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その6 危険な瞳
第82話 ホントウに?
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【危機感知】
【危機感知】
【危険:精神攻撃】
【危険度:上】
そんな文字がわたしの視界の片隅に浮かんでいるのだけど。
意味が理解出来にゃい。
わたしの頭のにゃかに入ってこにゃい。
ジャマにゃのよ。
わたしは今大事にゃコトを考えてるの。
わたしは。
私は。
私は自分の家に居る。
私とあの人が住む、私たちの家。
ローンで買ったのよね。
私に子供が出来る事になって、それまで共働きで貯めてきたお金をつぎ込んで。
なのに後でバブルが弾けて、地価が下がってしまって。
あの人は言っていたわ。
バブルが弾けてから買えば良かったな。
そんなの無理よ。
分かっているでしょう。
この家で過ごしてきた時間。
子供が産まれて、あの人は仕事が忙しくて。
それでも無理をして早くに帰ってきてくれた。
私も余裕が無くて苛々したりもしてしまったけど。
二人で笑い合えばすぐ忘れられた。
この家にはそんな大切な時間がいっぱい詰まっている。
お金には替えられない物。
そして子供たちは大きくなって巣立って行って。
孫も生まれて、たまに顔を見せに来てくれる。
本当はもっと孫に逢いたい。
出来れば一緒に暮らしたい。
けど駄目よ。
私はもう年寄り。
自分の若い頃を思い返せば、どんなに苦しくても自分たちだけでやり遂げたかった。
両親の事はもちろん好きだし、たまに遊びには行くけれど。
一緒に住んで力を貸して等欲しく無い。
そういう物よ。
私は、私たちは遠くから見守るだけで良いんだわ。
寂しくなんてない。
家にはあの人も居るし、猫の源五郎丸だっている。
—ホントウに? ―
誰かが尋ねる。
ホントウよ。
あの人が居れば……
―ウソツキ!
あの人なんてもういないじゃない。―
……!……
私の瞳から温かいナニカがこぼれる。
溢れ出して止まらない。
そうだ。
あの人はもういないんだった。
なぜ、何故私より先に居なくなってしまったの?
私をずっと守ってくれる、って言ってたじゃないの。
駄目よ。
あの人は天命を終えたの。
私も直に……
そうしたらまた一緒よ。
寂しいけど我慢しましょう。
それまで私には源五郎丸がいるわ。
私の膝の上に乗る、温かくて柔らかい生き物。
―ウソツキ!―
私の瞳からはドンドンナニカがこぼれ落ちる。
頬を伝い首から胸元まで濡れてしまう。
温かくて柔らかい猫。
源五郎丸は冷たくて固いモノに変っていた。
私の瞳から溢れ出す。
止まらないナニカが辺り一面を覆ってしまう。
それは私の涙。
暗く、淋しい、辛い気持ちが形になったモノ。
【危険:精神攻撃】
【危険度:上】
【危険:精神攻撃】
【危険度:上】
そんな文字は私の目には入りはしない。
【危機感知】
【危険:精神攻撃】
【危険度:上】
そんな文字がわたしの視界の片隅に浮かんでいるのだけど。
意味が理解出来にゃい。
わたしの頭のにゃかに入ってこにゃい。
ジャマにゃのよ。
わたしは今大事にゃコトを考えてるの。
わたしは。
私は。
私は自分の家に居る。
私とあの人が住む、私たちの家。
ローンで買ったのよね。
私に子供が出来る事になって、それまで共働きで貯めてきたお金をつぎ込んで。
なのに後でバブルが弾けて、地価が下がってしまって。
あの人は言っていたわ。
バブルが弾けてから買えば良かったな。
そんなの無理よ。
分かっているでしょう。
この家で過ごしてきた時間。
子供が産まれて、あの人は仕事が忙しくて。
それでも無理をして早くに帰ってきてくれた。
私も余裕が無くて苛々したりもしてしまったけど。
二人で笑い合えばすぐ忘れられた。
この家にはそんな大切な時間がいっぱい詰まっている。
お金には替えられない物。
そして子供たちは大きくなって巣立って行って。
孫も生まれて、たまに顔を見せに来てくれる。
本当はもっと孫に逢いたい。
出来れば一緒に暮らしたい。
けど駄目よ。
私はもう年寄り。
自分の若い頃を思い返せば、どんなに苦しくても自分たちだけでやり遂げたかった。
両親の事はもちろん好きだし、たまに遊びには行くけれど。
一緒に住んで力を貸して等欲しく無い。
そういう物よ。
私は、私たちは遠くから見守るだけで良いんだわ。
寂しくなんてない。
家にはあの人も居るし、猫の源五郎丸だっている。
—ホントウに? ―
誰かが尋ねる。
ホントウよ。
あの人が居れば……
―ウソツキ!
あの人なんてもういないじゃない。―
……!……
私の瞳から温かいナニカがこぼれる。
溢れ出して止まらない。
そうだ。
あの人はもういないんだった。
なぜ、何故私より先に居なくなってしまったの?
私をずっと守ってくれる、って言ってたじゃないの。
駄目よ。
あの人は天命を終えたの。
私も直に……
そうしたらまた一緒よ。
寂しいけど我慢しましょう。
それまで私には源五郎丸がいるわ。
私の膝の上に乗る、温かくて柔らかい生き物。
―ウソツキ!―
私の瞳からはドンドンナニカがこぼれ落ちる。
頬を伝い首から胸元まで濡れてしまう。
温かくて柔らかい猫。
源五郎丸は冷たくて固いモノに変っていた。
私の瞳から溢れ出す。
止まらないナニカが辺り一面を覆ってしまう。
それは私の涙。
暗く、淋しい、辛い気持ちが形になったモノ。
【危険:精神攻撃】
【危険度:上】
【危険:精神攻撃】
【危険度:上】
そんな文字は私の目には入りはしない。
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