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第五章 アルク野獣の森

第267話 野獣の森横の惨劇その2

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「グァッ」 
帝国兵士が“暴れ猪”の牙に刺される。
腹を貫かれているのだ。

「クッ。こいつめ」
「ケモノ風情にやられるか」

盾を前面に“暴れ猪”を抑え込もうとする兵士達。
しかし。
宙を火が飛んでくる。
“火鼠”の攻撃。
モロに喰らった兵士は制服が燃え上がる。

「助けてくれ、
 誰か水、水!」
「湖に飛び込め、バカ」

兵士を湖に向かって蹴り飛ばしたのはタケゾウ。
この位で慌てる男じゃない。


空にはオレンジ色の鳥。

「ピトフーイ」

鳥が降りて来る。
兵士達の至近距離を飛んで上空へ。

「ゲホン、いきなり気分が」
「なんだこりゃ、体が動かない」

いきなり体調を崩し動けない兵士達。

獅子山羊キマイラ”の群れが襲う。
普通人間を襲わない大人しい魔獣“獅子山羊”。
それでも集団で暴走すれば危険だ。
兵士達は“獅子山羊”の蹄に踏みつぶされる。

亜人の戦士達は帝国兵と違う。
魔獣と戦うのに慣れている。
全員固まって戦っている。


「なんだこりゃ。
 何でこんなところから魔獣が溢れてくるんだ」

キバトラのセリフだ。
チェレビーが反応する。

「俺達に分かるワケねーだろ。
 地元のアンタ達こそ心当たりは無いのかよ」
「入り口以外の場所から、魔獣が溢れてくるなんて。
 聞いたコトが無い」

後ろからムゲンが矢を放つ。
空に舞う“鴆”を狙い撃つ。

「こちら側の『野獣の森』は元々変でした。
 魔獣が多すぎる」
「だから、森がパンクでもしたのかしら」

冗談でもいうような口調の女冒険者。
マリーゴールドは鞭で“火鼠”や“鎌鼬”を打つ。
コイツらは魔法に似た攻撃を放つ。
その前に倒す。

「おおっと、行かせねーぞ」

亜人の村がに暴走しようとしていた“暴れ猪”。
刀が切り裂く。
左の刀が足を斬り、動きを留めた胴体を右の刀が貫く。
侍剣士タケゾウ。

「これ村の方がやべーんじゃねーか」

亜人の村には老人が多数いる。
女性と子供は山の方へ逃げたハズ。
エリカとミチザネも付いてるのだ。
そっちは何とかするだろう。
しかし老人達は。
 
「村の老人達はそんなにヤワじゃない。
 それに戦士の半数は残っている」
「なら、自分達のコトだけ考えればいーんだな。
 そいつは楽勝だ」

辺りは魔獣だらけ。
少し先で帝国兵が次々と魔獣によって倒されていく。
そんな中で笑って見せるタケゾウ。




ゲホッ、グホッ、ゴホン、グハン、ゲハッ、ゲハッ。

ショウマは慌てる。
獅子の仮面の女性フワワさんがいきなり倒れた。
凄まじく咳込んで調子悪そう。

「大丈夫なの?
 不治の病?、難病?
 ヒロインが病気で死んじゃうパターンのアニメや映画って、苦手なんだけど」

スクリーンのように映し出されてた映像。
従魔少女と巨人の戦いが映ってた映像。
そこに重ねて別の映像が映し出されたのだ。
魔獣が溢れて、兵士らしき男達を蹂躙している。
なんだかタケゾウやムゲンらしい人も映ってる。

「なにこれ?
 今起きてるコト?
 生中継?」
「そうよ、今『野獣の森』の外で起こってるコト。
 わたしはもうダメ。
 全身いたるトコロがボロボロなの」

「回復魔法使おうか?」

普通の病気にも効くのかな。
『治癒の滝』くらいでどうかな。

「駄目よ。
 魔力をムダにしないで。
 取っておいて」


「あなた従魔師でしょう。
 従魔師が従魔を操るのには普通魔力は必要としないの」

おおっ。
従魔師だと見破られてる?
今まで知り合った人達にはショウマが従魔師だと知られてない。
誰一人知らないハズ。

相手は“森の精霊”フワワ。
神様みたいに思われてる人。
何かで分かってしまうのか。

まあいいや。
何の話だっけ。
従魔師が従魔を操るのには普通魔力は必要としない。
うん。
ショウマもケロ子達と一緒にいる。
それだけで魔力を使ってるような気はしない。


「でも従魔師が従魔に出来る数はランクで決められてる。
 それを越える数の魔獣を従えてしまうと魔力を常時使う事になってしまうの。
 ペナルティみたいなモノね」
「へー、知らなかった」

ふーむ。
例えば従魔師のランク1で2体まで従魔が持てる。
ランク2なら4体までとか、決まっている。
それ以上5体従魔にしてしまった場合、従魔を従えているだけで常に魔力を消費する。
なるほど、常に魔力を消費するんじゃあっという間に魔力切れ。
すぐ失神する。
実質、上限を越えては従魔を持てないという事だ。


「そして従魔師のレベルで従えられる魔獣のレベルも決まる。
 あなたのレベルじゃ本来不可能なコト。
 だけどアナタには有り余る魔力が有る。
 その魔力を使いさえすれば、それをペナルティとして支払えば。
 きっと出来るハズ」

さっきから一体何のハナシ?



 
ハァハァ。
ケロ子達は疲れている。

森の巨人フンババ”を叩きのめした。
槍で刺して、弓で撃つ。
蹴り飛ばして、斧を喰らわす。
杖でも叩く。
巨人はボロボロ。

そろそろ倒れてくれるかも。
そう思うと回復してしまうのだ。

WOOOO!WOOOONWOOOOON!
天を仰いで巨人が吼える。
するとケガが治っていくのだ。


「クッ、これではキリが無いではないか」
「キリが無いのです」

「ケロ子、『身体強化』がそろそろ時間切れになりそうっ」

そろそろ時間切れっ。
何度も使ってるスキル。
何となく検討はつく。

「ハコ、私の『気絶の矢』もそろそろ使えない。
 あと一回が限度だ」
「みみっくちゃんの『眠りの胞子』もそうです。後一回がせいぜいですよ」

「オレ、試してみる。
 『マヒの遠吠え』」
「タマモちゃんより体の大きい魔獣には効きヅライハズですよ」

「オレ、知ってる。
 魔獣が集中が切れてる時、慌ててるような時。
 そんな時ならマヒを喰らわせやすい」
「それはありがたいが、
 しかしいくらやっても回復してしまうのではな……」

「大丈夫です。巨人を見てください。至るところケガだらけですよ。
 回復してはいますが、全てのダメージを回復しきれてはいないんです。
 ちゃんと今までみんなが与えたダメージは生きてます」

「でも私達も疲れてます。次です。次の攻撃で一気に叩き込みます。
 ケロ子お姉さま、あの後頭部を蹴るヤツ又出来ますか。
 あれから一気に全員攻撃しましょう。今度こそあのデカブツの体力根こそぎ刈り取るですよ」
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