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第五章 アルク野獣の森
第271話 死闘、森の巨人その2
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「あの子達、『野獣の森』の子じゃないわ。
『鋼鉄の魔窟』の子達。
あれに暴れられると『野獣の森』そのものがおかしくなる」
「『鋼鉄の魔窟』もケツァルコアトルも大変だわ。
“鋼鉄蛞蝓”くらいならいいかと思って放置してたのがまずかった。
もう森そのものがボロボロなの」
ショウマは考える。
『鋼鉄の魔窟』。初めて聞く言葉だが、予想は付く。あの時。ティアマーと一緒に見たのだ。『野獣の森』ともう一つの迷宮。山から地下へと続く迷宮。それが『鋼鉄の魔窟』ティアマーは距離が近すぎてぶつかってると言っていた。
ナメクジ、蛞蝓は植物に悪影響を与える。植物の茎を這いまわり擦り減らす。柔らかい新芽や花は食べてしまう。“鋼鉄蛞蝓”が『野獣の森』の木々を這う。それがおそらくは森にダメージを与えてる。本来、『野獣の森』に居るべきで無い魔獣。なのにそこら中に“鋼鉄蛞蝓”はいた。
あれは『鋼鉄の魔窟』からの妨害。近付き過ぎて悪影響を与えてる別の迷宮からの攻撃。“金環形邪蟲”。メタルワームも『野獣の森』の魔獣じゃないと言う。それを呼び出していた女性。蛇のお面を付けた女性。蛇お面女とフワワさんはケンカしていた。あの女性は……。
どうすると良い。解決の筋道は。このまま『野獣の森』が弱り続けるとどうなる。野獣の森』が無くなって、『鋼鉄の魔窟』が残る。それも有る意味、自然の摂理なのかもしれない。
木は朽ちる事も有る。環境だって変化する。木が育ちにくい環境になってしまった。木が無くなってその分別の生物が生きる。そういう事も有るだろう。そして又別の場所に木は生えるのだ。
「フワワさん。『野獣の森』がこれ以上弱ったらどうなるの」
「迷宮の形を取ってられない。
管理者の私が存在できなくなる。
『野獣の森』が無くなるわ。
今『野獣の森』にいる膨大な数の魔獣。
それは全て解き放たれる。
そこら中に魔獣が溢れるわ」
魔獣が解き放たれる。……それは。
ショウマは映像を見る。帝国軍が魔獣に襲われている。
兵士達は魔獣と戦うのに慣れていない。被害者が次々出ている。一応は戦闘訓練をしている兵士達。それでも被害が出ている。森がボロボロで森のカベから這い出てしまってる魔獣達。そんなのは『野獣の森』の魔獣のほんの一部。これ以上の魔獣が一斉に解き放たれる。
ショウマは考察する。
迷宮とは。魔獣とは。迷宮から魔獣が産まれる。その様にも見える。
しかし見方を変えると魔獣は迷宮の中に閉じ込められている。人間を襲う魔獣を迷宮と言う檻に捕らえている。その様にも見えないか。
けれども。
考察は続かない。
何故なら。
従魔少女達が戦っている。
森の巨人と戦っている。
ショウマの大事な少女達が危機を迎えているのだ。
タマモは巨人の足に噛みつく。
ハルバードを振るうのだって力が必要。
ハチ子は槍で刺す。
無理矢理持ち上げて、巨人の足の甲へ。
ケロ子は足を蹴り飛ばす。
もうジャンプして頭を蹴るほど元気は無い。
体重を乗せて斜め下へ蹴り下ろすような蹴り。
巨人がバランスを崩す。
崩しながらも足元に居る少女に向かって斧を振るう。
巨人は両目をやられてる。
敵を正確に確認は出来ない。
適当に薙ぎ払う。
タマモは避けた。
ついでにハチ子も連れて斧の軌道から逃げる。
だけど。
ハチ美。
遠方から弓矢で撃っていたハチ美。
巨人は斧を振り回した。
斧の刃先が届いてしまったのだ。
ハチ美が吹っ飛ばされる。
直撃を喰らった訳では無い。
刃先が触れた程度。
それでも巨大な斧。
ハチ美の体が吹っ飛び、鉄の鎧がひしゃげる。
「大丈夫、ハチ美ちゃん」
ケロ子が駆け寄る。
「お姉さま、薬を」
みみっくちゃんが回復薬をケロ子に投げる。
ケロ子はフラフラしてるハチ美に無理やり飲ませる。
「みんな、みみっくちゃん『丸呑み』使うです。
相手はバカデカイ巨人、いつまでも呑み込んではいられません。
すぐ ペッ します。そしたらみんなトドメを刺してくださいですよ」
みみっくちゃんが丸呑みする?
