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第三章 亜人の村はサワガシイ
第136話 双頭熊その2
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女冒険者エリカは鉄の剣を構えて攻撃姿勢を取る
さっきはヤバかった。
“双頭熊”と分かっていれば、こっちだって。
エリカはミチザネやコザルタチのリーダーなのだ。
カッコ悪い場面ばかり見せていられるものか。
『疾風の剣』
コザルに気を取られてる巨大な魔獣。
“双頭熊”
後ろから近づき、女戦士は剣で突き刺す。
「ハァッ」
速度を上げてズバズバと切り込む。
エリカが着ている胸当ては速度上昇効果が有る。
剣のスキルは素早く何度も攻撃する技。
相乗効果で素早さも攻撃力も高まる。
エリカなりに工夫、研究した技なのだ。
上手く当てれば“暴れ猪”くらいなら一発で倒せる。
“双頭熊”は最初の一撃を喰らった。
だがその後は振り向き、避けたり前足でガードして見せる。
こちらの攻撃が止んだ瞬間。
魔獣の前足が一閃。
前足の一撃がエリカを襲う。
なんとかエリカは避けた。
けど爪が空気を切り裂く音が横をかすめた。
これ、喰らうとヤバい。
さっきは一撃で鉄の胸当てが変形してるのだ。
ショウマはエリカと“双頭熊”の戦いを見ながら相談。
「その『咆哮』への対抗策は有るの?」
「おそらく、魔法を消せるのは一つまで。
同時にいきましょう」
魔術師のミチザネが応える。
エリカは一度後ろへと下がる。
魔獣の攻撃範囲から距離を置く。
今度は逆側からコザルが苦無を“双頭熊”に突き刺した。
魔獣はまたコザルに気を取られてる。
『切り裂く風』
『氷撃』
ミチザネの風魔法。
ショウマの水魔法。
どちらも魔獣の体に当たった。
獣毛が切れて宙を舞う。
血が獣の方から流れ出す。
前足が凍り付いて動かない。
身動き取れないほどじゃないけど、攻撃は鈍くなったみたい。
そうか。
コザルに攻撃してても『咆哮』は使えない。
なら同時にドンドン攻撃していけば。
勝機が見えてきたみたい。
相手は攻撃力も体力もありそう。
でも複数で注意して戦えばいいのだ。
ショウマは“双頭熊”を観察して、結論に辿り着く。
しかし、それは早計であった。
“双頭熊”がショウマとミチザネに目を向けてる。
今度はコザルからショウマ達へ標的を移したみたい。
だけど、まだ攻撃できない距離だよね。
「グワアアアアッ!!ウグゥワアアアアァッ!!!ガァアアアアアアアア!!!!」
魔獣が雄叫びを上げる。
森が震撼してる。
そんな錯覚を覚えるほどの怒りの『咆哮』。
前に居た“妖狐”タマモがビクンと背中を跳ね上げた。
コノハとショウマを守るように前をうろついて“双頭熊”を睨んでいた“妖狐”。
それがいきなり頭を垂れている。
「クゥゥキューン」
「……に、逃げましょう、エリカ様。
ここは逃げるべきです。
相手はベテラン冒険者でも返り討ちに遭う魔獣。
逃げてもなにも恥ずかしくない」
ええっ。
さっきまで態度の大きかった魔術師がいきなり小さくなってる。
「……そうね。
ミチザネの言う通りかも」
“双頭熊”に恐れげなく斬りかかってた女戦士。
エリカまで今にも逃げだしそうだ。
あからさまに足が震えてる。
二人とも目がグルグル渦巻!
様子がおかしい。
コノハがショウマの腕に抱き着いてくる。
「……ショウマさん……」
ええっ。なになに?
コノハの体は震えていた。
腕にくっついてる手がガタガタしてるのだ。
顔は血の気が引いて真っ青。
目がグルグル渦巻になってる!
「恐怖!
恐怖状態になってる。
みんなやられてる!
しばらくまともに攻撃できない」
忍者、コザルの声であった。
恐怖!
状態異常か。
「コザルさんは平気なの?」
「コザルは状態異常にかかりにくい。
平気だ」
“双頭熊”がショウマの居る場所に向かってくる。
このままじゃ怯えてるタマモやミチザネはいいエジキだ。
ショウマは言う。
「避けてて。
大きいのいくよ」
コザルは上手く避けるだろう。
エリカは……しょうがない。
凍ったら後で溶かそう。
白いローブを纏った魔術師は唱えていた。
それは、現在の魔術師ほとんどが使う事の出来ない魔法。
『全てを閉ざす氷』
ショウマの視界に有る物が凍り付いて行く。
風になびいていた草が、葉を揺らしていた樹木が。
全てが動きを止める。
大地までもが凍り付く。
しかし……
「ウグゥワアアアアァッ!!」
『咆哮』を上げる魔獣。
“双頭熊”の前で氷が割れていた。
魔獣の左右は凍り付いてる。
そのさらに後ろの大地まで。
しかし“双頭熊”のその周りは凍っていない。
見れば魔獣も薄く全身に白い氷は付いてる。
でもその程度。
ダメージがあるのかどうかと言うレベル。
魔法の効力、そのほとんどをツブして見せたのだ。
「ええっ!
