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第三章 亜人の村はサワガシイ

第147話 獅子の仮面の人影その1

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「ねえ、コノハさん。
 あの男何だったの」

ユキトの家だ。
女子達は寝ている
毛皮を敷いた上に毛布にくるまっている。

従魔師コノハは女冒険者エリカに訊き返す。

「あの男?」
「あのお風呂出てきたとき絡んできた男。
 背が高くて、性格悪そうなヤツ」

「イタチさんですね。
 あれでも戦士達のリーダー格なんです。
 性格悪そうはヒドイですよ」
「性格悪そうで通じたんだから、
 コノハさんもそう思ってるんじゃないの」

「えへへ。
 そうかもしれません」
「あっ。
 コノハさん笑った。
 良かった。
 笑うんだ」

「何でですか。
 私は良く笑いますよ」

そう言ったけれど。
思い返すとコノハは最近笑ってないかもしれない。


「そういえば最近笑ってないかもです。
 緊張してたみたい」
「そっか。
 ゴメンね。
 お母さんが大変なんだもんね」

「そうですね、コノハ。笑った方がいいですよー。笑うとそれだけで人間キモチが軽くなります。あんまり笑っていないとココロが病気になるですよ」
「へー。ミミックチャンいい事言うね」


「それで、そのイタチという男はコノハに何を言ってきたのだ?」
「あの話とか言ってませんでしたか」

ハチ子、ハチ美さんだ。
寝たように見えて、聞いてたらしい。
 
「あの話と言うのは……
 イタチさんは『野獣の森』の奥を知っていると言うんです。
 “埋葬狼”が攫って行く住処もだいたい分かると」

「そうなのっ。
 じゃあその人に案内してもらえばいいねっ」

ケロ子さんも会話に参加してくる。

「ははあ。みみっくちゃん分かりましたよ。“埋葬狼”の巣に案内する替わりになにか要求してきたですね。でコノハ、何をイタチに要求されたんですか」

コノハは一瞬言葉に詰まる。

口に出しにくい。
周りの女性はコノハに捲き込まれて『野獣の森』で戦っている。
内緒には出来ない。

「…………
 『野獣の森』を案内してやるから、夜一人でオレの家に来い。
 そう言われました」

「そっ、それって!」
「なに、プロポーズ! プロポーズなの?」

浮かれた声を出してるのはエリカだ。
コイツは男女の話に疎い。

「違うだろう。どう聞いたらそうなるんだ」
「違います。どう聞いても身体を要求しているだけです」

「あれっ。
 そう、そうなの」

シュンとするエリカだ。

「……そうだとすると、なんて卑劣な男なの!
 許せないわ。
 あの時切り付けてやれば良かった」

怒った声を出すエリカ。
浮かれたり、怒ったりせわしない。
 
「あの卑劣漢。
 性格悪そうだけど。
 見た目はちょっといいと思って失敗だったわ。
 今度会ったらホントに切ってやろう」
「やめてください。
 一応戦士達のリーダー格ですし、
 村でも重要な存在なんです」

戦士達のリーダーはキバトラ。
その2番手がイタチだ。
『野獣の森』を廻る時もキバトラチーム、イタチチームに分かれている。

「戦士達のナンバー2、副隊長ってワケですか? だから『野獣の森』に詳しい。奥の方も良く知ってるってコトですか。だったら同じチームの人なら、同じくらい地理を知ってそうです。他の戦士に頼めば場所が分かるかもしれませんですよ」

「それが……」

コノハも他の戦士に訊いたりはしてみた。
でもみんな奥までは知らないと言うのだ。


『野獣の森』。
亜人の村の入り口から入って広い。

その奥に通れない場所がある。
木々が生い茂って人は通れない。
入り口と同じようなゲートが有る。

ゲート以外からは通れない。
ゲートから入って行くと『野獣の森』の奥部分。
ベテランの戦士達でもほとんどは入った事が無い。

ウワサではさらに危険な魔獣がいると言う。

最大最強の“双頭熊ダブルヘッドベアー”。
石化の呪いを使う“蛇雄鶏コカトリス”。
体力の少ない者なら一瞬で命を奪われる、猛毒の“ちん”。

全て奥にはウヨウヨ居ると言われてる。
入り口側には普通いない。

がなにかのハズミでたまに出てくるのだ。
『野獣の森』入り口からたまに魔獣が溢れるように。
奥から入り口側へたまに出てくる。
昼間遭遇したのもそんなヤツだろう。


「『野獣の森』の奥には“双頭熊”“蛇雄鶏”がたくさんいるですか。それは確かに入っていけないですよ」
「つまり5層以降ってコトね。
 入り口の次がもう5層なの?」

言ってるのはエリカだ。

エリカは正面、ベオグレイド側から『野獣の森』を探索してる。
正面から入っていくと平均LV20はいかないと厳しいと言われる3層。
よほどの腕利きでなければ入るべきではない4層。
そしてベテランでもほとんど行った事の無い5層だ。

エリカ達はまだ4層すらほとんど入っていない。
試しにチラッと様子見した程度。

2層から3層をウロウロしているのだ。
4層には猛毒を浴びせる鳥“鴆”がいる。
よほど準備しないと危険。

3層でもう少し鍛えてから挑もう。
そんなトコロだ。
亜人の村側から入ると入り口の次がもう5層。

どんなハードモードよ。
そう思うエリカだ。
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