あの巨人を?
“森の巨人”フンババ。
身長5、6メートルは有る。
普通の人間の3倍サイズ。
みみっくちゃんは小柄な少女。
どう見ても入らない大きさ。
でも今までにもみみっくちゃんは体より大きい魔獣を呑み込んで来た。
出来ないコトは無いんだろう。
「大丈夫なのっ?」
ケロ子は訊く。
以前巨大なフクロウを呑み込んだ時。
みみっくちゃんは大分苦しげだったのだ。
お腹をさすってしばらくバタバタしてた。
「うーん。大丈夫じゃないカンジです。大丈夫じゃないカンジはするんですが、『丸呑み』出来ない事は無い、そんなフンイキですよ。
とにかくやってみます。ホントウにすぐペッするかもしれません。その時は頼んだですよ」
みみっくちゃんは謎だらけ。
どの位保つのか、他人に分かりようもない。
本人の感覚頼み。
そう言ってる間も巨人は暴れてる。
視覚が失われてるから適当に振り回してるだけだが、斧がビュンビュン辺りを切り裂いている。
土の地面に刺さり、土が跳ね返る。
ケロ子は斧刃を避け、そのまま斧を蹴り飛ばす。
迷ってる場合じゃない。
「頑張って、みみっくちゃんっ」
「いっけー」
「ハコ、やれ!
根性を見せて見ろ」
「ハコ、やるのです!
気合でやれるところまでやるのです」
『鋼鉄の魔窟』の子達。
あれに暴れられると『野獣の森』そのものがおかしくなる」
「『鋼鉄の魔窟』もケツァルコアトルも大変だわ。
“鋼鉄蛞蝓”くらいならいいかと思って放置してたのがまずかった。
もう森そのものがボロボロなの」
ショウマは考える。
『鋼鉄の魔窟』。初めて聞く言葉だが、予想は付く。あの時。ティアマーと一緒に見たのだ。『野獣の森』ともう一つの迷宮。山から地下へと続く迷宮。それが『鋼鉄の魔窟』ティアマーは距離が近すぎてぶつかってると言っていた。
ナメクジ、蛞蝓は植物に悪影響を与える。植物の茎を這いまわり擦り減らす。柔らかい新芽や花は食べてしまう。“鋼鉄蛞蝓”が『野獣の森』の木々を這う。それがおそらくは森にダメージを与えてる。本来、『野獣の森』に居るべきで無い魔獣。なのにそこら中に“鋼鉄蛞蝓”はいた。
あれは『鋼鉄の魔窟』からの妨害。近付き過ぎて悪影響を与えてる別の迷宮からの攻撃。“金環形邪蟲”。メタルワームも『野獣の森』の魔獣じゃないと言う。それを呼び出していた女性。蛇のお面を付けた女性。蛇お面女とフワワさんはケンカしていた。あの女性は……。
どうすると良い。解決の筋道は。このまま『野獣の森』が弱り続けるとどうなる。野獣の森』が無くなって、『鋼鉄の魔窟』が残る。それも有る意味、自然の摂理なのかもしれない。
木は朽ちる事も有る。環境だって変化する。木が育ちにくい環境になってしまった。木が無くなってその分別の生物が生きる。そういう事も有るだろう。そして又別の場所に木は生えるのだ。
「フワワさん。『野獣の森』がこれ以上弱ったらどうなるの」
「迷宮の形を取ってられない。
管理者の私が存在できなくなる。
『野獣の森』が無くなるわ。
今『野獣の森』にいる膨大な数の魔獣。
それは全て解き放たれる。
そこら中に魔獣が溢れるわ」
魔獣が解き放たれる。……それは。
ショウマは映像を見る。帝国軍が魔獣に襲われている。