何それ。
チート魔獣?」
さっきはヤバかった。
“双頭熊”と分かっていれば、こっちだって。
エリカはミチザネやコザルタチのリーダーなのだ。
カッコ悪い場面ばかり見せていられるものか。
『疾風の剣』
コザルに気を取られてる巨大な魔獣。
“双頭熊”
後ろから近づき、女戦士は剣で突き刺す。
「ハァッ」
速度を上げてズバズバと切り込む。
エリカが着ている胸当ては速度上昇効果が有る。
剣のスキルは素早く何度も攻撃する技。
相乗効果で素早さも攻撃力も高まる。
エリカなりに工夫、研究した技なのだ。
上手く当てれば“暴れ猪”くらいなら一発で倒せる。
“双頭熊”は最初の一撃を喰らった。
だがその後は振り向き、避けたり前足でガードして見せる。
こちらの攻撃が止んだ瞬間。
魔獣の前足が一閃。
前足の一撃がエリカを襲う。
なんとかエリカは避けた。
けど爪が空気を切り裂く音が横をかすめた。
これ、喰らうとヤバい。
さっきは一撃で鉄の胸当てが変形してるのだ。
ショウマはエリカと“双頭熊”の戦いを見ながら相談。
「その『咆哮』への対抗策は有るの?」
「おそらく、魔法を消せるのは一つまで。
同時にいきましょう」
魔術師のミチザネが応える。
エリカは一度後ろへと下がる。
魔獣の攻撃範囲から距離を置く。
今度は逆側からコザルが苦無を“双頭熊”に突き刺した。
魔獣はまたコザルに気を取られてる。
『切り裂く風』
『氷撃』
ミチザネの風魔法。
ショウマの水魔法。
どちらも魔獣の体に当たった。
獣毛が切れて宙を舞う。
血が獣の方から流れ出す。
前足が凍り付いて動かない。
身動き取れないほどじゃないけど、攻撃は鈍くなったみたい。
そうか。
コザルに攻撃してても『咆哮』は使えない。
なら同時にドンドン攻撃していけば。
勝機が見えてきたみたい。
相手は攻撃力も体力もありそう。
でも複数で注意して戦えばいいのだ。
ショウマは“双頭熊”を観察して、結論に辿り着く。
しかし、それは早計であった。
“双頭熊”がショウマとミチザネに目を向けてる。
今度はコザルからショウマ達へ標的を移したみたい。
だけど、まだ攻撃できない距離だよね。
「グワアアアアッ!!ウグゥワアアアアァッ!!!ガァアアアアアアアア!!!!」
魔獣が雄叫びを上げる。
森が震撼してる。
そんな錯覚を覚えるほどの怒りの『咆哮』。
前に居た“妖狐”タマモがビクンと背中を跳ね上げた。
コノハとショウマを守るように前をうろついて“双頭熊”を睨んでいた“妖狐”。
それがいきなり頭を垂れている。
「クゥゥキューン」
「……に、逃げましょう、エリカ様。
ここは逃げるべきです。
相手はベテラン冒険者でも返り討ちに遭う魔獣。
逃げてもなにも恥ずかしくない」
ええっ。
さっきまで態度の大きかった魔術師がいきなり小さくなってる。
「……そうね。
ミチザネの言う通りかも」
“双頭熊”に恐れげなく斬りかかってた女戦士。
エリカまで今にも逃げだしそうだ。
あからさまに足が震えてる。
二人とも目がグルグル渦巻!
様子がおかしい。
コノハがショウマの腕に抱き着いてくる。
「……ショウマさん……」
ええっ。なになに?
コノハの体は震えていた。
腕にくっついてる手がガタガタしてるのだ。
顔は血の気が引いて真っ青。
目がグルグル渦巻になってる!
「恐怖!
恐怖状態になってる。
みんなやられてる!
しばらくまともに攻撃できない」
忍者、コザルの声であった。
恐怖!
状態異常か。
「コザルさんは平気なの?」
「コザルは状態異常にかかりにくい。
平気だ」
“双頭熊”がショウマの居る場所に向かってくる。
このままじゃ怯えてるタマモやミチザネはいいエジキだ。
ショウマは言う。
「避けてて。
大きいのいくよ」
コザルは上手く避けるだろう。
エリカは……しょうがない。
凍ったら後で溶かそう。
白いローブを纏った魔術師は唱えていた。
それは、現在の魔術師ほとんどが使う事の出来ない魔法。
『全てを閉ざす氷』
ショウマの視界に有る物が凍り付いて行く。
風になびいていた草が、葉を揺らしていた樹木が。
全てが動きを止める。
大地までもが凍り付く。
しかし……
「ウグゥワアアアアァッ!!」
『咆哮』を上げる魔獣。
“双頭熊”の前で氷が割れていた。
魔獣の左右は凍り付いてる。
そのさらに後ろの大地まで。
しかし“双頭熊”のその周りは凍っていない。
見れば魔獣も薄く全身に白い氷は付いてる。
でもその程度。
ダメージがあるのかどうかと言うレベル。
魔法の効力、そのほとんどをツブして見せたのだ。
「ええっ!
何それ。
チート魔獣?」
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