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第一章 ハジマリの地下迷宮

第73話 地下迷宮終章その4

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ショウマ一行は帰路に着いた。
ショウマ、ケロ子、みみっくちゃん、ハチ子、ハチ美の5人。
『大樹』の根元に行く。
そこには下へ向かう階段が出来ていた。

『大樹』のウロの正面辺り、石造りの場所が出来ている。
そこに階段が有るのだ。

「いつの間に。
 突貫工事?」

少し下層が気になるショウマ。
でも今日は働いた。
働き過ぎた。
残業はよろしくない。
ほっとけば誰か調べてくれるよ。
もう帰ろう。

『大樹』の中の空間は以前より通りやすくなってる気がする。
少し前通った時はメチャクチャだったのだ。
一人通るにもせまい場所、飛び降りなければいけない場所。
今は普通に通路になっている。
それでもショウマが昇っていくにはキツイ。
ハチ美に抱えられて宙を飛んでいく。

来た時に通った道がある。
四階の広間に出る道、商人さんの案内で通ったのだ。
その道をを通り過ぎる。
さらに上に登っていけそうなのだ。


暗がりだ。
迷宮の暗闇。
『明かり』
光の玉が照らしてる。
先頭はハチ子。
そしてハチ美と抱えられたショウマ。

大樹から出るハチ子。
これ以上は上に行けそうもない。
先端に近付いたのだろう。
通路が細くなっている。
外はボロ布が吊ってある。
生活臭のある空間。
見たことがある気がする場所。

「ここ、こないだのサンバカーニバル会場?」

地下二階の“屍食鬼グール”の隠れ家だ。
その中へショウマ達は出たのだ。

「グッグッ!グッグッ」
「グッグッ」

隠れ家の奥から光の玉が現れた。
隠れ家にいた“屍食鬼グール”は大慌て。
暗闇がいきなり光の玉で照らされたのだ。
しかも冒険者らしきニンゲンが数人出てくる。
逃げようとする者。
棍棒を持ち攻撃する者。

「ハチ子、ハチ美!
 経験値ゲット」

「はい。王よ。必ず仕留めてみせる」
「仕留めて見せます」

ショウマはハチ子、ハチ美にまかせようとする。
結局“迷う霊魂レイス”戦では二人に経験値は入らなかった。
ショウマ、ケロ子、みみっくちゃんはLVアップしている。

槍を構えたハチ子。
屍食鬼グール”は3体いた。

棍棒を持ちハチ子に向かってくる1体。
ハチ子は慌てない。
槍の方がリーチが長いのだ。
魔獣に向かって突き出すだけでいい。
槍の刃先が“屍食鬼グール”の胸元を貫く。

ハチ子を襲おうとする別の“屍食鬼グール”。
ハチ美の矢が刺さる。
“屍食鬼”の後頭部まで矢が通る。
一瞬で絶命しただろう。

“屍食鬼”の胴体から槍を抜くハチ子。
もう1体は逃げようとしている。
逃げようとした方向へ矢が飛ぶ。
ハチ美の牽制だ。
動きを止めた“屍食鬼グール
その身体にハチ子の槍が刺さる。

『LVが上がった』
『ハチコは冒険者LVがLV4からLV5になった』
『ハチミは冒険者LVがLV4からLV5になった』

やっぱり強いな。
ショウマは思う。
あっという間に3体倒してる。
地下四階で“石巨人”に苦戦していた。
あれは“石巨人”が強敵だったのだ。
四階まで降りたのだ。
徐々に魔獣が強くなっていたのだろう。

「やったねっ。ハチ子ちゃんっハチ美ちゃんっ」

「うむ、ケロ子殿」
「はい、ケロ子殿」


壁をケロ子が壊して破る。
前に壁を壊したのは一昨日だったか。
“屍食鬼”が直したのか。
壁が全て石で出来ていたら、簡単に壊せなかっただろう。
石と砂、木片、木クズそんな材料がニカワのような物で張り合わせてある。
通路側からは壊れた跡が分からない様になってた。
暗い迷宮だ。
普通の石壁のように見える。
それを今また破壊したのだ。

「この辺の壁もっと壊しちゃってよ」



『舞い踊る業火』
 

ショウマは“屍食鬼グール”の隠れ家内を燃やし尽くす。
吊ってあった腐った肉だのボロ布が燃え尽きる。
後に残ったのは『大樹』への入り口だ。

「しつこい“屍食鬼グール”は元から絶たなきゃダメ、
 みたいな」

「ついでだね。
 みみっくちゃん、
 『六階への近道』
 って立て札でもしておいて」

「ご主人様、抜け道バラしちゃっていいんですか。ご主人様の事です。隠匿しておいて自分だけ使う気かと思ったですよ」

うーん。
バラシて何か損が有ったっけ。
特に思い当たらないや。

「いーよ」

二階に降りてきたら一本道だ。
その途中に元“屍食鬼グール”の隠れ家がある。
降りてきてすぐそこの場所である。
冒険者が降りてきたら、誰でも分かるだろう。

別にショウマは他の冒険者の事を思いやってるワケじゃない。
自分が面倒くさいのだ。
屍食鬼グール”がまた湧いたり、壁が出来たらメンドイじゃん。
こうしておけば、
誰か“屍食鬼”退治してくれるんじゃね、みたいな
というワケだ。

地下二階の通路に出たショウマ一行。
ここまで来ればもう一階の湖まですぐそこ。


「おお、さすが王の土地、風光明媚なところだ」
「風光明媚なところです」

「うん?」
「明るいですっ」

ショウマは一階の湖で首をかしげる。
何かおかしいな。
ケロ子の言う通り明るい。

湖の周りはもっと暗かったと思う。
暗闇に湖が広がり、恐ろしくも幻想的な風景だった。
今二階から上がってきてみると明るいのだ。
何処かから日光が入ってきている?
湖が明るく煌めいている。

まぁいいか。
暗くなったんなら不便だけど、明るくなる分には文句はない。
そうだ。
明るくなったんなら、アレ見つけられないかな。

「ハチ子、ハチ美。敵の気配しない?」

「王よ。近くに魔獣はいません」
「王よ。気配はしないのです」

「大きい黒い鳥いない?
 アレならお金になるし、
 ハチ子とハチ美の経験値にもピッタリだと思ったんだけどな」

「大きい魔獣……王よ。大きい魔獣どころかこの近辺には一切魔獣の気配がありません」
「魔獣の気配が無いのです」

あれ。
黒い鳥はともかく、“毒蛙”すらいないって事?
あれれ。

ショウマは不審な物を感じつつも家に帰る。
今日は働き過ぎだよね
働き方改革に違反しちゃうよ
都合よい時だけ、法律を持ち出すショウマだ。
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