くろねこ男爵の冒険 「その人は砂の国ペルーニャで猫侍に生まれ変わり、少女を助けて戦うのだっ!!」

くろねこ教授

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その1 入団試験

第10話 風の魔法

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わたしはエステルちゃんと付き添いのお婆ちゃんの後をつけてる。
森の草むらのにゃか、普通にゃら踏みつけた草が足音を立てちゃうんだけど。
わたしはくろねこ、音を立てにゃいようにこっそり歩いてるのにゃん。

あれっ。
にゃんだか一瞬お婆ちゃんが振り返った。
あたしが隠れてる辺りに視線を走らせたようにゃ気が。
わたしは息を止めて、動かにゃい。
お婆ちゃんはしばらくこちらを振り向いていたけど。
じきに前を向いた。
そうよ。
お年を召してるんだからよそ見しにゃいで。
また転んじゃうわよ。

わたしはまた慎重に歩き出す。
もう気が付いてるの。
アルミラージの気配。
エステルちゃんたちの行く先ね。
ダェーヴァが居たら先回りして、さっきみたいにキック!、エステルちゃんの前にダウンさせてやろう。
そんなコト考えてたんだけど、お婆ちゃんの目線から隠れてたら後れを取っちゃった。

「お嬢ちゃん、肩はもう貸さなくていいよ」

お婆ちゃんがエステルちゃんに言う。

「ええっ、大丈夫なんですか」

大丈夫とゆーか、それどころじゃにゃいってトコね。
さすがお年を召したベテラン戦士。
気配に気づいたみたい。

エステルちゃんの前方から現れるアルミラージ。
長い一本角で威嚇してくる兎のダエーヴァ。

「あっ!
 これがアルミラージ?!
 ウサギって聞いてたけど大きい!」

エステルちゃんは盾と槍を前方に構える。
防御に力を入れたポーズ。

凛々しいわー。
多分槍の練習にゃんてほとんどした事にゃいハズ。
でも美少女がやるとやっぱりサマににゃるの。
フレッ! フレッ! エステルちゃん!
頑張れ! 頑張れ! エステルちゃん!

お婆ちゃんは少し距離を取って、エステルちゃんを観察してる。
一応、試験官だものね。

「フム、構えはサマになってるが。
 慣れてはいないな」

小声でつぶやく。
エステルちゃんには聞こえにゃいだろう大きさの声。
だけどわたしの耳には聞こえちゃうもんねー。
見抜かれてるわ。
やっぱりベテランにゃのね。

「なにっ?」

お婆ちゃんが驚きの声を上げる。

エステルちゃんが盾を構えたまま、口に出したから。

「ルドラ・シヴァーヤよ。
 猛々しくも慈悲深い、至高の王よ。
 我に風の御力を貸し給え」

エステルちゃんの周りに風が吹いている。
つむじ風のように少女の周りを回る風。
エステルちゃんの青い衣装が風に揺れる。

お婆ちゃんは驚いてるけど。
練習を見ていたわたしは知っている。
エステルちゃんの風の魔法。

『ピナーカ』

少女から何かが放たれる。
それは一陣の鋭い風。
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