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第五章 アルク野獣の森
第280話 アヤメ、フワワシティへ行くその1
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アヤメは今移動中。
窓から外を眺める。
うわー。
凄い勢いで景色が後ろへ飛んでいく。
どんな速度で移動してるの。
こわっ。
隣にはキキョウ主任。
書類を抱えて目が血走ってる。
どれが先かしら。
ああっこれは急ぎで支店長に見てもらわないと。
ブツブツ……ブツブツ……
アヤメでも声が掛けられないほど鬼気迫る雰囲気。
どうしてこうなったんだっけ?
昨日の事だ。
キキョウさんがいきなり叫び声を上げたのだ。
迷宮都市冒険者組合の主任、キキョウさん。
組合の受付であるアヤメの上司。
「見つけたー!。
支店長、もう逃がさないわ」
キキョウさんは情報端末の有る部屋から出て来た。
魔道具情報端末。
『失われた技術』に帝国の魔道具技術、王国の研究者の成果。
全てが注がれたとか言うシロモノ。
アヤメには理解が及ぼないナゾのスグレモノ。
情報端末が大陸中の冒険者組合の端末と繋がっている。
アヤメ達が受付業務で使ってる記録端末はその子機だ。
簡単な検索や決められた範囲の打ち込みしか出来ない。
アヤメは迷宮のドロップ品買い取り価格を調べるのに使ってる。
後はどの冒険者が何の依頼を達成したか記録。
親機の情報端末はもっと色々出来るらしい。
けどアヤメは触っちゃ駄目。
使っていいのは主任以上。
部屋から出て来たキキョウさん。
何ごとっと見たアヤメと目が合ってしまった。
「アヤメ、フワワシティに行くわよ。
支店長を捕まえに行くの」
え。
アタシも?
アヤメは相変わらず運が悪い。
まわりの受付嬢を見回すとみんな知らんぷり。
手元の端末を眺めたり、冒険者さんと必死の打ち合わせ。
マジメに仕事してるフリ。
キキョウ主任が奇声を上げてる時に目を合わせたりしちゃダメ。
みんなそのくらい分かってる。
いや、アヤメだって知っていたのだ。
でもつい見ちゃうじゃない。
クッソー。
みんな要領がいいな。
「えーと……キキョウさん。
フワワシティは今、人が多くて。
簡単には行けないって聞きますけど」
「そうなのよね。
うーん……良し。
高速馬車が今は特殊な運行をしてるハズ。
そこに捻じ込みましょ」
「アヤメ、高速馬車が今度いつ来るか調べて」
アタシがやるの?
運よく。
いや、運悪くかな。
高速馬車はちょうど迷宮都市に居た。
翌日には出ると言う。
本来、迷宮都市→『野獣の森』付近→女神教団の聖都テイラーサ→迷宮都市。
そんなカンジで3点を回転して移動してる馬車。
今は特殊運行。
フワワシティを中心に動いてる。
迷宮都市→フワワシティ→テイラーサ→フワワシティ→迷宮都市→フワワシティ。
だけど馬車は予約でいっぱい。
とても乗れない。
ところがキキョウさんはどんな交渉をしたのか。
二人分座席を手に入れてしまった。
いや。
アタシの分は別に……
乗りたがってる人は他にたくさんいるみたいですし。
良かったんですけど……
とはキキョウさんに言えない。
そしてアヤメは今馬車の中に居るのだ。
まあいいか。
フワワシティ。
アヤメだって興味が有る。
もう一ヶ月以上前になるだろうか。
新しく出来た町。
一日で出来たと言う。
町って一日で出来るもんなの。
村が有ってだんだん発展してきて町になったりするんじゃないの。
そう思うアヤメ。
だけどフワワシティは一晩で出来たらしいのだ。
『野獣の森』が移動した。
帝国領内に有った迷宮。
それが国境を越えてどの国ににも属さない場所に移動したらしい。
迷宮が移動。
その言葉の意味もアヤメには良く分からない。
迷宮って動くモノなの。
『地底大迷宮』は動かないと思うけど。
他の迷宮のコトは知らない。
『野獣の森』だし。
動物みたいに動くのかしら。
知り合いの冒険者さんに言わすと便利になったらしい。
前は帝国の町ベオグレイドに行くしか無かった。
あそこは帝国の都市。
