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第一章 ハジマリの地下迷宮

第56話 ハチの姉妹その2

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『LVが上がった』
『ハチコは冒険者LVがLV1からLV2になった』 
『ハチミは冒険者LVがLV1からLV2になった』 

“殺人蜂”の3体を仕留めたショウマ一行。
コインはショウマが銀貨5枚、ハチ子とハチ美がそれぞれ銀貨5枚手に入れた。
ハチ子とハチ美はショウマにコインを差し出してくる。

チーム編成をしていないからだ。
現在チーム編成はリーダー・ショウマ、ケロ子、みみっくちゃん。
ケロ子が倒したドロップコインはリーダーのショウマの元へ。

ハチ子とハチ美はそれぞれ倒した昆虫型魔獣のドロップコインを単独で手に入れている。
とすると経験値も同じだ。
ハチ子が倒した魔獣の経験値はハチ子のモノ。
ハチ美も同じく。
ショウマ、ケロ子、みみっくちゃんが倒した魔獣の経験値はチーム3人で分け合う。
ならばショウマ、ケロ子が戦闘してもハチ子、ハチ美のLVアップにならない。

「え~、
 一度帰ってチーム編成する?
 いや~、
 帰ったら今日はもう仕事終わりだよ。
 お風呂入って寝るよ」

一行はこのまま進むことになった。
勤勉な従魔少女達である。





「んじゃ、今日こそはニ階に行くぜ」

女冒険者カトレアは張り切っている。

午前中は『花鳥風月』チーム加入を断念した戦士の手続きやガンテツへの報告でつぶれてしまった。
午後からの探索だ。
1階の右回廊も左回廊も一通り巡った。
今日は中央に進み、そのまま湖から階段を下りる。

「だけど『毒消し』が無いぜ」
「俺もだ」

「なにやっとんじゃ、お前ら」
ツッコんだのは斧戦士だ。

「予備くらい持っておくもんじゃ」
「いや~、しつこく売れって商人が言うからよ」
「通常の売値の3倍で買ってくれるって言うんだぜ」

「それルメイ商会だろ。
 俺んとこも来た。
 ミニスカートの女店員が来てよ、売ってくれって。
 あれは断れねーよな」

「男ってのはバカだねぇ。
 3倍の値段で売って、20倍の値段で買うのかい」

カトレアの言われても誰も言い返せない。
男ってどの時代もバカだよね。
斧戦士とカトレアが予備に持っていた『毒消し』一本ずつ有るだけだ。


カトレアは笑って見せる。

「ヒッヒッヒー、
 ところが借りてきたのが有るんだ」

「借りてきた~?
 何処から」

「アヤメちゃんから。
 組合とは仲良くしとくもんだよな」

組合の主任キキョウのアイディアだ。
『毒消し』は手に入れた。
だが50本しか無い。
販売すればすぐ無くなってしまう。
そこで信頼できる冒険者チームのリーダーに貸し出す。
『毒消し』は毎回必ず使うモノでは無い。
毒を受けた時だけだ。
チームで持っていれば全員分必要な訳でも無い。
リーダーが数本持っていれば大丈夫だ。

冒険者としては毒攻撃をいつ受けるか分からないから持っておきたい。
そこで探索に行く時組合から借りる。
迷宮探索から戻ってきたら返す。
使った分は適正価格で払う。
それで販売するよりは冒険者に行き渡る。

アヤメは言ったのだ。

「カトレアさんなら信用できます」

という訳でカトレアは張り切っているのである。

前衛 斧戦士、盾戦士
中央 コノハ、槍戦士
後衛 カトレア、魔術師
最後尾 タマモ
で地下二階まで一気に進む。

魔術師は革鎧を壊してしまった。
今日は予備の厚手の革ローブ。

「ニ階はアンデッドが多いからね。
 イヤなところだし、実入りも少ない。
 可能なら一気に通り抜けて、3階まで行くよ」

「だから焦り過ぎだって」

他の古参メンバーが言ってもその勢いは止まらない。





「うん。
 “大型蟻”が出てきたらハチ子、ハチ美が倒す。
 “殺人蜂”が出てきたらケロ子と僕が相手する。
 もちろん敵の数が多かったらお互いフォローする。
 これで行こう」

ショウマの決定だ。
文句を言う者はいない。

「あれ、みみっくちゃんの名前が無いですよ。ご主人様、ついにみみっくちゃんの事目に入らなくなりましたか。そうですか……」


出発の支度をしながらハチ子は疑問を口に出す。

「王の決定に異論はないが、しかし飛翔できる我らが“殺人蜂”を相手する方が適任というモノではないのか?」
「適任じゃないでしょうか?」

「ご主人様、多分気を使ってるですよ。みみっくちゃん意味の無い気遣いだと思うですよ。
 朝もご主人様に言ったです。人間も人間同士争うし殺人もするです。“殺人蜂”同士だって戦うですよ……」
「うん、そうだねっ。
 人間同士も戦うね」

みみっくちゃんに同意をしつつもケロ子は言葉を続ける。

「でもね、みみっくちゃん」

「人間同士は争ったら、人間を殺してしまったら、後でとってもイヤな気持ちになるんだよ。
 ショウマさまは私たちにそんな気持ち。
 イヤな気持ちになって欲しくない。
 そう考えてるんだと思うよ」


休憩を終えたショウマが歩き出す。
慌てて走り出すケロ子とみみっくちゃん。
それに遅れないよう付いていくハチ子、ハチ美。
従魔の少女たちは彼に付き従って歩き出す。
彼と一緒に進んでいくのだ。
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