ゾンビと魔法少女と外宇宙邪神と変身ヒーローと弩級ハッカー、あと俺。

Scene.EX05 死神と呼ばれた男と・・・

第189話

その頃、男は動き出していた。
危険な死神。

その右足は入れたばかりの義足。
普通の人間であればまだ立ち上がって自由に動く事すら難しい。
だが。
男は音も立てず動く。

警備員の詰め所。
ビルの裏側にあるその場所に音も立てず入り込む。
一人の後頭部にナイフを突き立てる。

「なっ！」

反応したもう一人の顔にナイフを投げつける。
刃物は眉間を貫いた。
脳まで届く。
一瞬で絶命した筈。

ビルの至る所を映し出す防犯カメラ。
アイツらは何処にいる。
このビルディングは20階建て。
最上階だろうか。
標的はこのビルの持ち主なのだ。

違う。
一つ下、19階に撮影スタジオの様な場所がある。
標的はそこにいた。

素早く死神は動く。
配電盤を壊す。
予備電力。
地下に非常用の発電機が存在している様だ。
配線を切っておく。
プロが見れば修理出来てしまうだろうが。
警備員程度では簡単には治せない。

自分を見かけた人間は即、命を奪う。
タダの通りすがりであろうが。
このタイミングでこの場所にいた。
自分の邪魔になった事が罪だ。
恨むなら罪を犯した己を恨め。

喉を掻き切り、心臓に刃物を突き刺す。
目から凶器を差し入れ、脳細胞を壊す。
最低限の動きで確実に生命を奪う。
やり損なって助けを求められる。
そんなマヌケな真似は有り得ない。

何故なら自分は五古河凌。
五古河の中でも危険な死神と呼ばれた男なのだ。

あの女は殺す。
七鮎川円花。

せっかく俺のモノにしてやろうと思っていたのに。
逆の様な出来損ないを護衛に着けるなど。
ジジィもカンが鈍ったか。
あの女は必ず、七鮎川の中でもトップに躍り出る才覚の持ち主。
今のうちに自分の女にして、五古河と七鮎川で協力体制を取る。
勿論、俺が主で七鮎川円花が従。

円花は能力だけでは無い。
女としてもまだ若いが美貌の持ち主。
俺のペットにしてやる。
そのつもりだった。

それが何故こうなっている。
現在の自分は右足を無くした。
複雑骨折、一生元には戻らない。
思い切って義足に取り換えた。
鍛えた身体能力でマトモには歩けるが。
五古河やプロの戦闘屋から比べれば分かってしまうだろう位に身体能力は落ちている。
既に五古河の中では劣る存在になってしまった。

何時の間にやら七鮎川円花は自分の見込んだ通り。
頭角を現した。
七鮎川どころか、六家でも代表的な存在になりかねない。
何故、自分がその横に居ない。
何故、逆などがその横に居るのだ。

これは間違っている。
間違いは正さねばいけない。