102 / 289
第二章 迷宮都市はオドル
第102話 旅立ちの支度その6
しおりを挟む
翌日。
迷宮都市の正門前。
コノハとタマモは待っている。
高速馬車に本当に乗れるんだろうか。
実はコノハは迷宮都市に来るときも使っている。
普通に馬車に乗る事は出来ない。
そんなお金は持っていない。
護衛という枠で乗せてもらったのだ
高速馬車は貴重品の輸送もしている。
盗賊に狙われる。
野生の猛獣だって危険。
『野獣の森』近辺では魔獣に襲われる事だってあるのだ。
護衛は必須である。
旅の冒険者が護衛を引き受ける。
高速馬車の運賃は無料。
その替わり護衛代は出ない。
賊との戦闘で相手を捕獲したり、獣を仕留めれば多少の礼金が出る。
そんな仕組みだ。
高速馬車専任の護衛隊長指揮下に入り、隊長の指示に従わなくてはいけない。
キチンとした客席などは無い。
馬車の荷台、その後ろの空いた空間に寝るのだ。
それでも歩いて旅するよりはいい。
希望者は多い。
いきなり行って護衛になれる訳ではない。
コノハは知り合いが口を利いてくれて、事前に約束した。
今回は何の約束も無いのだ。
人数もショウマ一行と自分達。
6人と一匹だ。
気軽に受け入れられる人数じゃない筈。
「コノハさんっ
おはようございますっ」
「おはようございます」
ケロコさんの声。
続けて、ショウマさんの一行。
あれ。
みんな手ぶら?
武器を持ったりはしてるけど、手荷物すらない。
コノハはもちろん荷物を持ってる。
麻で出来た背負い袋に食料、水、薬やらを詰め込んでる。
一行は今日は戦士スタイル。
メイド服じゃない。
メイド服は予備が無いし、馬車は盗賊に狙われる事も有ると言う。
これから『野獣の森』別の迷宮に向かうのだ。
すぐ迷宮探索に入る訳じゃないが、一応戦闘スタイルにしている。
さて迷宮都市の入り口、正門前で集合した一行。
ショウマ、ケロ子、みみっくちゃん、ハチ子、ハチ美、
さらに従魔師コノハ、“妖狐”タマモ、キューピー会長。
8名にもなる一行である。
「どうぞ、どうぞ こちらですよ」
キューピー会長が愛想良く、馬車の元へ案内する・
高速馬車は4台有った。
馬車と言えば、ショウマが乗った事が有るのは村の荷馬車だけだ。
村の荷馬車は元々ショウマがイメージした物より小さかった。
高速馬車はイメージしてた物に近い。
車輪が4輪、箱状の荷台に付いてる。
2t~4tトラック位のサイズは有る。
しかし馬が違う。
2頭の馬が1台の馬車を引いている。
その馬がショウマの知ってる馬じゃない。
足が多いのだ。
「変なウマキター?!」
「王よ、あれは魔獣だ」
「魔獣です」
「あれは“八本脚馬”と呼ばれる魔獣ですね。みみっくちゃんも見るのは初めてですよ。『不思議の島』に出るというウワサを聞いてます。伝説では天を駆けるとか、大陸を3日で走る事が出来るとか、寝ずに走り続ける事が出来ると言われてるですよ」
「馬車で2日で行けるなんておかしいと思ったら、こんなカラクリだったですか。普通馬車の移動距離と言ったら一日20キロから30キロがいいところです。健脚な旅人だったらもっと早く移動できると言われる程度なんですよ」
「そうなの?
じゃ馬車の意味ないじゃん」
「ご主人様。荷物を運んでるんですよ。荷物が無きゃもちろん人より早いでしょうけど、1t以上の荷物を運ぶんです。それで速度も速くと言ったってムチャというモノですよ」
そっか。
1tというと5キロの箱が200個。
「なるほど。
フツーの人なら5キロも荷物持ったらまともに歩けないよね」
「いや、それはご主人様だけですよ」
そんないつも通りのショウマ達にいきなり話しかけて来た者がいる。
「コノハー」
「クレマチスさん!」
「御者になってくれる気になったかい」
「違います」
女性だ。
コノハの知り合いらしい。
「コノハさんのお友達ですかっ?」
「クレマチスさん。
この高速馬車の御者をしてる方で従魔師なんです」
「そうだよー。
クレマチスだよ。
よろしくね」
そうか。
魔獣が馬車を引いてると言う事はその魔獣を操ってる従魔師がいるのだ。
年上の女性。
コノハさんの一回り上くらいだろうか。
なんだか、コノハさんと距離が近い。
百合!?
