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Scene21 キャンディーと俺の水が有る部屋

第121話

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「これ拳銃じゃない、どうしたの?」

「ゾンビが街にあふれて危険でしたので。
 警察官の方から譲って戴いたんです」

この日本の常識を知ってれば明らかにデタラメと分かる。
しかしキャンディーは納得したようだ。

「原始的短銃、こっちが引き金ね。
 一応オートマティックで弾は補充されると。
 オッケー分かったわ。
 これで使える」

キャンディーはニヤリと笑みを俺に向ける。

「任せときなさい。
 銃の腕はこれでもAプラスなの」

Aプラスがどの程度か俺には伝わらないんだがな。

キャンディーは手の中でトカレフをクルリと回転させる。
Deep Onesに向けて引き金を引く。
魚ガエルは胸元から体液を飛び散らせて倒れる。
確かに銃の扱いは手慣れている様だ

更に数体のDeep Onesが水から上がってくる。
キャンディーは慌てもせず銃を向ける。
水着女が銃をバケモノに向かって乱射。

『キャンディーショット』

何故か技名まで叫んでるな。

「あっ、弾が切れたじゃない。
 どうなってんのよ」

そりゃそうだ。
トカレフの装弾数は八発。
乱射したらすぐ無くなる。

俺は予備の弾丸を放る。

「ええと、ここがマガジンね」

大したものだ。
特に説明もしてないのだが、構造をキャンディーは理解したらしい。
銃からマガジンを取り出し、装填している。
その間は俺がバットでDeep Onesの相手をする。

何だかサウナの様になってきた。
周りの空気が熱くモヤが立ち込めてる。
水蒸気が大量に発生してるのだ。

「そろそろ限界です」

シアカテルが言う。
そりゃそうだ。
プールの水を全部蒸発させるとしたらどの程度エネルギーを食う事か。
一人の力で出来る事じゃない。

シアカテルは額に汗を浮かべてる。
周りの熱気のせいだけでもあるまい。
精神を集中させ続けているのだ。

部屋の中は蒸気が立ち込め、良く見えないが水位は相当下がっている。
倒れたDeep Onesが数頭見える。
この熱でやられたのか。
倒れた身体が完全には水没していない。
既に水位は30センチ程度。

「充分だ。
 よくやったぞ、シアカテル」

「はっ、有りがたきお言葉」

シアカテルは極上の笑みを俺に向けた。
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