーヴァに慣れていない白い肌の料理人を軽くバカにした雰囲気ね。


「……そうか……」

アントナンさんはふーっと息を吐き出す。


「何だ、ビビってるのか」
「エウロペ人も意気地が無いよな」


「フン!」

包丁の切断音が鳴り響く。

アンズーの頭が切り落とされたの。
アントナンさんの周りに居た護衛団の人間はいきなり雰囲気の変わったアントナンさんにビビっているわ。


「フン。
 食材だと分かれば……
 私も料理人だよ。
 それも陸の上のコックじゃないんだ。
 砂の海をわたる砂船乗りシンドバットの一員。
 こう見えてもなんでも食べるし、
 デビルフィッシュを捕まえて、生き作りにして食べたコトだって。
 人食い鮫を捕まえて、砂海の上で焼いて食べたコトだって有るんだ」

「……こんな猫っぽい顔の鳥くらいがなんだと言うんだ。
 美味しく調理してやろう。
 唐揚げやチキンステイックにしてやる。
 何羽でも持ってきたまえ」

アントナンさんの太った身体から凄まじい気迫が漏れ出しているの。

「ハッハイー」
「持ってきますー」

戦士たちは震えながら駆け足ね。
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