10 / 289
第一章 ハジマリの地下迷宮
第10話 少女の名はその2
しおりを挟む
『氷の嵐』
ショウマに飛んで来た毒水が凍って、地面に落ちていく。
「これも範囲攻撃だね。
威力は『氷撃』と同じくらいかな」
“巨大猛毒蟇蛙”は涙目である。
逃げようとするが、下半身が凍りついている。
「まだ試せそうだね。
じゃ、本命行くよ」
名前的にヤバそうな魔法がまだ残っている。
ショウマはそれを試すつもりなのだ。
『絶対零度』
ショウマの耳から音が消える。
先ほどまで巨大カエルが暴れる音、足元の氷が割れる音が五月蝿かったのだ。
今周囲には一切の音が無い。
“巨大猛毒蟇蛙”は氷像になっていた。
「うわ!
さっぽろ雪まつり」
巨大なカエルの氷像が崩れだす。
無数の氷の結晶が周囲に舞い落ちる。
「寒っ。
もしかしてもっと離れて使うべきだった?」
後には何も残っていない。
ショウマは辺りを見回す。
「範囲攻撃だったが、単騎攻撃だったか、良く分からないな~」
「ケロッ……」
「うん?」
見るとカエルが倒れている。
“毒蛙”だ。
“巨大”ではない。
仰向けに倒れ弱々しくもがいている
今にも死にそうに見える。
「……ケロッ……」
「先刻の『絶対零度』受けたんなら死んでるよね。
ならその前の範囲攻撃の巻き添えを食ったんだな」
ショウマはカエルを放置していこうとする。
今日はたくさん魔法を試した。
これ以上やるのはオーバーワークというモノだ。
『LVが上がった』
『ショウマは冒険者LVがLV5からLV12になった』
「ええっ、7LVアップ? 経験値大きかったんだ」
ショウマは知らない。
この世界の従魔能力発動には条件が有ると言われている。
その条件は二つ。
従魔師のレベルがそのモンスターのレベルを上回る事。
魔獣の体力を大きく削る、およそ10分の1以下にする事。
ショウマは知らない。
無数の冒険者の努力、永年の研究者の叡智で創られた記録によると“毒蛙”の魔獣レベルは5。
そして目の前の“毒蛙”は瀕死の状態になっていた。
「えっ?!」
ショウマに何かが語りかけたような気がした。
「……主さま、助けて……」
小さな声、いや本当に音が聞こえたわけではない。
心に語り掛けられた、そんな気がした。
カエルが仰向けになってもがいている。
「……ケロ……」
「今のって?」
ショウマはカエルを見つめる。
さっきも思った事を口に出す。
「カエルって内側から見ると意外とスベスベしててキレイだよね」
『“毒蛙”を仲間にしますか?』
突然機械的な声が鳴り響く。
「えっ。これ、もしかして?」
「えーっ? でもどうしよう。
最初の仲間がカエル?
最初はやっぱりオオカミとかネコじゃないの」
「……ケロ……」
カエルのもがきが弱くなっている。
先ほどまでバタバタしていた足の動きが遅い。
「うわ、仲間にする仲間にするよ~。
どうすればいいの?」
心の中に呪文が浮かび上がる。
いままでは浮かんだことの無い呪文。
『我に従え、獣よ』
ショウマは目を見開いていた。
この瞬間を見逃したくない。
目の前にいる倒れたモンスターの身体が青い光に包まれ、見えなくなる。
光が溢れて来る。
ショウマは眩しさに瞳の前に手をかざす。
と、それは起こった。
青い光の中に少女はいた。
輝く頬、長い睫毛、腰はくびれ胸は大きく丸みを帯びている。
健康そうな美少女であった。
「キタ!キタキタ! キィータァー!」
ショウマは心の中で叫び声を上げる。
少女はゆっくりと瞼を開ける。
ショウマの方を見て全開の笑みを浮かべる。
「主さまですか。はじめまして」
「あ、ああ。
はじめまして、ショウマです」
「ショウマ……さまですか。
ワタシ、ショウマさまの事が好きです。
ショウマさまの言う事なら何でもします」
「これだ!これこれ! こォーれェー!」
勢いあまって声に出して叫んでしまう。
「!」
少女は一瞬ビックリした顔をする。
ショウマが近づいて少女を抱きしめていたからだ。
「主さま……」
少女は光り輝くような笑顔になっている。
ショウマは抱きしめておいて、慌てて飛びのいて離れる。
「まずい?!
今の痴漢?
セクハラ?
事案発生?」
ショウマは少女の顔を窺がう。
怒った表情では無い。
きょとんとした顔だ。
なんで離れちゃったのかなぁ?という雰囲気。
首をかしげているのがカワイイ。
「ええと、ええと、キミは僕の従魔ってことでいいんだよね?」
「従魔? 多分そうなのかな。
そうだと思います」
「うん。じゃあ名前を教えてくれる?」
「ナマエ……名前、ドクガエルです?」
「それは種族名かな。僕はショウマ、君は?」
「?」
また少女は首をかしげる。
ナナメ45度の角度で首をかたむけて、頬に指を当てている。
背景に ? という文字が浮かんでそうだ。
カワイイ。
「これはアレかな。僕が名付けるとかいう仕組み?
