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第一章 ハジマリの地下迷宮
第53話 地下迷宮五日目その3
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ブゥーーンウーーンブゥーン
何かの音が聞こえる。
獣の唸り声の様でも有るし、ショウマには機械音のようにも聞こえる。
「なにこれ、
鈴鹿サーキット?」
そう、確かにレースのモーター音にも聞こえる。
だがそれは上から聞こえていた。
上空を見上げるショウマ。
彼の視界に現れたのは宙を舞う六本の肢、透明な羽、胴体は黒をベースに黄色い毛が生えている。
「みみっくちゃん知ってます。“殺人蜂”です。“殺人蜂”と“皇帝蜂”がいるです」
「ヤバイじゃん。
あのサイズのハチに刺されたら死んじゃうじゃん。
ああ、だから“殺人蜂”か」
「ショウマさまっ。
ケロ子、跳びますっ」
「待って待って」
ジャンプしようとするケロ子を止める。
見ていると“殺人蜂”は通り過ぎていきそうなのだ。
「行っちゃいましたねっ」
「みみっくちゃん達に気付いてなかったんですね」
ブゥーーンウーーン
また同じ羽音がする。
ショウマ達から離れた方角へ飛んでいく“殺人蜂”だ。
「同じ方向へ行きましたっ」
「あっちに巣が有るのかな?」
“殺人蜂”の後をついていくショウマ。
ハチの巣の近くに下層への階段が有るとか、ありがちじゃんと思ってる。
「そういえばみみっくちゃん。
蟻は“大型働き蟻”と“大型兵隊蟻”がいるんでしょ。
蜂には無いの?」
「はい。研究家によると蜂の中には兵隊蟻に似たような立場のオス蜂がいるんです。でもこいつ巣を守って戦ったりしないです。エサ集めも巣を守って戦うのも、普通の蜂にまかせて、女王蜂と交尾するだけが仕事というサイテーのオスです。
どうですか? ご主人様。親近感が湧くんじゃないですか。
アリに関しても働きアリがエサを集めて兵隊アリが戦う役目と言われてましたが、最近の研究だと兵隊アリもオス蜂と同じく何もしてないで働きアリが全部やってて、兵隊アリと言われていたオスは女王アリと交尾するだけが仕事と言う種類のアリもいるみたいですよ……」
「ハチさんとアリさんが戦ってますっ」
「昆虫大戦争?」
「魔獣じゃなくても昆虫のアリとハチはナワバリ争いを起こしますね。アリ同士、ハチ同士の争いの方が圧倒的に多いですが、蜂の巣をアリが襲う事もあるようですよ」
“殺人蜂”の向かう先は巣では無かった。
ハチとアリの争いの場であった。
大量の“殺人蜂”と“大型蟻”が戦っている。
ショウマの見たところ、若干アリの方が優勢だ。
一対一なら上空を舞い針で攻撃できるハチの方が有利だろう。
しかしアリの方が圧倒的に数が多い。
一体のハチに3体以上のアリが攻撃しているのだ。
上空から攻撃するハチを後ろから別のアリが組み付き地上に引き下ろしている。
引き下ろされたハチに四方から噛みつくアリたち。
中には身体が大きく、牙が迫り出したアリが混じっている。
あれが“大型兵隊蟻”だろうか。
ハチは次々とやられていく。
もちろんやられてばかりでは無い。
アリも蜂によって首をもぎ取られるモノ、針で撃たれ即座に動けなくなるモノもいる。
動けなくなるハチ、アリが多くなるとやはり最後には数の差がモノを言う。
徐々に飛び回るハチは少なくなっていく。
すでに数えるほどしかいない。
アリの方はまだ軍勢と呼べる数がいるのだ。
ハチたちは地面に落ち、腹を食い破られ羽をもぎ取られた無残な姿だ。
「うーん、残酷。
ナショナルジオグラフィック?
時に大自然は残酷だ、みたいな」
「少しハチさんが可哀そうですっ」
「お姉さま。今回は多勢に無勢で“大型蟻”が勝ちましたが、そんな事ばかりでは有りません。蜂が寄ってたかって蟻の巣を潰す事も有るんです」
ショウマ達は目の前で繰り広げられる戦争に気を取られていた。
“大型兵隊蟻”の触覚がショウマたちを指して反応しているのに気付かない。
「アレ?」
「ショウマさまっ、囲まれてます」
いつの間に回り込んだのか。
昆虫大戦争を観察していたショウマ一行の後ろに複数の“大型働き蟻”が近付いてきている。
正面からは“大型兵隊蟻”を中心とした軍隊だ。
もちろんショウマは慌てない。
「こなくていーよ」
『氷の嵐』
『荒れ狂う颱風(たいふう)』
範囲攻撃の連発。
火属性を使わなかったのは辺りが草原だからだ。
植物に燃え広がったら自爆になりかねない。
もう“屍食鬼”の隠れ家で自爆は経験している。
ショウマだってほんの少しは成長する。
『荒れ狂う颱風』は風属性 ランク4の魔法だ。
正面の“大型兵隊蟻”は突風にまかれ吹き飛ばされていく。
一瞬でほとんどを駆逐する。
『氷の嵐』は水属性 ランク2の魔法だ。
後方の“大型働き蟻”は足元が凍り付き動けなくなっている。
まだ倒れてはいないようだ。
「もう一発」
『氷の嵐』
『LVが上がった』
『ケロコは冒険者LVがLV9からLV10になった』
『ミミックチャンは冒険者LVがLV6からLV7になった』
どうやら駆逐しきったようである。
「なんだか魔法の効果が弱い気がするなぁ。
階が下がった分、魔獣の体力が上がってるのかな」
そういえばステータスに魔法防御の項目も有った。
昆虫型魔獣は魔法防御が強いのかもしれない。
何かの音が聞こえる。
獣の唸り声の様でも有るし、ショウマには機械音のようにも聞こえる。
「なにこれ、
鈴鹿サーキット?」
そう、確かにレースのモーター音にも聞こえる。
だがそれは上から聞こえていた。
上空を見上げるショウマ。
彼の視界に現れたのは宙を舞う六本の肢、透明な羽、胴体は黒をベースに黄色い毛が生えている。
「みみっくちゃん知ってます。“殺人蜂”です。“殺人蜂”と“皇帝蜂”がいるです」
「ヤバイじゃん。
あのサイズのハチに刺されたら死んじゃうじゃん。
ああ、だから“殺人蜂”か」
「ショウマさまっ。
ケロ子、跳びますっ」
「待って待って」
ジャンプしようとするケロ子を止める。
見ていると“殺人蜂”は通り過ぎていきそうなのだ。
「行っちゃいましたねっ」
「みみっくちゃん達に気付いてなかったんですね」
ブゥーーンウーーン
また同じ羽音がする。
ショウマ達から離れた方角へ飛んでいく“殺人蜂”だ。
「同じ方向へ行きましたっ」
「あっちに巣が有るのかな?」
“殺人蜂”の後をついていくショウマ。
ハチの巣の近くに下層への階段が有るとか、ありがちじゃんと思ってる。
「そういえばみみっくちゃん。
蟻は“大型働き蟻”と“大型兵隊蟻”がいるんでしょ。
蜂には無いの?」
「はい。研究家によると蜂の中には兵隊蟻に似たような立場のオス蜂がいるんです。でもこいつ巣を守って戦ったりしないです。エサ集めも巣を守って戦うのも、普通の蜂にまかせて、女王蜂と交尾するだけが仕事というサイテーのオスです。
どうですか? ご主人様。親近感が湧くんじゃないですか。
アリに関しても働きアリがエサを集めて兵隊アリが戦う役目と言われてましたが、最近の研究だと兵隊アリもオス蜂と同じく何もしてないで働きアリが全部やってて、兵隊アリと言われていたオスは女王アリと交尾するだけが仕事と言う種類のアリもいるみたいですよ……」
「ハチさんとアリさんが戦ってますっ」
「昆虫大戦争?」
「魔獣じゃなくても昆虫のアリとハチはナワバリ争いを起こしますね。アリ同士、ハチ同士の争いの方が圧倒的に多いですが、蜂の巣をアリが襲う事もあるようですよ」
“殺人蜂”の向かう先は巣では無かった。
ハチとアリの争いの場であった。
大量の“殺人蜂”と“大型蟻”が戦っている。
ショウマの見たところ、若干アリの方が優勢だ。
一対一なら上空を舞い針で攻撃できるハチの方が有利だろう。
しかしアリの方が圧倒的に数が多い。
一体のハチに3体以上のアリが攻撃しているのだ。
上空から攻撃するハチを後ろから別のアリが組み付き地上に引き下ろしている。
引き下ろされたハチに四方から噛みつくアリたち。
中には身体が大きく、牙が迫り出したアリが混じっている。
あれが“大型兵隊蟻”だろうか。
ハチは次々とやられていく。
もちろんやられてばかりでは無い。
アリも蜂によって首をもぎ取られるモノ、針で撃たれ即座に動けなくなるモノもいる。
動けなくなるハチ、アリが多くなるとやはり最後には数の差がモノを言う。
徐々に飛び回るハチは少なくなっていく。
すでに数えるほどしかいない。
アリの方はまだ軍勢と呼べる数がいるのだ。
ハチたちは地面に落ち、腹を食い破られ羽をもぎ取られた無残な姿だ。
「うーん、残酷。
ナショナルジオグラフィック?
時に大自然は残酷だ、みたいな」
「少しハチさんが可哀そうですっ」
「お姉さま。今回は多勢に無勢で“大型蟻”が勝ちましたが、そんな事ばかりでは有りません。蜂が寄ってたかって蟻の巣を潰す事も有るんです」
ショウマ達は目の前で繰り広げられる戦争に気を取られていた。
“大型兵隊蟻”の触覚がショウマたちを指して反応しているのに気付かない。
「アレ?」
「ショウマさまっ、囲まれてます」
いつの間に回り込んだのか。
昆虫大戦争を観察していたショウマ一行の後ろに複数の“大型働き蟻”が近付いてきている。
正面からは“大型兵隊蟻”を中心とした軍隊だ。
もちろんショウマは慌てない。
「こなくていーよ」
『氷の嵐』
『荒れ狂う颱風(たいふう)』
範囲攻撃の連発。
火属性を使わなかったのは辺りが草原だからだ。
植物に燃え広がったら自爆になりかねない。
もう“屍食鬼”の隠れ家で自爆は経験している。
ショウマだってほんの少しは成長する。
『荒れ狂う颱風』は風属性 ランク4の魔法だ。
正面の“大型兵隊蟻”は突風にまかれ吹き飛ばされていく。
一瞬でほとんどを駆逐する。
『氷の嵐』は水属性 ランク2の魔法だ。
後方の“大型働き蟻”は足元が凍り付き動けなくなっている。
まだ倒れてはいないようだ。
「もう一発」
『氷の嵐』
『LVが上がった』
『ケロコは冒険者LVがLV9からLV10になった』
『ミミックチャンは冒険者LVがLV6からLV7になった』
どうやら駆逐しきったようである。
「なんだか魔法の効果が弱い気がするなぁ。
階が下がった分、魔獣の体力が上がってるのかな」
そういえばステータスに魔法防御の項目も有った。
昆虫型魔獣は魔法防御が強いのかもしれない。
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