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Scene16 五古河逆と俺のビジネスホテル

第102話

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俺はスマホを逆に放る。
運転中だ。
運転中のスマホ通話は避けた方が良いに決まってる。

「何だい、真悟くん。あれ、逆ちゃんかい? なんでこのスマホで逆ちゃんが掛けて来るのさ」
「……………………
 そんな訳でな。
 オレの方は少しドジった。
 横須賀基地にはあまり近付かない方が賢明だ。
 空母を壊された米軍は相当ピリピリしてる」

「ああ、米軍の中でも噂になってるみたいだね。
 日本が実は怪獣を秘密兵器として隠してたって。
 兵士達のSNSに少しばかり拡散しといたよ。
 あれは『ゴジラ』じゃなくて『Dagon』だって」

ウツの奴は余計な事をしてるな。

「円花たちの方は上手く魔法少女と接触したらしいんだが。
 んで何だっけか、草薙の」
「インスマスだ」

インスマスと呼ばれてるらしい、不気味な男達。
あと『Deep Ones』様とか。
「父ナル『Dagon』様ノ為ニ」
「母ナル『Hydra』様ノ為ニ」
そんな事を言っていたと言うヤツら。


「インスマス!?来たねー。『インスマウスの影』。
 本当にクトゥルフ神話の世界じゃない」

やはりウツは何か知っていた。

「インスマス人。『インスマスの影』はクトゥルフ神話の基本とも言える小説だね。
 古い漁村が舞台。その村は半魚人みたいな人間や蛙を連想させる外見の人間が多くて周りの村に敬遠されてるんだ。彼等こそインスマス。その中でも血が濃い人、完全に水に棲む生物として書かれてるのが『深きものども』Deep Onesだね。
 彼らが崇めている邪神が『Dagon』であり主神『Cthulhu』クトゥルフなんだ。『Hydra』ってのは『Dagon』と同じ邪神。一応夫婦って事になるのかな。父が『Dagon』、それに対し母と呼ばれてるのが『Hydra』。そうか、考えて見れば空母を襲ってたのが『Dagon』とは限らない。あれが『Hydra』だったって事もあるかもね」

「つまり、あいつらは『Dagon』の下っ端な訳だな。
 それで下っ端の中でも多少リーダー格なのが『Deep Ones』」

「うーん。ニュアンス的に若干どうだろうと言う気はするけれども間違ってはいないかな」

邪神の手下なら、完全に敵対してると決まった訳でも無いな。
襲ってくる分には倒すが、積極的に争う謂れも無い。

「怪獣の手下か。
 仮面ライダーにおけるショッカーの戦闘員みたいなものだろ。
 雑魚じゃねーか。
 ドンドンぶっ倒しちまおうぜ」

食欲だけじゃ無く、戦闘欲も出てるのか。
逆は物騒な事を言う。
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