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第一章 ハジマリの地下迷宮

第43話 出会う従魔師その2

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従魔師コノハは街を散歩していた。
従魔のタマモも一緒だ。
午後の予定が無くなったのだ。

彼女は冒険者チーム『花鳥風月』に加入試験中だ。
今日は一日迷宮探索の予定だった。
午後の探索は中止になった。
魔術師が治療院に行っているからだ。
あの大きいフクロウ。
何とか倒したけれどみんな疲れ切っていた。

コノハと一緒に入った剣戦士。
彼は泣いていた。
「もうやめる、冒険者なんか出来ない。
 俺はやめる。
 こんなの死んじまう」

気持ちは分かる。
コノハもあれが1階に出てくる魔獣で、下層にはさらに強いのがウヨウヨいると言われたらやめたくなる。
でもあれは例外だったらしい。

一緒に戦ったチーム『花鳥風月』は地下迷宮でもトップクラス。
4階まで行っている猛者だ。
それでも苦戦する敵だったのだ。

結果的に死人は一人も出なかった。
魔術師も治療院には行ってるが、明日は戦線復帰するらしい。

だったらいいではないか。
冒険者なんだから死を覚悟するのは当たり前だ。
新入り戦士の覚悟が甘いのだと思う。

明日また迷宮前に集合だ。
カトレアさんは新入り戦士に言っていた。
「明日まで考えな。
 明日また辞めると言うなら止めないよ」

さて昼ご飯をどうしよう。
カトレアさんにご飯処を訊こうかと思ったが、彼女は魔術師に付き添って治療院に行ってしまった。
昼ごはんを探しに出たのだけど、タマモも連れて入れる店があるだろうか。
コノハとタマモは街の大通りを歩いている。

迷宮都市は相当に大きな街だ。
コノハが以前住んでいた村とは大違い。
しかしその村の近くにも大きな街は有る。
その街の名はベオグレイド。
あまり良い思い出は無い。
見た目は非常に奇麗で新しい街だった。

それに比べると迷宮都市は……
汚いと言ってしまうと悪口になってしまう。
なんというか、ガヤガヤと活気が有るのだ。

大通りは賑やかでキレイな店が多い。
でもすぐ脇には屋台も有れば、小さなお店も立ち並ぶ。

歩いている人も身なりが良い人間もいれば、ボロイ鎧を纏った戦士もいる。

更には亜人も多い。
背に鳥のような羽根を見せびらかしている女性。
爬虫類風の肌をした戦士。

コノハは亜人を見て驚きはしない。
街に普通に受け入れられているコトは少し驚きだ。

実は……コノハだって亜人なのだ。
犬のような尻尾が有る。
マントに隠しているので見た目には気付かれない。
フッとした時に耳が伸びてしまったりもするのだ。
今のところ隠しているけど。
この街でなら……


「亜人を連れて来るな、
 人間様専用?
 そんなコト何処に書いてあるの?」

そんな声が聞こえてビクっとする。
見ると大声を出しているのは小柄な少年だった。
大きなお店。
お店の人間と対峙している少年の後ろには二人の少女が居る。
亜人の少女だ。
両生類系の亜人に見える娘と何だろう不思議な雰囲気の娘、良く分からないけど亜人の混血だと思う。
少年は大声を出している。
戦っているのだ。
彼は少女たちを守るために戦っているのだ。
そう思った。



「最悪だよ!
 あの店どうしてやろう。
 ルメイ商会だっけ。
 お客様センターの番号教えてよ。
 毎日クレームの電話入れるよ。
 名前変えて、毎日10回は電話するよ」

「ショウマさまっ、怒らないでいいですっ。
 ケロ子は気にしてないですっ」
「大丈夫、ケロ子。
 ちゃんと最初の店員の名札は見たんだ。
 名指しでクレーム入れるよ。
 問題は店長だな。
 あいつ名札付けてなかった。
 でもいーや。
 店長に暴言吐かれたで毎日クレーム入れよう」

「うーん亜人差別ですか。みみっくちゃんの知る限り迷宮都市ではあまり聞いた事ないんですけどね。帝国では亜人は生き辛いとは聞きますけど……」
「そうルメイ商会は帝国が本拠地なの。
 従業員も帝国出身の人が多いんです」

みみっくちゃんの言葉に返してきたのはショウマ達が見知らぬ女性だ。
後ろに大きい狐を連れている女性。

「ごめんなさい。
 えへへへ。
 わたしコノハと言います。
 こっちの狐は従魔だから怖がらないで」

「従魔!?」
「狐! 
 そっかこれが普通の従魔なんだ」

「えーとコノハさん?
 何か用ですかっ」
「防具を探してるみたいだったから、
 えへへー。
 わたしも防具を探してるの。
 大通りに有るのはお金持ちの人用なの。
 その道を左に行った方に武具屋さんが集まってるんだって、
 一緒に行かないですか?」
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