上 下
119 / 191
Scene21 キャンディーと俺の水が有る部屋

第119話

しおりを挟む
Deep Ones。
蛙のような緑の肌。
せり出した顎、サメを思わせる牙が口から覗く。
上半身は滑めつくが、ウロコ状。
腕組した全体のフォルムは人間。
頭部や腕にヒレのような形状の物が揺れる。

魚じみた蛙人間。
むしろ人間じみた、蛙魚だろうか。

水から上半身を出し、こちらを睨みつける数体のDeep Ones。
どう見ても友好的な態度じゃない。

サイズは少し大柄な人間くらい。
瞼の無い眼球が不気味だ。

ギャッ、ガヤギャグガァッ。

不快な呻き声を上げるDeep Ones。

「コイツラ怒ってやがるぜ」
「えーと。
 『神聖な場所に入り込みおって、愚か者ども』
 『若い女性が手に入ったのだ。
  子作りの儀式を邪魔するとは許せん』
 そんな所かしら」

「キャンディーさん。
 彼らの言葉が分かるんですか」

「ええ、翻訳機能ONにしてるから。
 自動的に訳してくれるの。
 でもアイツラ高度な知識は持ってないわね。
 意味がキチンとは取りづらいわ」

よく見るとキャンディーは耳にイヤフォンを付けている。
小型の物だが、そんな機能が有るのか。
まあ現在のスマホでも音声から翻訳なら出来ない事も無い。
驚くほどでも無いか。

「子作りの儀式ね。
 ようするにカワイコちゃんとお楽しみの邪魔されたってか。
 そりゃ怒るわな」
「バカバカ。
 コイツラの気持なんて考えなくていいのよ」

言われてみれば、水面の先。
遠く離れた場所に舞台の様に浮いてる場所が有る。
子作りの儀式とやらを行う場所か。
何か人影らしき物も見えるが遠くてハッキリしない。
もしや円花と由羅なのか。

Deep Onesから何か飛んでくる。
三つ又の槍。
三叉戟、トライデントってヤツか。
Deep Onesが投げつけて来る。
俺はバットで迎撃。
撥ね返す。

「超電磁原子核融合殺戮剣!」
何本も飛んでくるトライデントをゲンも切り落す。

こっちは海の中へ攻撃には行けない。
どう考えても水中での行動力は向こうが上。
ノロノロ泳ぎながらの攻撃が水棲人に通用するとは思えない。

「あの、アレをやって戴けないですか」
「お前が魔力足りないなんて事は無いだろ」

シアカテルが俺に切り出す。
サイツォンじゃないんだ。
魔力は人並み以上。
魔法使いとして魔王の四将に選ばれた闇の妖精。

「少し大がかりな技を使います。
 この場面で効果が有るかと」

シアカテルが言うなら信じよう。
俺は軽く彼女の肩に手を置く。
横では飛来するトライデントをゲンが切り落としてる。

「ありがとうございます。
 貴方の力を感じます」

「バカバカ。
 こんな時に何イチャついてんのよ」

キャンディーが頬を膨らますが、イチャついてるんじゃないぞ。

「貴方達、私の後ろへ」

シアカテルが杖を構え、唱える。

『ダークブラスト』
暗き熱風よ、全てを滅せ!
しおりを挟む

処理中です...