百合なのか。
「ワタシ、ケロ子ですっ」
「みみっくちゃん、みみっくちゃんといいますですよ」
ハチ子、ハチ美は様子見している。
“八本脚馬”に対して警戒しているらしい。
魔獣だしね。
女同士の会話に男が入るのは無粋だぜ。
ショウマはそんな風情で距離を置く。
もちろんホンネは初対面の相手に自己紹介するのが苦手なだけだ。
後ろから会話を盗み聞くショウマである。
「私、迷宮都市に来るときもこの馬車に載せてもらったんです。
護衛として乗るのに紹介してくれたのがクレマチスさんです」
「コノハには高速馬車のコト知ってもらって、
行く行くは馬車の御者をやってもらいたいからねー」
「クレマチスさん。
だから私は冒険者になるので、御者は出来ませんと」
「いいんだよ、すぐじゃなくて。
従魔師の能力を鍛えるのも必要だからね。
冒険者に飽きたら御者ってコトで考えといてよ」
「いえ。冒険者じゃなかったら、薬師になるつもりなので…」
「えーっ 冷たいねぇ。
じゃ、3番目。
冒険者が失敗して、薬師も上手くいかなかったらおいで」
「クレマチスさん。そのセリフはヒドイです」
へー
馬車の御者の仕事へスカウトか。
大型トラックの運ちゃんみたいなモノかな。
もしくは高速バスの運転手。
どちらも激務でなりてが少ないっていうもんね。
「馬車を1台借り切るっていうから、
どんな金持ちかと思って見たら、コノハだったなんてね」
「え! クレマチスさん。今なんと」
「1台借り切ってるんだよ。この馬車を」
「はい。
1台。ショウマさん達のため貸し切りでご用意させていただきました」
答えたのはキューピー会長だ。
ええええっ!
コノハは絶句した。
迷宮都市の正門前。
コノハとタマモは待っている。
高速馬車に本当に乗れるんだろうか。
実はコノハは迷宮都市に来るときも使っている。
普通に馬車に乗る事は出来ない。
そんなお金は持っていない。
護衛という枠で乗せてもらったのだ
高速馬車は貴重品の輸送もしている。
盗賊に狙われる。
野生の猛獣だって危険。
『野獣の森』近辺では魔獣に襲われる事だってあるのだ。
護衛は必須である。
旅の冒険者が護衛を引き受ける。
高速馬車の運賃は無料。
その替わり護衛代は出ない。
賊との戦闘で相手を捕獲したり、獣を仕留めれば多少の礼金が出る。
そんな仕組みだ。
高速馬車専任の護衛隊長指揮下に入り、隊長の指示に従わなくてはいけない。
キチンとした客席などは無い。
馬車の荷台、その後ろの空いた空間に寝るのだ。
それでも歩いて旅するよりはいい。
希望者は多い。
いきなり行って護衛になれる訳ではない。
コノハは知り合いが口を利いてくれて、事前に約束した。
今回は何の約束も無いのだ。
人数もショウマ一行と自分達。
6人と一匹だ。
気軽に受け入れられる人数じゃない筈。
「コノハさんっ
おはようございますっ」
「おはようございます」
ケロコさんの声。
続けて、ショウマさんの一行。
あれ。
みんな手ぶら?
武器を持ったりはしてるけど、手荷物すらない。
コノハはもちろん荷物を持ってる。
麻で出来た背負い袋に食料、水、薬やらを詰め込んでる。
一行は今日は戦士スタイル。
メイド服じゃない。
メイド服は予備が無いし、馬車は盗賊に狙われる事も有ると言う。
これから『野獣の森』別の迷宮に向かうのだ。
すぐ迷宮探索に入る訳じゃないが、一応戦闘スタイルにしている。
さて迷宮都市の入り口、正門前で集合した一行。
ショウマ、ケロ子、みみっくちゃん、ハチ子、ハチ美、
さらに従魔師コノハ、“妖狐”タマモ、キューピー会長。
8名にもなる一行である。
「どうぞ、どうぞ こちらですよ」
キューピー会長が愛想良く、馬車の元へ案内する・
高速馬車は4台有った。
馬車と言えば、ショウマが乗った事が有るのは村の荷馬車だけだ。
村の荷馬車は元々ショウマがイメージした物より小さかった。
高速馬車はイメージしてた物に近い。
車輪が4輪、箱状の荷台に付いてる。
2t~4tトラック位のサイズは有る。
しかし馬が違う。
2頭の馬が1台の馬車を引いている。
その馬がショウマの知ってる馬じゃない。
足が多いのだ。
「変なウマキター?!」
「王よ、あれは魔獣だ」
「魔獣です」
「あれは“八本脚馬”と呼ばれる魔獣ですね。みみっくちゃんも見るのは初めてですよ。『不思議の島』に出るというウワサを聞いてます。伝説では天を駆けるとか、大陸を3日で走る事が出来るとか、寝ずに走り続ける事が出来ると言われてるですよ」
「馬車で2日で行けるなんておかしいと思ったら、こんなカラクリだったですか。普通馬車の移動距離と言ったら一日20キロから30キロがいいところです。健脚な旅人だったらもっと早く移動できると言われる程度なんですよ」
「そうなの?