兵士達は魔獣と戦うのに慣れていない。被害者が次々出ている。一応は戦闘訓練をしている兵士達。それでも被害が出ている。森がボロボロで森のカベから這い出てしまってる魔獣達。そんなのは『野獣の森』の魔獣のほんの一部。これ以上の魔獣が一斉に解き放たれる。
ショウマは考察する。
迷宮とは。魔獣とは。迷宮から魔獣が産まれる。その様にも見える。
しかし見方を変えると魔獣は迷宮の中に閉じ込められている。人間を襲う魔獣を迷宮と言う檻に捕らえている。その様にも見えないか。
けれども。
考察は続かない。
何故なら。
従魔少女達が戦っている。
森の巨人と戦っている。
ショウマの大事な少女達が危機を迎えているのだ。
タマモは巨人の足に噛みつく。
ハルバードを振るうのだって力が必要。
ハチ子は槍で刺す。
無理矢理持ち上げて、巨人の足の甲へ。
ケロ子は足を蹴り飛ばす。
もうジャンプして頭を蹴るほど元気は無い。
体重を乗せて斜め下へ蹴り下ろすような蹴り。
巨人がバランスを崩す。
崩しながらも足元に居る少女に向かって斧を振るう。
巨人は両目をやられてる。
敵を正確に確認は出来ない。
適当に薙ぎ払う。
タマモは避けた。
ついでにハチ子も連れて斧の軌道から逃げる。
だけど。
ハチ美。
遠方から弓矢で撃っていたハチ美。
巨人は斧を振り回した。
斧の刃先が届いてしまったのだ。
ハチ美が吹っ飛ばされる。
直撃を喰らった訳では無い。
刃先が触れた程度。
それでも巨大な斧。
ハチ美の体が吹っ飛び、鉄の鎧がひしゃげる。
「大丈夫、ハチ美ちゃん」
ケロ子が駆け寄る。
「お姉さま、薬を」
みみっくちゃんが回復薬をケロ子に投げる。
ケロ子はフラフラしてるハチ美に無理やり飲ませる。
「みんな、みみっくちゃん『丸呑み』使うです。
相手はバカデカイ巨人、いつまでも呑み込んではいられません。
すぐ ペッ します。そしたらみんなトドメを刺してくださいですよ」
みみっくちゃんが丸呑みする?
あの巨人を?
“森の巨人”フンババ。
身長5、6メートルは有る。
普通の人間の3倍サイズ。
みみっくちゃんは小柄な少女。
どう見ても入らない大きさ。
でも今までにもみみっくちゃんは体より大きい魔獣を呑み込んで来た。
出来ないコトは無いんだろう。
「大丈夫なのっ?」
ケロ子は訊く。
以前巨大なフクロウを呑み込んだ時。
みみっくちゃんは大分苦しげだったのだ。
お腹をさすってしばらくバタバタしてた。
「うーん。大丈夫じゃないカンジです。大丈夫じゃないカンジはするんですが、『丸呑み』出来ない事は無い、そんなフンイキですよ。
とにかくやってみます。ホントウにすぐペッするかもしれません。その時は頼んだですよ」
みみっくちゃんは謎だらけ。
どの位保つのか、他人に分かりようもない。
本人の感覚頼み。
そう言ってる間も巨人は暴れてる。
視覚が失われてるから適当に振り回してるだけだが、斧がビュンビュン辺りを切り裂いている。
土の地面に刺さり、土が跳ね返る。
ケロ子は斧刃を避け、そのまま斧を蹴り飛ばす。
迷ってる場合じゃない。
「頑張って、みみっくちゃんっ」
「いっけー」
「ハコ、やれ!
根性を見せて見ろ」
「ハコ、やるのです!
気合でやれるところまでやるのです」
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