くろねこ男爵の冒険 「その人は砂の国ペルーニャで猫侍に生まれ変わり、少女を助けて戦うのだっ！！」

その６ 危険な瞳

第86話 走る黒猫

「みゃー様の家族に危険がせまってみゃす！」

『逃げ足のグレイ』さんが言う。

家族？！
『虎タル』さんと『逃げ足のグレイ』さんにエステルちゃんのコトを見守っていて、ってお願いしたんだった。
ってコトはエステルちゃんに危険がせまってるってコト？


「そうなんでみゃす。
　実は…………」

にゃんだか物凄い気配をはにゃつバケモノ。
それが森の入り口、エステルちゃんの側に現れたそうにゃの。
猫のようにゃ、猫じゃにゃいようにゃ、そんにゃ不思議な気配をはにゃつとんでもにゃいヤツ。


「それだけじゃにゃいでみゃす。
　さっきのドでかいバケモノ。
　あれは走って行った方角も！
　『虎タル』の旦那やみゃー様の家族がいる方じゃにゃいですかい」

！！！！
にゃんですって。
走り去るヴィルーパークシャを目で追う。
もう相当はにゃれてるんだけど。
巨大すぎる象の魔物《ダェーヴァ》。
まだその姿は見えているの。

猫の本能が方角を教える。
アレは間違いにゃく森の入り口、街の方向に向かってる。
あのまま進んだら、エステルちゃんや護衛団の後方支援部隊がいる場所に出るわ。


みゃーーーー！！！！
みゃみゃみゃ！！！！！
みゃみゃみゃみゃみゃみゃーーーーんんんん

わたしの黒いシッポがピンと上を向く。
せにゃかの毛がバリバリと逆立つの。
猫の臨戦態勢よ。


エステルちゃんっ！
それだけじゃにゃい。
トーヤー隊長もパルミュスさんも、ステュティラちゃんだっている。

こうしちゃいられにゃいっ。

わたしは走り出す。

【封印解除ステータスオープン《》】
【スキル発動】
【速度上昇】


「みゃー様っ！
　お供しみゃすっ」

ゴメンにゃさいね。
現在はグレイさんに構っていられにゃい。

『逃げ足のグレイ』さんはスゴイ速度。
その細長い体で必死に走る。
素早い猫のにゃかでもピカ一の速度。
だけど。
わたしはそんにゃ彼を残して去って行く。
必死で走るグレイさん。
それでも、わたしとの距離はドンドンはにゃれて行くわ。


「グレイさん、あにゃたは後から来てっ」

【速度上昇】
【速度上昇】
【前脚・筋力上昇】
【後脚・筋力上昇】

わたしはもう振り返らにゃい。
ただ必死で走っていく。