じゃ馬車の意味ないじゃん」
「ご主人様。荷物を運んでるんですよ。荷物が無きゃもちろん人より早いでしょうけど、1t以上の荷物を運ぶんです。それで速度も速くと言ったってムチャというモノですよ」
そっか。
1tというと5キロの箱が200個。
「なるほど。
フツーの人なら5キロも荷物持ったらまともに歩けないよね」
「いや、それはご主人様だけですよ」
そんないつも通りのショウマ達にいきなり話しかけて来た者がいる。
「コノハー」
「クレマチスさん!」
「御者になってくれる気になったかい」
「違います」
女性だ。
コノハの知り合いらしい。
「コノハさんのお友達ですかっ?」
「クレマチスさん。
この高速馬車の御者をしてる方で従魔師なんです」
「そうだよー。
クレマチスだよ。
よろしくね」
そうか。
魔獣が馬車を引いてると言う事はその魔獣を操ってる従魔師がいるのだ。
年上の女性。
コノハさんの一回り上くらいだろうか。
なんだか、コノハさんと距離が近い。
百合!?
百合なのか。
「ワタシ、ケロ子ですっ」
「みみっくちゃん、みみっくちゃんといいますですよ」
ハチ子、ハチ美は様子見している。
“八本脚馬”に対して警戒しているらしい。
魔獣だしね。
女同士の会話に男が入るのは無粋だぜ。
ショウマはそんな風情で距離を置く。
もちろんホンネは初対面の相手に自己紹介するのが苦手なだけだ。
後ろから会話を盗み聞くショウマである。
「私、迷宮都市に来るときもこの馬車に載せてもらったんです。
護衛として乗るのに紹介してくれたのがクレマチスさんです」
「コノハには高速馬車のコト知ってもらって、
行く行くは馬車の御者をやってもらいたいからねー」
「クレマチスさん。
だから私は冒険者になるので、御者は出来ませんと」
「いいんだよ、すぐじゃなくて。
従魔師の能力を鍛えるのも必要だからね。
冒険者に飽きたら御者ってコトで考えといてよ」
「いえ。冒険者じゃなかったら、薬師になるつもりなので…」
「えーっ 冷たいねぇ。
じゃ、3番目。
冒険者が失敗して、薬師も上手くいかなかったらおいで」
「クレマチスさん。そのセリフはヒドイです」
へー
馬車の御者の仕事へスカウトか。
大型トラックの運ちゃんみたいなモノかな。
もしくは高速バスの運転手。
どちらも激務でなりてが少ないっていうもんね。
「馬車を1台借り切るっていうから、
どんな金持ちかと思って見たら、コノハだったなんてね」
「え! クレマチスさん。今なんと」
「1台借り切ってるんだよ。この馬車を」
「はい。
1台。ショウマさん達のため貸し切りでご用意させていただきました」
答えたのはキューピー会長だ。
ええええっ!
コノハは絶句した。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神がアホの子じゃだめですか? ~転生した適当女神はトラブルメーカー~
ぶらっくまる。
ファンタジー
魔王が未だ倒されたことがない世界――ファンタズム大陸。
「――わたしが下界に降りて魔王を倒せば良いじゃない!」
適当女神のローラが、うっかり下界にちょっかいを出した結果、ヒューマンの貧乏貴族に転生してしまう。
しかも、『魔王を倒してはいけない』ことを忘れたまま……
幼少期を領地で過ごし、子供騎士団を作っては、子供らしからぬ能力を発揮して大活躍!
神の知識を駆使するローラと三人の子供騎士たちとの、わんぱくドタバタ浪漫大活劇を描くヒューマンドラマティックファンタジー物語!!
成長して学園に行けば、奇抜な行動に皇族に目を付けられ――
はたまた、自分を崇めている神皇国に背教者として追われ――
などなど、適当すぎるが故の波乱が、あなたを待ち受けています。
※構成の見直しを行いました。完全書下ろしは「★」、大部分を加筆修正は「▲」の印をつけております。
第一章修正完了('19/08/31)
第二章修正完了('19/09/30)⇒最新話、17話投稿しました。
女王直属女体拷問吏
那羽都レン
ファンタジー
女王直属女体拷問吏……それは女王直々の命を受けて、敵国のスパイや国内の不穏分子の女性に対して性的な拷問を行う役職だ。
異世界に転生し「相手の弱点が分かる」力を手に入れた青年セオドールは、その能力を活かして今日も囚われの身となった美少女達の女体の弱点をピンポイントに責め立てる。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
神々の仲間入りしました。
ラキレスト
ファンタジー
日本の一般家庭に生まれ平凡に暮らしていた神田えいみ。これからも普通に平凡に暮らしていくと思っていたが、突然巻き込まれたトラブルによって世界は一変する。そこから始まる物語。
「私の娘として生まれ変わりませんか?」
「………、はいぃ!?」
女神の娘になり、兄弟姉妹達、周りの神達に溺愛されながら一人前の神になるべく学び、成長していく。
(ご都合主義展開が多々あります……それでも良ければ読んで下さい)
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる