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Scene16 五古河逆と俺のビジネスホテル

第100話

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ビジネスホテルで俺は夜明かしする事にした。
車で逆を連れて行こうかと思ったのだが、サイツォンは止めた方が良いと言う。

「しばらく寝かしといてやんな。
 汗かいてるだろう。
 体内でこの女の生命力と負傷部が争っている証明さ。
 動かさない方が良いぜ」

ホテルの最上階にいる俺。
周りの部屋をハジからチェック。
生き残りの人間はいない。
ゾンビはいた。
シアカテルとサイツォンが片づけて、表へ放り出す。
階段からの入り口は施錠。
エレベーターは動かないようモップで開閉ドアを開けっぱなしにセット。

これで夜寝てしまっても何とかなるだろう。
一応、逆と俺が寝る部屋も中から鍵をかける。


「あの……
 まさかとは思うのですが、
 寝てる女性や弱ってる女性を襲うというのはですね。
 いくら貴方のすることでも見過ごせないと言いましょうか。
 やはり私も女性ですし……」
「何を考えている?
 そんなことはしない」

意識の無い女を襲った事など俺は一度も無いぞ。

「いや、勿論そんな方では無いと信じてはいるのですが……
 こちらに来て大分人間性や行動が変わったようですし」
 
それはまぁ自分でも自覚している。

「そうだよな。
 アンタどうしたんだ」
「うーむ、若いからかな。
 この体は十台の男子の物。
 その衝動に突き動かされてるのか」

俺は腕組みをする。

「これはあまり大きな声では言えないが、
 この世界の女性は綺麗だ」

顔の造作だけで言えば、シアカテルなどは間違いなくそれ以上に美人だが。
メイク技術に、ファッション。
色とりどりの洋服で女性は着飾る。

「あと、この世界の女性はスケベだ。
 頭にストレスと満たされない欲望がやたら詰まってる」

ストレスと欲望が詰まってるのは男も一緒だがな。

元の世界では産めや増やせや。
子供を作れる身体になった男女がいつまでも相手が無く経験しないという事は有りえない。
適当な番の相手がいなければ、遠方から連れてくる。
それでもバランスが合わなければ、複数の男子が女性を共有。
逆に複数の女性が男性を共有する。
辺境では当たり前の光景である。
若い男女が子づくりしないは許されない。

ところがこの世界では。
何時まで経っても相手がいない。
子孫を残す為の生命活動を行っていない人間も多い。
不自然なのだ
女性だって性欲が満たされずにいる。
満たされない女性の欲望が充満した世界。
圧し殺された欲望が俺を突き動かす。

サイツォンは俺に言った。

「あのよ、あの『ワイルドビーティング』副作用が有るんだ。
 忘れてたぜ」

「身体の活動を活発にさせるだろ。
 結果的に食欲が旺盛になるから朝飯用意しといた方がいい」

ジージーマインの移動能力で、デパート倉庫から適当な食料を調達。
まだ痛んでないパンや飲料。
日持ちしそうな缶詰。
ついでだ。
小学校に提供する分も用意しよう。
車のトランクに乗せられそうな程度の量を積み上げる。

ジージーマインが連れ、シアカテルとサイツォンが去って行く。

「おやすみなさい」
「サラバ、マタ逢ウ日ヲ楽シミニシテイル」

サイツォンが消える寸前、俺に囁く。

「副作用だがな。
 食欲と同じように性欲の方も旺盛になるからな。
 気を付けろよ」

なんだと。
サイツォンたちが消えていく。
残されたのは俺と寝ている逆。

俺の後ろに気配がする。
誰か立ち上がっている。
凄まじいまでの欲望の気配。
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