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第一章 ハジマリの地下迷宮

第27話 屍食鬼の罠その4

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ショウマは宙を運ばれている。

『舞い踊る業火』
アンデッドの多数いる部屋で慌てて唱えてしまった。
まだ試していない魔法も多い。
どうせなら『吹きすさぶ風』も試したかった。
立ち昇る炎を見ながらそんな事を考える。
その直後、ショウマの視界が暗くなった。

何かかぶせられたのだ。
そのまま身動き取れない状態で運ばれている。
魔法を使おうかとも思うが、周りが分からない。
もし近くにケロ子が居たら?
フレンドリーファイアは御免だ。





ケロ子は走る。

何処かにショウマの姿は無いか。
何処かにショウマの臭いは無いか。

従魔の少女は主を求めて疾走する。
“歩く骸骨”に遭遇する。
手甲を着けた腕を前に構え体当たりをかます。
すでに何体の“歩く骸骨”を葬っただろう。

『LVが上がった』
『ケロコは冒険者LVがLV6からLV7になった』

そんな声も耳に入らない。






「よし今日はここまでだ」

地下迷宮入り口の広間にカトレアたちは戻ってきていた。
左の回廊を一周したのだ。
戦果は
“飛び廻るコイン”×9
“狂暴鼠”×4
“歩く骸骨”×2

ドロップコインは45G。
『ネズミの歯』が買い取ってもらえるが、20Gにしかならない。
合わせて65G。
普段のカトレア達の戦果を考えると微々たるものだが、無いよりはマシだ。
新入りの戦士はLV1からLV2に上がっている。

「明日は朝から右の回廊に行くよ。
 できれば午後は2階に行きたいからね。
 薬草と回復薬をたんまり持ってきな」

「だから焦りすぎだって」
「左回廊の適正LVは1~5、
 右回廊はLV3~8、
 2階はLV10からって言うだろ。
 新入りはLV2。
 コノハちゃんだってLV3だぜ」

「そりゃメンバー全員が同じLVだったらだろ。
 新入り以外はみんなLV30前後だ」
「そうだけどよ。
 まだ役割だってハッキリしてないぜ」

「イチイチ細かいね。
 いいから薬草持ってくりゃいいんだよ」
「ヒデェ」

メンバーが分かれる。
飲みに行くもの、雑貨屋に行くもの、とっととねぐらに帰るものさまざまだ。

新入りの剣戦士は魔術師に誘われて飲みに行くらしい。

「コノハちゃんも行こうぜ。
 親睦会」
「すいません。
 私はタマモがいるので。
 えへへ」

従魔師は“妖狐”を連れてそそくさと帰っていく。
飲みに行くなら魔術師のナンパから守ってやらにゃと思ったが必要なさそうだ。
カトレアは組合に行く事にする。
『ネズミの歯』の換金だ。
ついでにアヤメに挨拶しておこう。


 


………………
屍食鬼グール”は彼らの隠れ家へ辿り着く。
隠し通路を使わなければ辿り着けない場所。
ニンゲンが訪れる事は無い。

担いでいた袋を下し、そこで間違えたことに気付く。
メスじゃない。
臭いが違う。

ガイコツ達のたまり場にニンゲンを導いた。
カギを置いておけばバカなニンゲンはかなりの確率で引っかかる。
バカなニンゲンはガイコツと戦って殺される。
後は死んだニンゲンをのろまなガイコツたちの目を逃れて喰らうだけだ。

今回はメスが居た。
だからニンゲンとガイコツが争っているうちにメスだけ攫う。
皮袋に閉じ込め担いで逃げる。
ハズだった。
ニンゲンとガイコツが争う瞬間恐ろしい炎が上がったのだ。
“屍食鬼”は火を使わない。
アレは恐ろしいモノだ。
慌てて手近なニンゲンを袋に詰めて担いだ。
取り違えたのだ。

「グッ!グッ!グッ」
メスじゃない。
今から再度ガイコツのたまり場に行く?
ムダだ。
今から行ってもニンゲンのメスは死んでいる。
後で死肉を食いに行く。

今はこのオスを殺す。
生肉を喰らう。
2,3日置いて腐りかけの肉を喰らう。
屍食鬼グール”は腐りかけの肉の味を思い浮かべる。


「ケロ子~、
 近くにいるー?。
 いたら返事をして」

「いないね?
 大きいの行くからちゃんと避けてね」
 
ニンゲンが何か言ってるが気にしない。
捕えたニンゲンはだいたい騒ぎ立てるモノだ。
棍棒を振り上げる。
袋に叩きつけるのだ。

屍食鬼グール”は人間の言葉が分からない。
だから次のショウマの言葉も分からない。
それはこう言っていた。


『炎の乱舞』

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