どうしよう。何も考えてないよ。
ええと、綾波〇イ、禰〇子。
でもカエルに禰〇子ってどうなの?」
「?」
少女は首をかしげている。
ショウマはとりあえず提案する。
「ええと ケロ子 で…」
「……ど、どうかな?……なんて……」
「ハイっ。ワタシはケロ子ですっ」
少女は満面の笑みで応える。
やっぱ今の無し、キャンセルとか言える雰囲気では無い。
「あはははっ。じゃあ、そういう事でよろしくね」
「はいっ、ショウマさま。よろしくお願いします」
ショウマに飛んで来た毒水が凍って、地面に落ちていく。
「これも範囲攻撃だね。
威力は『氷撃』と同じくらいかな」
“巨大猛毒蟇蛙”は涙目である。
逃げようとするが、下半身が凍りついている。
「まだ試せそうだね。
じゃ、本命行くよ」
名前的にヤバそうな魔法がまだ残っている。
ショウマはそれを試すつもりなのだ。
『絶対零度』
ショウマの耳から音が消える。
先ほどまで巨大カエルが暴れる音、足元の氷が割れる音が五月蝿かったのだ。
今周囲には一切の音が無い。
“巨大猛毒蟇蛙”は氷像になっていた。
「うわ!
さっぽろ雪まつり」
巨大なカエルの氷像が崩れだす。
無数の氷の結晶が周囲に舞い落ちる。
「寒っ。
もしかしてもっと離れて使うべきだった?」
後には何も残っていない。
ショウマは辺りを見回す。
「範囲攻撃だったが、単騎攻撃だったか、良く分からないな~」
「ケロッ……」
「うん?」
見るとカエルが倒れている。
“毒蛙”だ。
“巨大”ではない。
仰向けに倒れ弱々しくもがいている
今にも死にそうに見える。
「……ケロッ……」
「先刻の『絶対零度』受けたんなら死んでるよね。
ならその前の範囲攻撃の巻き添えを食ったんだな」
ショウマはカエルを放置していこうとする。
今日はたくさん魔法を試した。
これ以上やるのはオーバーワークというモノだ。
『LVが上がった』
『ショウマは冒険者LVがLV5からLV12になった』
「ええっ、7LVアップ? 経験値大きかったんだ」
ショウマは知らない。
この世界の従魔能力発動には条件が有ると言われている。
その条件は二つ。
従魔師のレベルがそのモンスターのレベルを上回る事。
魔獣の体力を大きく削る、およそ10分の1以下にする事。
ショウマは知らない。
無数の冒険者の努力、永年の研究者の叡智で創られた記録によると“毒蛙”の魔獣レベルは5。
そして目の前の“毒蛙”は瀕死の状態になっていた。
「えっ?!」
ショウマに何かが語りかけたような気がした。
「……主さま、助けて……」
小さな声、いや本当に音が聞こえたわけではない。
心に語り掛けられた、そんな気がした。
カエルが仰向けになってもがいている。
「……ケロ……」
「今のって?」
ショウマはカエルを見つめる。
さっきも思った事を口に出す。
「カエルって内側から見ると意外とスベスベしててキレイだよね」
『“毒蛙”を仲間にしますか?』
突然機械的な声が鳴り響く。
「えっ。これ、もしかして?」
「えーっ? でもどうしよう。
最初の仲間がカエル?
最初はやっぱりオオカミとかネコじゃないの」
「……ケロ……」
カエルのもがきが弱くなっている。
先ほどまでバタバタしていた足の動きが遅い。
「うわ、仲間にする仲間にするよ~。
どうすればいいの?」
心の中に呪文が浮かび上がる。
いままでは浮かんだことの無い呪文。
『我に従え、獣よ』
ショウマは目を見開いていた。
この瞬間を見逃したくない。
目の前にいる倒れたモンスターの身体が青い光に包まれ、見えなくなる。
光が溢れて来る。
ショウマは眩しさに瞳の前に手をかざす。
と、それは起こった。
青い光の中に少女はいた。
輝く頬、長い睫毛、腰はくびれ胸は大きく丸みを帯びている。
健康そうな美少女であった。
「キタ!キタキタ! キィータァー!」
ショウマは心の中で叫び声を上げる。
少女はゆっくりと瞼を開ける。
ショウマの方を見て全開の笑みを浮かべる。
「主さまですか。はじめまして」
「あ、ああ。
はじめまして、ショウマです」
「ショウマ……さまですか。
ワタシ、ショウマさまの事が好きです。
ショウマさまの言う事なら何でもします」
「これだ!これこれ! こォーれェー!」
勢いあまって声に出して叫んでしまう。
「!」
少女は一瞬ビックリした顔をする。
ショウマが近づいて少女を抱きしめていたからだ。
「主さま……」
少女は光り輝くような笑顔になっている。
ショウマは抱きしめておいて、慌てて飛びのいて離れる。
「まずい?!
今の痴漢?
セクハラ?
事案発生?」
ショウマは少女の顔を窺がう。
怒った表情では無い。
きょとんとした顔だ。
なんで離れちゃったのかなぁ?という雰囲気。
首をかしげているのがカワイイ。
「ええと、ええと、キミは僕の従魔ってことでいいんだよね?」
「従魔? 多分そうなのかな。
そうだと思います」
「うん。じゃあ名前を教えてくれる?」
「ナマエ……名前、ドクガエルです?」
「それは種族名かな。僕はショウマ、君は?」
「?」
また少女は首をかしげる。
ナナメ45度の角度で首をかたむけて、頬に指を当てている。
背景に ? という文字が浮かんでそうだ。
カワイイ。
「これはアレかな。僕が名付けるとかいう仕組み?
どうしよう。何も考えてないよ。
ええと、綾波〇イ、禰〇子。
でもカエルに禰〇子ってどうなの?」
「?」
少女は首をかしげている。
ショウマはとりあえず提案する。
「ええと ケロ子 で…」
「……ど、どうかな?……なんて……」
「ハイっ。ワタシはケロ子ですっ」
少女は満面の笑みで応える。
やっぱ今の無し、キャンセルとか言える雰囲気では無い。
「あはははっ。じゃあ、そういう事でよろしくね」
「はいっ、ショウマさま。よろしくお願いします」
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる