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第一章 ハジマリの地下迷宮
第26話 屍食鬼の罠その3
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従魔ケロ子は扉の外に出て主の名を呼ぶ。
アンデッドが大量に居た広間にまた入って、室内を走りながら叫ぶ。
「ショウマさまっ。
何処ですかーっ」
「ショウマさまっ、ショウマさまっ」
居ない。
ショウマが居ないのだ。
室内にはアンデッドが落とした骨や武具が転がっている。
先ほどの骸骨の中に“骸骨戦士”や“骸骨弓戦士”も混じっていたのだろう。
汚れた弓や剣、鎧も有る。
宝箱まで有る。
それらをひっくり返してみるがもちろんショウマは居ない。
ケロ子は『賢者の杖』を拾い上げしっかり抱きしめる。
「ショウマさまっ」
「ショウマさま ショウマさま ショウマさま」
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
ケロ子が探してもショウマが見つからない。
ショウマさまの目がケロ子を見ていない。
ケロ子は産まれた時からショウマと一緒にいた。
一人になるのは今初めてなのだ。
「ホネー!」
「うわ! 人骨じゃないか」
慌てているのは従魔師コノハと新入り剣戦士。
“歩く骸骨”に襲われたのだ。
ニ階に多数出没する代表的なアンデッドだが、一階にも姿を現す。
「慌てなさんな。
一体しか居なければ大した敵じゃない」
『花鳥風月』の古参メンバーは余裕の表情だ。
「そ……そうなのか」
新人戦士が剣を突き出す、が骨のすき間をすり抜け当らない。
「ああ、剣で攻撃するなら大振りした方がいいよ。
こいつら刺されるより、打撃に弱いんだ」
「ただし気をつけろよ。
動きが鈍いからって甘く見るな。
下手にアンデッドの攻撃を喰らうとアンデッド化するって言うぜ」
「心配するな。
アンデッドになったらウチがキッチリ倒してやるよ」
新人は口々に言われ戸惑っている。
「あ!
タマモ!」
コノハが命じてもいないうちに“妖狐”が“歩く骸骨”に突撃する。
頭からの体当たりだ。
“妖狐”にヘッドバットを喰らった“歩く骸骨”が一撃で崩れ落ちる。
「それだ。体当たりが一番効くんだ」
「分かっちゃいるが、ガイコツに体当たりするヤツぁいねーよ」
「さすが従魔だな」
「えへへー。
よくやりました、タマモ」
“妖狐”の頭を撫でるコノハ。
そんな従魔師と従魔を見ながらカトレアは思う。
自分で判断して敵を攻撃する。
体格から想像される通り攻撃力も有る。
なにより敵をマヒさせる特殊能力。
人間の冒険者には出来ない芸当だ。
「確かにこいつは金の卵かもしれないね」
「ショウマさまショウマさま」
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウママさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
ケロ子はショウマを探している。
必死に探し廻っている。
彼女がこの世界に生まれた瞬間、目の前に居たのがショウマだった。
彼女を見つめる瞳を見た瞬間分かった。
目の前にいる人がケロ子を生み出してくれたのだと。
目の前にいる人の心が、優しさが、愛が彼女に注がれていたのだ。
それらからケロ子は産まれたのだ。
そしてケロ子という名前を貰った。
ケロ子がケロ子になる前。
うっすらと覚えている。
彼女は冷たい水の中にいた。
モノクロの世界。
近くには同類もいっぱいいた。
でも家族じゃない。
仲間でも無い。
近くにいるだけの競争相手だ。
恐ろしい大きいヤツが居た。
そんな記憶だ。
ぼんやりとした夢の中のようなうす暗い記憶だ。
もう忘れた。
そこから色の付く世界に生まれ変わったのだ。
ショウマさまのおかげで。
そこからのケロ子が本当のケロ子だ。
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
落ち着け!
ケロ子はショウマさまの従魔だ。
主を守るのが従魔の役目だ。
探すんだ!ショウマさまを!
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
ケロ子は室内を見て廻る。
落ちている武具の中から手甲を見つけ腕にはめる。
金属製の手首の上から肘までをガードする防具だ。
『賢者の杖』を懐にしまう。
杖に着いたショウマの臭いを確認する。
目を見開け!
耳をすませ!
ニオイを嗅げ!
探せ!ショウマさまを!
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
室内にはこれ以上手掛かりは無い。
ケロ子は扉から通路に出る。
歩く足を速める。
従魔の少女はチアガールの服装に手甲を着けて走り出す。
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
見つけろ!アタシの目!
駆けめぐれ!アタシの足!
探せ!ショウマさまを!
目の前に動くものがいる。
ショウマさまではない。
ガイコツだ。
何故アタシとショウマさまのジャマをする?
