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Scene26 変身ヒロインキャンディーと俺の山道

第149話

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「何故ですか、何故こんな事を!」

俺の顔を見て、ミクトランテクゥトが言う。
被害者ぶった叫びを上げるが、訊きたいのは俺の方だ。

「ミクトランテクゥト、訊きたい事が有る」
「はい、何でしょう」

俺の目を見て死霊術師は居住まいを正す。
ゴーレムに羽交い絞めにされ泣き叫んでいたのだが、マジメぶった雰囲気に。

「キサマ、この世界に来て大量の魔導書を搔き集めたそうだな」
「いえ、それほどでも。
 その……
 見た事の無い魔導書が多数ここには有りまして。
 その知識を少しでも蓄えて置けば、
 きっと魔族の繁栄に役立つ筈と愚考致しまして」

ウソをつけ。
魔族の繁栄なんて考えるタマか。
魔導書コレクターの血が騒いだだけだろう。

「貴重な物も多かっただろう。
 騒ぎにならない様気を配ったのか。
 大変だったのではないか」
「ええ、最初ほんの少しの間はこの世界の常識が良く分からず、
 博物館等から盗みもしてしまいましたが、その後はシアカテルと相談の上考えましたぞ。
 貴重な魔導書だと言うのに自分達だけで秘匿しようとしてる腐った輩が多数おりましてな。
 そやつらに天誅を加えた上で我がこの魔導書を役に立てると言う事でございます」

イヤ、貴重な書を自分だけで独占しようとする。
腐った輩の筆頭はオマエだ。
俺は怒鳴りそうになるのを堪える。
そんな中にクトゥルフ神話の魔導書を所持していた危険な組織、怪しげな宗教団体、潜んでいた魔術団体等が有ったんだな。

「魔導書を試してみたりもしたのだろう」
「それはもう。
 知らない魔導書を見分するのは危険も有る作業ですが、
 その為にこそ、我は自分をアンデッドと化したような物です。
 手に入れたハジから確認しましたぞ」

「それはさすがだな、ミクトランテクゥト。
 して、その時に人間大のナメクジなども呼び出したりしなかったか」
「ああ、『Glaaki』の事ですな。
 出ましたとも。
 さすがに我も人間大のナメクジを見たのは初めてでしたからな。
 驚きましたぞ」
「それでそのナメクジをお前どうした?」
「ナメクジ等気持ち悪いだけですからな。
 その辺の川に捨てました。
 そこの湖にでも流れ着いた事でしょう」

「ジージーマイン、電流だ」

「ハッ
 『ディメンションサンダー』」

ジージーマインの両腕が発行する。
右腕から左腕へ流れるエネルギー。
流れる通過地点には黒い死霊術師。
稲妻のような光を放つ。

「ンギャハ!ムヒョホヒョホ!ンギャガギャ!」

意味の分からない言葉を発しミクトランテクゥトは倒れた。
身体中から焼け焦げた臭いを発してる。
通常の生物なら間違いなく即死。
まぁ骸骨だし大丈夫だろう。

「シアカテル、向こうの世界に戻ったなら。
 コイツの魔導書は全て焼き払え」
「何故です~。
 貴重な書物ですぞ。
 王の為さる事とは思えません~」

ミクトランテクゥトは焼け焦げたハズなのに、いつの間にか平気な顔。
俺に詰め寄って来る。

『ディメンションサンダー』

「ンギャンギャハヒャ!ムヒョホヒョヒョヒョ!ンギャガギャギャギャ!」 

今度こそ黒いローブを纏った死霊術師は倒れた。
ローブが燃え落ちて骸骨の姿が見えてるな。
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