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その6 危険な瞳

第84話 天の怒り

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「えっ?!
 みゃーちゃん?!」

エラティ隊長は正気を取り戻したみたい。
やっぱり、この人は強い人だ。

「……ありがとう。
 あれ、僕泣いていたんだ……」

うん。
彼の頬にはまだ涙が伝っている。
美少年はその頬をぐいと拭う。

「へへへ……
 ありがとね」

わたしの方を見てニコリと笑う。
きゃー、かっわいい。
ステキにゃ笑顔にゃの。

そして向こうを向く。
去って行く巨大な魔物ダェーヴァ
ヴィルーパークシャ。

一瞬前まで笑っていた目が怒りの色に染まる。
目尻が吊り上がって、噛みしめたような口元。

「……あいつ……
 許さない」


あいつってヴィルーパークシャのコト?
にゃにをしようってのよ。

こちらに背を向け歩いて行くヴィルーパークシャ。
身体中に目がツイてるバケモノ。
お尻の辺りで振られてる象のシッポ。
シッポの先にまで目がツイてるわ。

【危機感知】
【精神攻撃】


いけにゃい。
あの目をあまり見てるとまた吸い込まれそうににゃる。
額の辺りにある大きにゃ一つ目。
アレが一番強烈だけど、他の目にも少しは精神攻撃力が有るんだわ。


「くっ!」

そう言って、エラティ隊長は目を閉じる。
彼もあの精神攻撃にやられそうににゃったのね。


「……逃がさない……」

「アシャ・ワヒーシュタ。
 大いなる正義の神よ。
 穢れを焼き尽くす聖なる火。
 僕に力をください。
 あの魔物、汚れたドルグヴァントを滅ぼし尽くす。
 その刃を僕に」

美少年の身体にナニカの力が漲る。
目を閉じて剣を構えた美少年。
その腕に剣に向かってナニカが集中していくのがカンジられるわ。

エラティ隊長はヴィルーパークシャの去って行った方を向いてるけど。
いけにゃい。
アイツ大股で歩いて行くの。
攻撃するにゃらもう少し右の方角よ。

「にゃー、みゃみゃ」

わたしは彼の右足に身体を擦り付けて伝える。

「?!
 ……分かった、ありがと」

エラティ隊長が身体を少し右に向ける。
そうそれで良いわ。

浅黒い肌、漆黒の髪の少年は剣を振り上げて叫ぶ。


『天の怒り』

「ダマスカスブレード、頼んだ!」

その腕から轟々と風を切る音を立てて、光るモノが飛んで行く。

それは剣。
美しい刃紋を描く刀剣。
ダマスカスブレード。
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