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Scene23 キャンディーと俺の夜の小学校

第133話

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「で、要するに何なんだ」
「えーっ、多元宇宙に関してイチから説明するのかい?
 ……どう言ったモノかな」

「いいかい、真悟くんが現在サイコロを持ってるとしよう。そのサイコロを振って一の目から六の目までが出る確率は等しい。だから、真悟くんが一の目を出した世界も有れば、四の目を出した世界も有る。サイコロを振った瞬間、宇宙は六個発生するんだ。これが並行世界の基本的な考え方。
 あらゆる選択の先に、全ての確立の先に無限の世界が存在する。その中には多次元世界の状況を把握し、調べている捜査官が居る世界も有るだろう。もしかしたら彼らは『外宇宙邪神』と敵対してるかもしれない。同様に科学じゃ無くて魔法が発展してる世界も有るかもしれない。勇者が魔王を封印したり、勇者の神器で少女が魔法少女になれたりする世界。そこから『水流のブレスレット』はやって来たしスペース刑事ゲンもやって来た、そんな訳だね」

「分かるような、分からんような理屈だな」

「今度『ノエイン もうひとりの君へ』見てくれないかな。アレなら相当詳しく説明してたと思うけど」

テレビアニメか。
また余裕の有る時にだな。

「今日はもう切るぞ、じゃあな」
「ちょっと真悟くん……」

俺はスマホをしまう。

正面に人影。
黒い地味なドレス。
シスターだな。
シスター・クリスティーナでは無い。
背格好が違う。

少し小柄な人影、だけどバストやヒップは立派。
見覚えの有るボディライン。

彼女は人の少ない方へ歩いて行く。
校庭には見張りらしき大人たちが居る。

体育用具室だろうか。
プレハブの建物に入って行く。
女性は建物内の暗がりでうずくまる。

「大丈夫ですか」

俺は声を掛けた。
彼女は飛び跳ねた。

「何よ急に、ビックリするじゃない」

スペース刑事見習いキャンディー。
俺より年上であろう女性。
彼女の目のフチが少し赤い。

「どうしたんですか、その服装」

彼女は修道服姿。
小学校に来た時は銀色のメタリックなスーツで特撮ヒロインと言った風情だったのだが。

「貸してくれたのよ、シスター・クリスティーナが」
「そうなんですね、お似合いですよ」

「そうかしら、地味な色だしちょっとキツイわ」

確かに少しサイズが合ってない。
本来ボディラインをあまり見せない筈の修道服。
小さいサイズなので、キャンディーのメリハリの有るボディが強調されてるのだ。

「水着姿も素敵でしたけど、そんなシックなドレスもキレイです。
 キャンディさんはプロポーションが良いのでなんでも似合いますね」
「へへへ、ありがと」

彼女は潤んだ瞳で笑って見せた。
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