入ると入都市税がかかる。
フワワシティは無税。
冒険者だけでは無い。
商人だろうが亜人だろうが入るだけなら税金は取ってないと言う。
冒険者証を持ってれば無料で泊まれる宿泊所も有る。
ザコ寝じゃなくて個室が割り当てられるらしい。
さすがに狭いらしいけどベッドまで付いてる。
破格のサービス。
一度様子を見に行こうか。
そんな冒険者がたくさんいるのも当然。
フワワシティは全て木造の建物。
新築でキレイ。
風情が有る。
森も近い。
植物が多くて空気が美味しいと言う。
ベオグレイドの町は石造りで整然としている。
冒険者は言ってた。
キレイはキレイなんだが。
落ち着かないぜ。
冒険者には向かねーよ。
偉そうな黒ずくめはやたらウロついてるしな。
黒ずくめってのは帝国軍の事だ。
ベオグレイドは国境付近の町。
軍の駐留基地が有る。
兵士には態度が悪いのも多いらしい。
その分治安も良いから。
それはそれで良いんだけどよ。
ああ、フワワシティの方も治安は良いぜ。
なんせ町長自らパトロールしてるんだ。
フワワシティの町長。
美しいダマスカスの鎧に身を包んだ戦士。
エリカ・ルメイ。
まだ若い女性らしい。
きっとスゴイ人なんだろうな。
憧れてしまうアヤメだ。
ルメイ商会の会長の親族らしい。
貴族でもある。
町を切り盛り出来るだけの教育を受けてるのだろう。
もちろん、本人も努力をしてるハズだ。
冒険者としても活躍してる。
剣士として『野獣の森』に挑みLVは20越え。
聖者サマを護る守護者。
聖者サマから町長にと指名された。
本人は私などが町長なんてと断っていたと言うウワサ。
しかし是非にと聖者サマに言われ断れなかったらしい。
カトレアさんみたいな迫力ある姉御肌タイプかな。
それとも。
キキョウさんみたいな落ち着きある切れ者タイプ。
今はまったく落ち着いてないけど。
どちらにしろ、キレイな人なんだろうな。
本人がパトロールしてるなら見る事出来るかな。
窓から外を眺める。
うわー。
凄い勢いで景色が後ろへ飛んでいく。
どんな速度で移動してるの。
こわっ。
隣にはキキョウ主任。
書類を抱えて目が血走ってる。
どれが先かしら。
ああっこれは急ぎで支店長に見てもらわないと。
ブツブツ……ブツブツ……
アヤメでも声が掛けられないほど鬼気迫る雰囲気。
どうしてこうなったんだっけ?
昨日の事だ。
キキョウさんがいきなり叫び声を上げたのだ。
迷宮都市冒険者組合の主任、キキョウさん。
組合の受付であるアヤメの上司。
「見つけたー!。
支店長、もう逃がさないわ」
キキョウさんは情報端末の有る部屋から出て来た。
魔道具情報端末。
『失われた技術』に帝国の魔道具技術、王国の研究者の成果。
全てが注がれたとか言うシロモノ。
アヤメには理解が及ぼないナゾのスグレモノ。
情報端末が大陸中の冒険者組合の端末と繋がっている。
アヤメ達が受付業務で使ってる記録端末はその子機だ。
簡単な検索や決められた範囲の打ち込みしか出来ない。
アヤメは迷宮のドロップ品買い取り価格を調べるのに使ってる。
後はどの冒険者が何の依頼を達成したか記録。
親機の情報端末はもっと色々出来るらしい。
けどアヤメは触っちゃ駄目。
使っていいのは主任以上。
部屋から出て来たキキョウさん。
何ごとっと見たアヤメと目が合ってしまった。
「アヤメ、フワワシティに行くわよ。
支店長を捕まえに行くの」
え。
アタシも?
アヤメは相変わらず運が悪い。
まわりの受付嬢を見回すとみんな知らんぷり。
手元の端末を眺めたり、冒険者さんと必死の打ち合わせ。
マジメに仕事してるフリ。
キキョウ主任が奇声を上げてる時に目を合わせたりしちゃダメ。
みんなそのくらい分かってる。
いや、アヤメだって知っていたのだ。
でもつい見ちゃうじゃない。
クッソー。
みんな要領がいいな。
「えーと……キキョウさん。
フワワシティは今、人が多くて。
簡単には行けないって聞きますけど」
「そうなのよね。
うーん……良し。
高速馬車が今は特殊な運行をしてるハズ。
そこに捻じ込みましょ」
「アヤメ、高速馬車が今度いつ来るか調べて」
アタシがやるの?