金属の手甲を付けた腕を前に構える。
そのまま少女は突進する。
「ジャマをするなーっ!!」
アンデッドが大量に居た広間にまた入って、室内を走りながら叫ぶ。
「ショウマさまっ。
何処ですかーっ」
「ショウマさまっ、ショウマさまっ」
居ない。
ショウマが居ないのだ。
室内にはアンデッドが落とした骨や武具が転がっている。
先ほどの骸骨の中に“骸骨戦士”や“骸骨弓戦士”も混じっていたのだろう。
汚れた弓や剣、鎧も有る。
宝箱まで有る。
それらをひっくり返してみるがもちろんショウマは居ない。
ケロ子は『賢者の杖』を拾い上げしっかり抱きしめる。
「ショウマさまっ」
「ショウマさま ショウマさま ショウマさま」
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
ケロ子が探してもショウマが見つからない。
ショウマさまの目がケロ子を見ていない。
ケロ子は産まれた時からショウマと一緒にいた。
一人になるのは今初めてなのだ。
「ホネー!」
「うわ! 人骨じゃないか」
慌てているのは従魔師コノハと新入り剣戦士。
“歩く骸骨”に襲われたのだ。
ニ階に多数出没する代表的なアンデッドだが、一階にも姿を現す。
「慌てなさんな。
一体しか居なければ大した敵じゃない」
『花鳥風月』の古参メンバーは余裕の表情だ。
「そ……そうなのか」
新人戦士が剣を突き出す、が骨のすき間をすり抜け当らない。
「ああ、剣で攻撃するなら大振りした方がいいよ。
こいつら刺されるより、打撃に弱いんだ」
「ただし気をつけろよ。
動きが鈍いからって甘く見るな。
下手にアンデッドの攻撃を喰らうとアンデッド化するって言うぜ」
「心配するな。
アンデッドになったらウチがキッチリ倒してやるよ」
新人は口々に言われ戸惑っている。
「あ!
タマモ!」
コノハが命じてもいないうちに“妖狐”が“歩く骸骨”に突撃する。
頭からの体当たりだ。
“妖狐”にヘッドバットを喰らった“歩く骸骨”が一撃で崩れ落ちる。
「それだ。体当たりが一番効くんだ」
「分かっちゃいるが、ガイコツに体当たりするヤツぁいねーよ」
「さすが従魔だな」
「えへへー。
よくやりました、タマモ」
“妖狐”の頭を撫でるコノハ。
そんな従魔師と従魔を見ながらカトレアは思う。
自分で判断して敵を攻撃する。
体格から想像される通り攻撃力も有る。
なにより敵をマヒさせる特殊能力。
人間の冒険者には出来ない芸当だ。
「確かにこいつは金の卵かもしれないね」
「ショウマさまショウマさま」
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウママさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
ケロ子はショウマを探している。
必死に探し廻っている。
彼女がこの世界に生まれた瞬間、目の前に居たのがショウマだった。
彼女を見つめる瞳を見た瞬間分かった。
目の前にいる人がケロ子を生み出してくれたのだと。
目の前にいる人の心が、優しさが、愛が彼女に注がれていたのだ。
それらからケロ子は産まれたのだ。
そしてケロ子という名前を貰った。
ケロ子がケロ子になる前。
うっすらと覚えている。
彼女は冷たい水の中にいた。
モノクロの世界。
近くには同類もいっぱいいた。
でも家族じゃない。
仲間でも無い。
近くにいるだけの競争相手だ。
恐ろしい大きいヤツが居た。
そんな記憶だ。
ぼんやりとした夢の中のようなうす暗い記憶だ。
もう忘れた。
そこから色の付く世界に生まれ変わったのだ。
ショウマさまのおかげで。
そこからのケロ子が本当のケロ子だ。
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
落ち着け!
ケロ子はショウマさまの従魔だ。
主を守るのが従魔の役目だ。
探すんだ!ショウマさまを!
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
ケロ子は室内を見て廻る。
落ちている武具の中から手甲を見つけ腕にはめる。
金属製の手首の上から肘までをガードする防具だ。
『賢者の杖』を懐にしまう。
杖に着いたショウマの臭いを確認する。
目を見開け!
耳をすませ!
ニオイを嗅げ!
探せ!ショウマさまを!
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
室内にはこれ以上手掛かりは無い。
ケロ子は扉から通路に出る。
歩く足を速める。
従魔の少女はチアガールの服装に手甲を着けて走り出す。
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
見つけろ!アタシの目!
駆けめぐれ!アタシの足!
探せ!ショウマさまを!
目の前に動くものがいる。
ショウマさまではない。
ガイコツだ。
何故アタシとショウマさまのジャマをする?
金属の手甲を付けた腕を前に構える。
そのまま少女は突進する。
「ジャマをするなーっ!!」
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