上 下
140 / 191
Scene24 地下室探偵高天原宇宙と俺の教会の部屋

第140話

しおりを挟む
「それで、続きは早くしなさいよ」

スペース刑事見習いキャンディーが急かす。

「いやだなぁ。ここ僕の見せ場なんだよ。『名探偵、皆を集めて、さてと言い』ってヤツだよ。スペース刑事はヤダなぁ。常識を知らなくて」

「常識なの?」

キャンディーは周囲を見回す。
周囲に居るのは七鮎川円花、五古河逆、俺。
あまり常識には自信の無い連中ばかりだな。

「つまりね、水源だよ。水道水、そして川、多摩川。
 先ほど言ったゾンビ多発地帯を流れるのは多摩川。奥多摩湖から流れてる。更に東京の水道水でもあるね。
 千葉方面には荒川が流れてる。これは主流は利根川系。東京の水道水の中心は昔は多摩川系だったんだけど、今では多くを利根川系に頼ってると言われてる。
 神奈川になると相模湖から来る相模川、水道水も同じ相模川系になる」

「要するに、多摩川。多摩川を流れる水に触れたか、もしくは多摩川系水道の水を飲んだ人間。それがゾンビになってる。それが僕の推論だ」

「『Glaaki』と言うのはそんな能力が有るのか」

ゾンビ化する水を造り出す。
その水に触れた人間、口にした人間をゾンビにしてしまう。

「さてね。『Glaaki』が出て来る小説は少ないんだ。原典では犠牲者に触手のような棘で刺してゾンビにすると言う。
 オーストラリアではナメクジを食べた人間が死亡した例がある、ナメクジの身体にいた寄生虫が大脳に感染したのが原因。
 仮にも邪神なんだ。水の中に棘の成分を流し込む。その水に触れたり飲んだ人間の脳へと棘が辿り着くとゾンビ化する、その位は起きてもおかしくないと思うね」

俺はキャンディーの顔を窺う。
邪神のコトなど、俺は知らない。
キャンディーはそいつらを追ってきたのだ。
専門家、何か知っていてもいいハズだ。

「うん、充分有り得ると思う。
 以前、別のトコでも『Glaaki』の犠牲者が出たの。
 とにかく犠牲者が増えて増えて厄介だったわ。
 本体が触手で刺すだけで発生してるとは思えない」

円花がまとめる。

「奥多摩湖に『Glaaki』が居る。
 そこから流れる多摩川の水に触れた人間、飲んだ人間の体内にその『Glaaki』の棘の成分、もしくは呪いかしら、それが入り込む。
 入り込んだ棘の成分は脳を目指す。
 脳に辿り着いてしまったら人間はゾンビ化する。
 同じようにゾンビ化した人間に噛みつかれるとその体液が移る。
 体液を通じて『Glaaki』の棘成分が噛みつかれた人間に移る。
 噛みつかれた人間も脳に辿り着いてしまったらゾンビ化する。
 そういう事ね」

「そう、円花ちゃんワトスン役向いてるね。普通の人に説明するのが上手い。僕がホームズでキミワトスン。
 そう言えば手塚治虫先生の『三つ目がとおる』ってマンガ。あの主役の写楽保介とヒロインの和登千代子ってシャーロック・ホームズとワトスンのもじりなんだってね。子供の頃全く気付かなかったよ。さすが手塚治虫先生だね」
しおりを挟む

処理中です...