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第三章 亜人の村はサワガシイ
第172話 夕暮れの死闘その1
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チッ。
どうにも胸くそ悪い仕事に関わっちまったな。
そんな風にチェレビーは思ってる。
腕に盾を着けた男の名はチェレビー。
冒険者達のリーダー。
冒険者と言ってもピンキリだ。
国をも越えて勇者として知られる英雄もいれば、チンピラのような者もいる。
盾を持つ男はキリの方。
チンピラに限りなく近い方だ。
自分達だって弱い冒険者を脅して金を奪ったりする人間だ。
胸を張れる生き方じゃあねえ。
しかし、子供を攫うようなマネはしてきてねえのだ。
俺達に脅されて金を出すような冒険者は、そいつらが悪い。
相手だって一人前の冒険者なのだ。
実力が俺達より劣っていた。
だから授業料を払うのだ。
亜人の女を攫う。
そいつらはシロウトじゃない。
そこそこ腕の立つ女どもだ。
ちょいと力を貸してくれ。
大怪我させずに捕まえたいんだ。
チェレビーは冒険者、軽戦士でもあるが薬師でもある。
薬と言ってもいろいろ。
一般的な回復させる薬だけじゃない。
相手を弱らせる毒薬もあれば、マヒさせる薬もある。
チェレビーは眠り薬を作れる。
そいつを嗅がせるだけで、相手は1時間ほど眠ってしまう。
便利な薬だ。
派手に使い過ぎると帝国警察に目を付けられる。
大っぴらには使っていない。
店の者はそれを知っていて、男に声をかけて来たのだ。
腕の立つ女を眠らせて攫う。
いいじゃねぇか。
女だって戦士なのだ。
俺達より弱いから攫われる。
鍛え方が足りなかったのだ。
そりゃ諦めてもらうしかねぇ。
しかしだ。
子供も攫っている。
成人前くらいの不思議な雰囲気のガキ。
コイツはまだいい。
魔術師だ。
多分魔術師見習いだろう。
チェレビー達に攻撃魔法を使って来た。
半人前でも戦闘能力があるのだ。
攫われること位は覚悟してもらわねぇとな。
問題はもう一人。
10歳くらいの子供。
女の子。
大人しい雰囲気の子だ。
寝ている母親の前から女の子を攫ってきちまった。
俺達はワルだし、ヒデエ真似もしてきている。
今さらいい子ちゃんヅラする気は無いがこんなコトには関わりたくなかった。
しかしこの男はムカツク。
イタチという男。
平気な顔をして、女の子に凶器を向けた。
躊躇が無い。
同じ村で暮らしてる亜人じゃねえのか。
魔術師見習いを脅すのに女の子を使っているのだ。
刃物を女の子に突きつけた。
大人しく出て来な。
出てこなきゃこの子供の耳を切り落とす。
女の子は泣いていた。
やだ、やだ。
怖い、いやあああ。
怯えて泣き叫んでいた。
当たり前だ。
10歳くらいの女の子なのだ。
刃物を顔に突きつけられれば怖いに決まってる。
チェレビーはその光景を見てるだけで胸くそ悪くなった。
その場でイタチを蹴りつけてやろうかと思う位だ。
しかしそうもいかない。
引き受けちまった仕事なのだ。
周りの仲間も同じような事を考えてるのが分かる。
自分の部下ども。
ワルではあるが気のいい連中なのだ。
子供の泣き叫ぶ声など聴きたくはない。
チェレビーはリーダーだ。
仲間を宥める役にならなきゃいけねぇ。
まぁまぁ仕事だ。
我慢しろ。
報酬はデカイ。
今夜パァーっとやって忘れようぜ。
「そろそろ一度女どもを出す」
そのイタチという男が言う。
この男の特技だ。
『収納』スキル。
意識を失った女を4人、ポケットにしまって見せた。
普通サイズのポケット。
人間の手を入れただけでいっぱいになりそうなソレに人間が吸い込まれていくのだ。
それも4人も。
冗談みたいな光景だった。
これならベオグレイドの門も余裕で通れる。
あそこは帝国兵どもがチェックをしている。
下手なモノは持って通れない。
チェレビー達が武器を持って通れるのは冒険者証を持っているからだ。
店の男が商人証を持っている。
チェレビー達はその護衛兼荷物持ちという設定だ。
ちょっとした物なら安い税金で通ることが出来る。
しかし意識を失った女を連れて入ろうなんてしたら、その場で捕まるだろう。
店の男にしろ、チェレビー達にしろ後ろ暗い事が無い訳じゃない。
帝国警察や情報部と連携して調べられたら全員お陀仏だ。
この男がいれば大丈夫だ。
帝国の兵士どもだってポケットの中に女が居るとは思わねぇ。
ただし女が意識を失ってる時だけだ。
イタチは言っていた。
意識の無い人間は物と一緒だ。
収納できる。
意識を取り戻したら収納から出てきてしまう。
良くは分からんが、要は女を眠らせておけばいいって事だ。
門を通る前に、一度女どもを外に出す。
そこでもう一度眠り薬を嗅がせる。
それで店まで連れていくのだ。
そろそろ街の塀が見えてくる辺り。