運よく。
いや、運悪くかな。
高速馬車はちょうど迷宮都市に居た。
翌日には出ると言う。
本来、迷宮都市→『野獣の森』付近→女神教団の聖都テイラーサ→迷宮都市。
そんなカンジで3点を回転して移動してる馬車。
今は特殊運行。
フワワシティを中心に動いてる。
迷宮都市→フワワシティ→テイラーサ→フワワシティ→迷宮都市→フワワシティ。
だけど馬車は予約でいっぱい。
とても乗れない。
ところがキキョウさんはどんな交渉をしたのか。
二人分座席を手に入れてしまった。
いや。
アタシの分は別に……
乗りたがってる人は他にたくさんいるみたいですし。
良かったんですけど……
とはキキョウさんに言えない。
そしてアヤメは今馬車の中に居るのだ。
まあいいか。
フワワシティ。
アヤメだって興味が有る。
もう一ヶ月以上前になるだろうか。
新しく出来た町。
一日で出来たと言う。
町って一日で出来るもんなの。
村が有ってだんだん発展してきて町になったりするんじゃないの。
そう思うアヤメ。
だけどフワワシティは一晩で出来たらしいのだ。
『野獣の森』が移動した。
帝国領内に有った迷宮。
それが国境を越えてどの国ににも属さない場所に移動したらしい。
迷宮が移動。
その言葉の意味もアヤメには良く分からない。
迷宮って動くモノなの。
『地底大迷宮』は動かないと思うけど。
他の迷宮のコトは知らない。
『野獣の森』だし。
動物みたいに動くのかしら。
知り合いの冒険者さんに言わすと便利になったらしい。
前は帝国の町ベオグレイドに行くしか無かった。
あそこは帝国の都市。
入ると入都市税がかかる。
フワワシティは無税。
冒険者だけでは無い。
商人だろうが亜人だろうが入るだけなら税金は取ってないと言う。
冒険者証を持ってれば無料で泊まれる宿泊所も有る。
ザコ寝じゃなくて個室が割り当てられるらしい。
さすがに狭いらしいけどベッドまで付いてる。
破格のサービス。
一度様子を見に行こうか。
そんな冒険者がたくさんいるのも当然。
フワワシティは全て木造の建物。
新築でキレイ。
風情が有る。
森も近い。
植物が多くて空気が美味しいと言う。
ベオグレイドの町は石造りで整然としている。
冒険者は言ってた。
キレイはキレイなんだが。
落ち着かないぜ。
冒険者には向かねーよ。
偉そうな黒ずくめはやたらウロついてるしな。
黒ずくめってのは帝国軍の事だ。
ベオグレイドは国境付近の町。
軍の駐留基地が有る。
兵士には態度が悪いのも多いらしい。
その分治安も良いから。
それはそれで良いんだけどよ。
ああ、フワワシティの方も治安は良いぜ。
なんせ町長自らパトロールしてるんだ。
フワワシティの町長。
美しいダマスカスの鎧に身を包んだ戦士。
エリカ・ルメイ。
まだ若い女性らしい。
きっとスゴイ人なんだろうな。
憧れてしまうアヤメだ。
ルメイ商会の会長の親族らしい。
貴族でもある。
町を切り盛り出来るだけの教育を受けてるのだろう。
もちろん、本人も努力をしてるハズだ。
冒険者としても活躍してる。
剣士として『野獣の森』に挑みLVは20越え。
聖者サマを護る守護者。
聖者サマから町長にと指名された。
本人は私などが町長なんてと断っていたと言うウワサ。
しかし是非にと聖者サマに言われ断れなかったらしい。
カトレアさんみたいな迫力ある姉御肌タイプかな。
それとも。
キキョウさんみたいな落ち着きある切れ者タイプ。
今はまったく落ち着いてないけど。
どちらにしろ、キレイな人なんだろうな。
本人がパトロールしてるなら見る事出来るかな。
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