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Scene.EX04 女社長七鮎川円花と俺のいない世界

第185話

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わたしは待ち合わせをしていた少女達と逢う。

炎城寺由羅【えんじょうじゆら】
速見佐緒里【はやみさおり】
この春から中学に通う少女達。

「ここは貴方達の為に用意したフロアよ。
 自由に使って」

「えっ!」
「ええええ!!」
「ええええええええええええええええええ!!!」

二人が奇声を上げる。

ビルの1フロア。
撮影スタジオ風になっている。
カメラも何台か有るし、編集ルームも有る。
ちょっとしたセットも有るし、小道具も有るのだ。

「良いんですか?
 こんな編集機材にカメラ、一体幾らするんですか」
「凄いよ、佐緒里ちゃん。
 ビルの中なのに、公園が有る」

「屋外撮影用のセットね。
 あまり大きくないけど、こんなもんで勘弁してね」

「何言ってるんですか!
 広すぎます」

中学生相手にヤリスギと言う気もしないでも無いけれど。
彼女たちの動画で会社の収益は上がっている。
それを考えればこの位安いモノだ。

「本格的に貴方にはCM動画を造って貰いたいの」

七鮎川の中でもわたしの立ち上げたアパレルブランド。

「頑張ってね、佐緒里ちゃん」

ニコニコ笑う由羅ちゃん。
わたしは彼女にも言う。

「由羅ちゃんにもモデルを頼むわ」
「ええっ」

顔を引きつらせる中学生女子。

「はい、引き受けます」

佐緒里ちゃんが由羅ちゃんの分まで頷いている。

「えええええええ」

裏切られた由羅ちゃん。
また奇声を上げる。

佐緒里ちゃんが撮った魔法少女動画は信じられない位の再生数となった。
録画したのが小学生女子だという事も話題になった。
魔法少女三人がみんな美少女、男性は大量に食い付いた。
そのうちの一人である自分が言うのもどうかと思うけれど。
逆の格好良さに、由羅ちゃんの奇麗さに惹かれた女性だって少なからず出て来た。

その話題に便乗してわたしは逆のCM動画をアップさせた。
狙いは大当たり。
魔法少女?
謎の運動選手?
話題と共にわたしが指示した五古河の運動用品と七鮎川のアパレルブランドのコラボ商品は大ヒットとなった。
元々かなり品質の高いモノを手頃な価格で販売している。
その商品の良さは使えば分かるのだ。
連続して買うリピーターも増えた。

「逆にもモデル続けて欲しいところなんですけど。
 本人が絶対ヤだってワガママ言うの」

「ええーっ、逆さん」
「勿体ないです、やりましょうよ」

「イヤなこった。
 オレは目立たない様に行動する護衛役なんだ。
 むしろ円花がやれよ」

「そうですね、円花さんなら話題性ばっちりです」
「ハイ、どんな服でも似合います」

逆にファンが付くと同時に、わたしにも少なからずファンが付いてしまった。
わたしは魔法少女姿以外、動画になんて出ていない。
マスコミが七鮎川の高校生社長なんて記事で取り上げたの。
現在話題の魔法少女動画の青い魔法少女にそっくり!
そんな話も出てしまった。
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