まだ兵士達には気付かれない距離だ。
良し、俺の出番だな。
胸くそ悪い仕事だったが、これでお終いだ。
どうにも胸くそ悪い仕事に関わっちまったな。
そんな風にチェレビーは思ってる。
腕に盾を着けた男の名はチェレビー。
冒険者達のリーダー。
冒険者と言ってもピンキリだ。
国をも越えて勇者として知られる英雄もいれば、チンピラのような者もいる。
盾を持つ男はキリの方。
チンピラに限りなく近い方だ。
自分達だって弱い冒険者を脅して金を奪ったりする人間だ。
胸を張れる生き方じゃあねえ。
しかし、子供を攫うようなマネはしてきてねえのだ。
俺達に脅されて金を出すような冒険者は、そいつらが悪い。
相手だって一人前の冒険者なのだ。
実力が俺達より劣っていた。
だから授業料を払うのだ。
亜人の女を攫う。
そいつらはシロウトじゃない。
そこそこ腕の立つ女どもだ。
ちょいと力を貸してくれ。
大怪我させずに捕まえたいんだ。
チェレビーは冒険者、軽戦士でもあるが薬師でもある。
薬と言ってもいろいろ。
一般的な回復させる薬だけじゃない。
相手を弱らせる毒薬もあれば、マヒさせる薬もある。
チェレビーは眠り薬を作れる。
そいつを嗅がせるだけで、相手は1時間ほど眠ってしまう。
便利な薬だ。
派手に使い過ぎると帝国警察に目を付けられる。
大っぴらには使っていない。
店の者はそれを知っていて、男に声をかけて来たのだ。
腕の立つ女を眠らせて攫う。
いいじゃねぇか。
女だって戦士なのだ。
俺達より弱いから攫われる。
鍛え方が足りなかったのだ。
そりゃ諦めてもらうしかねぇ。
しかしだ。
子供も攫っている。
成人前くらいの不思議な雰囲気のガキ。
コイツはまだいい。
魔術師だ。
多分魔術師見習いだろう。
チェレビー達に攻撃魔法を使って来た。
半人前でも戦闘能力があるのだ。
攫われること位は覚悟してもらわねぇとな。
問題はもう一人。
10歳くらいの子供。
女の子。
大人しい雰囲気の子だ。
寝ている母親の前から女の子を攫ってきちまった。
俺達はワルだし、ヒデエ真似もしてきている。
今さらいい子ちゃんヅラする気は無いがこんなコトには関わりたくなかった。
しかしこの男はムカツク。
イタチという男。
平気な顔をして、女の子に凶器を向けた。
躊躇が無い。
同じ村で暮らしてる亜人じゃねえのか。
魔術師見習いを脅すのに女の子を使っているのだ。
刃物を女の子に突きつけた。
大人しく出て来な。
出てこなきゃこの子供の耳を切り落とす。
女の子は泣いていた。
やだ、やだ。
怖い、いやあああ。
怯えて泣き叫んでいた。
当たり前だ。
10歳くらいの女の子なのだ。
刃物を顔に突きつけられれば怖いに決まってる。
チェレビーはその光景を見てるだけで胸くそ悪くなった。
その場でイタチを蹴りつけてやろうかと思う位だ。
しかしそうもいかない。
引き受けちまった仕事なのだ。
周りの仲間も同じような事を考えてるのが分かる。
自分の部下ども。
ワルではあるが気のいい連中なのだ。
子供の泣き叫ぶ声など聴きたくはない。
チェレビーはリーダーだ。
仲間を宥める役にならなきゃいけねぇ。
まぁまぁ仕事だ。
我慢しろ。
報酬はデカイ。
今夜パァーっとやって忘れようぜ。
「そろそろ一度女どもを出す」
そのイタチという男が言う。
この男の特技だ。
『収納』スキル。
意識を失った女を4人、ポケットにしまって見せた。
普通サイズのポケット。
人間の手を入れただけでいっぱいになりそうなソレに人間が吸い込まれていくのだ。
それも4人も。
冗談みたいな光景だった。
これならベオグレイドの門も余裕で通れる。
あそこは帝国兵どもがチェックをしている。
下手なモノは持って通れない。
チェレビー達が武器を持って通れるのは冒険者証を持っているからだ。
店の男が商人証を持っている。
チェレビー達はその護衛兼荷物持ちという設定だ。
ちょっとした物なら安い税金で通ることが出来る。
しかし意識を失った女を連れて入ろうなんてしたら、その場で捕まるだろう。
店の男にしろ、チェレビー達にしろ後ろ暗い事が無い訳じゃない。
帝国警察や情報部と連携して調べられたら全員お陀仏だ。
この男がいれば大丈夫だ。
帝国の兵士どもだってポケットの中に女が居るとは思わねぇ。
ただし女が意識を失ってる時だけだ。
イタチは言っていた。
意識の無い人間は物と一緒だ。
収納できる。
意識を取り戻したら収納から出てきてしまう。
良くは分からんが、要は女を眠らせておけばいいって事だ。
門を通る前に、一度女どもを外に出す。
そこでもう一度眠り薬を嗅がせる。
それで店まで連れていくのだ。
そろそろ街の塀が見えてくる辺り。
まだ兵士達には気付かれない距離だ。
良し、俺の出番だな。
胸くそ悪い仕事だったが、これでお終いだ。
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