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第三章 亜人の村はサワガシイ

第157話 ベオグレイドへその5

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ショウマ達は街へ向かってる。
ベオグレイド、帝国の街だ。

女冒険者エリカは呆れ顔だ。
なんなのコイツ。
男が普通女子に抱いてもらって移動する?

最初は自分の足で歩いていたショウマ、あっという間に限界が来たのだ。

だってしょうがないじゃん。
今日はみみっくちゃんがいない。
荷物を自分で持たないといけないのだ。

いつも通りハチ子、ハチ美がショウマを抱いて移動している。
と言ってもショウマは重い荷物なんか持って無い。
買い物するため金貨を持ってるだけなのだ。

今日はショウマは上等のコートという服装。
ハチ子、ハチ美はメイド服スタイル。

エリカやミチザネがキチンとした服装をしていた方がいいと言うのだ。
下手に毛皮のマントなんか着てたら亜人扱いされると言う。
ハチ子は武装無し、いざとなったら聖槍召喚が有る。
ハチ美は一応弓矢を持ってる。
メイド服に弓矢。
素晴らしいね。


「エリカ様、そう露骨に呆れた顔をするものでは有りません」
「だって一時間も経たずにもう歩けないとか言ってたわよ。
 どんな冒険者よ」

ミチザネに言われなくともエリカだって分かってる。
相手はルメイ商会に取って重要な人物。
会長であるキューピーが直々にエリカに面倒を見るよう頼んできたのだ。
あからさまに失礼な態度は取れない。

「冒険者と言っても相手は戦士では無いのですよ。
 魔術師の体力が少ないのは当然です」
「そのくらい分かってるわよ」

だからってチームメンバーの女性に抱えて運んでもらうの?

このショウマという男がそれなりの能力の持ち主なのは分かる。
神聖魔法を使う。
それも同時に多数の人間を回復させる魔法を複数回使えるのだ。
攻撃魔法まで使っていた。
“双頭熊”戦でエリカは助けられた。
それは気に入らないけど事実だ。

エリカが“化け狸”が“双頭熊”に化けるという知識を持っていたから。
コイツは知らなかったら引っかからなかったのだ。
たまたまじゃないの。

だいたいショウマとチームの人達の関係はおかしい。
男がリーダー1人で後は全員若くてキレイな女性。
子どもも一人混じってるけど。

どうやってメンバーを選んでいるのか。
明らかに目的にヨコシマなモノが混じってる気がするのだ。
ケロコさん、ハチコさん、ハチミさん、ミミックチャン。
みんな魅力的な女性で、冒険者としての能力もある。
なのに全員ショウマに丁寧過ぎる。

リーダーだから丁寧語なのはいいけど、王とかご主人様とか呼んでるのはどうなのか。
この男がやらせてるのか。

エリカには他にも気に入らない点が一つある。
納得がいっていないのだ。
だからベオグレイドに行くのである。



そろそろ一行は目的地に近付いている。
街の塀が見えてくる

ショウマは道で男達とすれ違う。

一人は紳士服、街の人だろう。
一緒に数人の武装をした男達。

着流しを着た戦士。
二本の長剣を持っている。

革のマント、革の帽子を深くかぶった男。
手からは弓が見えている。

腕に小型の盾を装備した男。
腰に細身の剣を下げている。


冒険者かな。
亜人の村に来る冒険者は少ないんじゃなかった。
でも少しはいるのかも。
村には流れの商人が来ると言ってた。
商人とその護衛かな。
ショウマはあまり気にせず通り過ぎる。

道を歩いてるのだ。
人とすれ違う事もある。

ハチ子とハチ美は何故かショウマが相手を見えないように動いてる。
ショウマと男達の間に割って入るのだ。

通り過ぎた後も警戒した風。
彼女たちはショウマの視線をジャマしていたのではない。
男達からショウマの間に立つ事で護衛をしていたのだ。


「あの剣を持った男、アレは出来るヤツだな」
「弓を持った男も油断なりません」

「どうかした?」

「通り過ぎた戦士、アレは実力者です。
 がそれ以上に……」
「実力者で、それ以上に殺気を感じました」




「可愛らしいじゃねーか」
「アンタ、わざと殺気をぶつけただろう。
 可哀そうに、怯えてたぜ」

「見た目が美女だってのに、
 そこそこ出来そうなのがおもしれ―からな。
 からかってみたくもなるだろ」

からかってみたくなると言ったのが剣士である。
可哀そうにと言っているのは腕に盾を付けた男。

「お前たち。
 今日は目立たない様にしたいんだ。
 騒ぎは起こさないでくれよ」

紳士服を着た男が言う。
彼等は亜人の村の方へ歩いていく。



【次回予告】

紋章官。
要するに貴族や王族の紋章を記憶し確認する仕事だ。だが誰の紋章か確認したり、ニセモノと判別するだけが仕事というワケでも無い。今でいう、弁護士や交渉人に近い仕事もしている。遺言状を託されることも有れば、貴族同士の結婚の証人になる事も有る。新たな貴族の紋章デザインも行う。争う貴族同士の仲を取り持つことも有った。単に知識だけあればいい存在ではないのだ。

「こ、これは〇〇〇〇一族の紋章! それも……」

次回 『門番と指輪』
紋章官は震えている。 

(ボイスイメージ:銀河万丈(神)でお読みください)
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