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Scene27 魔術研究家シアカテルと俺の茶屋

第154話

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サイツォンがぐったりとしている。

「おいおい、もう勘弁してくれ」

別にカビの生えたホットサンドで腹を壊した訳では無い。
すでに『ワイルドビーティング』を何度も使っているのだ。

呪われた湖の水。
それを汲んで来たカップに普通に『ワイルドビーティング』を使ってみる。
シアカテルが協力し効能を調整して使ってみる。
ミクトランテクゥトの魔術と合わせて試してみる。

その度に魔力を使い果たすサイツォン。

「ワガママを言うな。
 俺が回復してやってるだろう」
「魔力は回復して貰ってるがな。
 やはり集中力ってのがいる。
 精神的な疲労は抜けねえんだよ」

「ならしばらく私が変わりましょう」

シアカテルが言う。
黒い肌の魔法使い。
申し訳程度の鎧で肉体の要所を隠す。
魅力的なバストの大部分は見せながら俺に近づく。

「『ワイルドビーティング』の魔法式は大体掴めました。
  私でも似たモノが使えます」

「ただし、この技はサイツォン自身の生命力、野獣の野生のエネルギーが根幹にあってこそ。
 サイツォンが使う程の効力は私には発揮できません」

そんなものか。
まぁサイツォンの野獣のパワーには誰もかなわんだろうな。
なにせ、八人の妻を毎日満足させていると言うのだ。

「誰もそんなコト言ってねぇ。
 毎日一人ずつ交替だよ。
 幾ら俺でも一晩じゃ四人までだな」

やはり猛獣だな。

俺は近づく半裸の美女の両肩に手を置く。
シアカテルの身体に漲るナニカ。

「ありがとうございます」

俺に頭を下げ、シアカテルは研究に戻る。

「ねえ、それって何なの?」

キャンディーが訊く。
すでにこの女はスペース刑事のスーツを脱いでる。
ミニスカサンタルックに戻ってホットサンドをパクついてるのだ。
茶店のイスに生足を組んでる姿はなかなか魅力的。
ヘルメット付きのスーツじゃサンドは食べられないからな。

「今の女の肩に手を置くヤツ。
 アナタ、さっきもそこのライオンマスクにしてたじゃない。
 何の儀式なの?」

サイツォンが勝手に答える。

「魔族でも特殊な一族の特技だよ、
 恐ろしいまでの魔力を体内で発生させそれを蓄えて置ける。
 普通の魔族、いや優秀な魔術師とでも比べ物にならねえ。
 それこそ普通の魔術師、千人分クラスの魔力を発生させ貯めておく事が出来るのさ。
 多分、現在のコイツはそこまでは出来ねえと思うがな。
 こっちの人間の身体じゃついていかねえだろう。
 それでも俺やシアカテルに魔力を分けるくらいは造作も無いようだな」
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