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Scene17 水着女性と俺の冬の海辺

第105話

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「『外宇宙邪神』ですか。
 横須賀、ここから東の方に行った場所で、
 大きな怪獣が発見されたという噂が有ります。
 それと関係あるんでしょうか?」
「そうだ。それが『外宇宙邪神』だな。
 邪神をこの時空に存在させちまうなんて遅れを取った」

サングラスを掛けた男、スペース刑事ゲンが話す。
名前は偽名だろうが。
普通に話せば、真っ当な頭脳の持ち主の様に会話出来るんじゃないか。

「えーと、貴方はその『外宇宙邪神』を追って来たという事でしょうか」
「正確には違うな。
 アレは外宇宙と言う通り、この世界には簡単に実体化出来ない。
 ここには普通出現出来ないハズなんだ。
 『Dagon』が現れたって事は、その教団や信者、
 小物が少しづつこの世界に現れてる。
 そいつらは大したことは出来ないが、徐々に空間を侵食する。
 徐々に『外宇宙邪神』が実体化可能な世界に作り変えちまうんだ」 

「本当は侵食が進む前に何とかしに来たんだがな。
 この女が場所を間違えたんで、遅くなっちまった」
「うるさいわね。
 アンタが現地人を斬り殺したりしなきゃ良かったのよ。
 アレで報告書作成しなきゃいけなくなったんじゃない」

水着の女性が男に向かって言う。
女性は男の方を向いていて、今は背中が見える。
パーカーの下からビキニに包まれるお尻が見えてる。
ツンと上を向いた形の良いヒップ。
俺は女性の身体を眺めながら考える。

インスマス人。
彼等は神社や寺を壊している。
徐々に増えている不気味な男達。
この空間を侵食する。
空間を侵食という意味を俺は正確には理解出来ない。
しかし、徐々にこの世界を自分達の世界に近付ける。
世界を変えれば邪神までもがこの世界に現れる事が可能。
佐緒里はインスマス人が神社や寺を破壊し、この街を乗っ取りつつあると言っていた。
その行動の結果、あの『Dagon』が現れるようになった。
この男の説明を真に受けるなら、そう言う事だ。

「その小物と言うのに心当りが有ります。
 インスマス人と呼ばれてる不気味な男達。
 自分もそいつらに攫われた女性を助けるためここに来たのです」
「現地の女性が攫われたってのか?」

「そうです。
 自分の知り合いの女性。
 二人もしくは三人。
 ここは神社の跡。
 アレがおそらくはヤツらのアジト」

俺の指差す先。
壊された廃材が並ぶ、その先。

石が積まれていた。
まるで遺跡の様だ。
精緻な造りでは無いが、白い石が整然と積まれ建物の形を成している。
神殿の様にも見える。
おそらくヤツらにとっての神殿。
その中心には人間が入って行けそうな空洞。
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