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Scene22 七鮎川円花と俺の儀式の場

第124話

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俺の前でグッタリしている円花。
汗をかいてポーっとしている姿は少しセクシーだが。
そんなコトを言ってる場合では無い。
のぼせて意識がハッキリしていないのだ。

キャンディーとゲンが隣に縛られていた炎城寺由羅を救い出す。
縛り付ける鎖をキャンディーが拳銃で撃ち抜いた。
由羅も同じくのぼせて意識がハッキリしていない。

「暑いものな」
「アタシ達だって倒れちゃいそうよ」

辺りにはまだ水蒸気が立ち込めている。
徐々に蒸気が収まってはいるものの、まだ温室に居るかの様だ。

「キャンディー、円花の鎖も撃ってくれ」

俺は自由になった円花を連れて行く。
床に挟まれたちょっとした水たまり。
この部屋は水場だらけだが、円花と由羅が居た場所は高くなっていた。
そこに他の水と分かれて浴室程度の水場が有ったのだ。


「円花、しっかりしろ。
 アイスビュレットが使えるか?」

円花はフラフラしながらも頷いた。

『アイスビュレット』
氷の礫よ、敵を撃て!

水たまりに氷の礫が放り込まれ急速に冷えていく。
数発の『アイスビュレット』で冷えた水。
俺は円花と由羅を放り込む。

「冷たいっ、けど気持ちいいです」
「アンタ、放り込むのは乱暴だぜ。
 だけどサンキューな」

何とかなったようだ。
円花も由羅もボーっとしていた顔がマシになる。
俺も冷水で軽く顔を洗う。
温室のような部屋に長時間いたら、俺まで倒れる。

キャンディーやゲンも同じだ。
冷水を浴びてサッパリしている。

「キャンディーさん、貴方達の仕事も終わったんですよね」

「そうね、こっちはここまで数を減らせば十分でしょ」
「そうだな、むしろもう一つだな」

もう一つ?

「問題は『Glaaki』の方ね」
「影響を受けたヤツも相当いるみたいだしな」

『Glaaki』。
ゾンビ騒動の元凶の方か。
それもこの二人は探していたのか。
なら彼らに任せればこの騒動は収まるという訳だ。

「あの真悟さん、彼らは?」

円花が訊く。
そうだな円花は知らない。

「円花を助けに来た俺とたまたま行き会った。
 Deep Ones、この不審な連中を捜査に来たスペース刑事の方。
 女性がキャンディーさん、男性がゲン」
「はぁ、スペース刑事ですか?」

あからさまに不審な表情を浮かべる円花。

「あまり詮索してやるな。
 偽名だろうが、協力してくれてるんだ」
「でも、あの銀色の服……
 あれはどこかで見た覚えが有ります。
 ……あの男、まさか?!」


その時である。
ギャッ、グガァッ!
Deep Ones。
それも大型。
他の人間風魚ガエルが2メートル前後だってのに。
この個体は4メートル近い。
巨大なバケモノが槍でキャンディーを襲う。

襲い来る凶器に硬直してる女性。
女性を突き飛ばし、その前に立ち塞がった男。

スペース刑事ゲン。
ゲンの胸元を槍は貫いていた。
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