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第三章 亜人の村はサワガシイ

第168話 真昼の凶行その5

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ショウマは亜人の村に辿り着く。
そろそろ夕暮れ。
なんとか暗くなる前に帰って来れた。

ショウマは疲れてない。
だってほとんど台車に乗ってたからね。

台車を交互に押してたハチ子、ハチ美は疲れ気味。

もっとベオグレイドまで楽に移動できないかな。
馬車使うとか。
従魔に馬車引かせるとかどうだろう。
高速馬車のパクリアイデア。

“暴れ猪”あたり捕まえて従魔にして台車を引かせる。
しかしショウマが従魔にした場合美少女になってしまうな。
少女に馬車を引かせる。
シュールな絵だ。
ダメだな。


途中ショウマは男達とすれ違っている。
ショウマは気が付いていない。
相手は男しかいないグループ。
気にもしていない。

ハチ子、ハチ美は気が付いてる。
行きにもすれ違った、殺気のする男達。
しかも刀からは血の臭いもしている。

男達からショウマを守るように動く従魔少女達。
あの中にいるのはイタチと呼ばれた卑劣漢ではなかったか。
何事もなく男達は通り過ぎて行った。


「アレだ。
 あれがオレの言ってた上物の女だ」

「よし、一緒に攫うか」
「この道なら他の人間も通らないぜ」

「ダメだ。
 手を出すな」
紳士服の男は言う

「何でだ?
 アンタも見ただろう。
 上物の女だろうが」

確かに特別級の美女だ。
……惜しい……
だが、しかし。
一緒にいるあの二人。

「あの一緒にいる女。
 あのダマスカスの鎧。
 普通の冒険者に手に入るモンじゃねえ。
 ルメイ商会のトップの親族だ。
 商人組合のパーティーで見た覚えが有る」

「チッ。
 たかが商人だろう」
「攫っちまえばこっちのもんだ」

「ただの商人じゃねぇ。
 ルメイ商会は既に皇族のご用達だ。
 貴族とも縁が深い。
 女のために手を出すにはデカすぎる相手だ」

そんな男達の会話が有った事にはハチ子ハチ美も気付いてない。




村の入り口に着いて、コノハの家へ向かうショウマ。
そんなショウマ達に駆け寄ってくる少年がいる。
ユキトだ。

「兄ちゃん、大変なんだ。
 ……タマモが……タマモが死にそうなんだ!」
「タマモが?!」

何が有ったの?!


ユキトは村の見張りをしていた。
『野獣の森』の入り口を見張る係。

見張り台は先日壊された。
今日村の大工アラカワさんが直してくれた。
作業を眺めつつ、簡単な手伝いもしたユキトだ。
今日は魔獣も溢れてこない。
交替して帰ってきたユキト。
途中で村人たちが集まっている。

「これは……コノハちゃんのとこのタマモじゃないか」
「マズイ、出血が多すぎる!」

「誰か薬を持ってないのか」
「血止めくらいならワシがやろう」

ユキトが行ってみるとタマモが倒れていた。
体を切られている。
刃物で切られた傷痕。
肩から胸にかけてバッサリ。
今にも死にそうだ。

ユキトはコノハを探した。
タマモはコノハの従魔。
コノハなら薬も持ってる。

しかしいない。
コノハの家にもユキトの家にもいない。
それどころか、イチゴもいない。
今はユキトの家にいるハズのケロ子、みみっくちゃんもいない。


ケロ子とみみっくちゃんが?!

「連れ去られたのかもしれないんだ」

ケロ子とみみっくちゃんが、連れ去られた?!
イチゴちゃんとコノハさんも?

ユキトの家に母親のナデシコはいた。
彼女は半分以上石化している。
口が効けない。
身振りでユキトに伝えた。
数人の男が彼女たちを攫って行った。
多分そう伝えている。


今ショウマとユキトはコノハの家に向かっている。
村人がタマモをコノハの家に上げてくれたらしい。

「ショウマ王! 我らは攫って行った男達を追います」
「おそらく途中で通り過ぎた男達、血の臭いがしました」

正直ショウマは男達を気にもしていなかった。

連れ去られたのは4人。
ケロ子、みみっくちゃん、コノハさん、イチゴちゃん。
そんな人間4人も連れているようには見えなかった。

「確かに人間4人も連れていませんでした」
「しかし、彼らが何かは知っています」

「分かった。
 行って」

ハチ美、ハチ子は超感覚。
その彼女たちが言うのだ。


ショウマもケロ子たちの事が気になる。
しかしタマモは死にかけてると言う。
回復魔法が使えるのはショウマだけだ。


エリカはパニック。
なになに。
みんな大変そう。
ええっ、タマモが切られたの。
ええっ、女性陣が攫われたの。
大事件じゃない。
アタシたちはどうするといいの?

「ハチ子、ハチ美さん、拙者も付いて行こう。
 自分もあの男どもは怪しいと感じたのだ」

フッと姿を現す忍者
……コザル。
今までどこにいたのよ。

「もちろんショウマさんの護衛だ」

朝からずっと一緒にいたらしい。

ベオグレイドの街にも来ていた。
誰も気付いてなかった。
門で兵士達ともめた時も、武器屋にも一緒にいたのだ。
物陰から見守っていたらしい。
ストーカーか。

「もちろん危険が有ったら、
 分かるように護衛したぞ。
 しかし普段は気配を出すのには慣れていないのだ」
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