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Scene.EX02 速見佐緒里と俺のいない教会

第92話

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EX EPISODE 05

でもアタシは考えが足りてなかった。
神社や寺が狙われるんなら。
当然狙われてしかるべき。
教会。

「おいっ、アイツら」
「まだ夕方なのに、どうしましょう」

海辺に現れた不気味な男ども。
今は夕方、まだ明るい。
みんな見てるってのに集団で何処かへ向かってる。
佐緒里の家を通り過ぎていく。

「警察に通報しようかしら」
「ゾンビ騒ぎで警察官も居なくなってる。
 電話しても誰も出ないぞ」

そんな両親の会話を聞きながら、アタシは裏口から抜け出す。
アイツらの行く方向ってまさか。

街の教会。
カソリック教の教会本部なんだって。
教会と聞いて連想する礼拝堂だけじゃない。
普通の建物、5階建てのビル。
ビルの窓に十字架の紋章が有るくらいでお役所みたいな場所。

中に礼拝室がある。
教会は裏手が学校の敷地と繋がってるのだ。

学校の生徒も週に一回礼拝に行く事になってる。
学校はクリスチャンじゃなくても受け入れてる。
アタシもクリスチャンじゃない。
親は小学生のウチから英語教育を受けさせたかったらしい。
学校には本場から来た先生が英語を教えてる。

でも礼拝室に行くとやっぱ厳かな気分になる。
聖書の授業も有るし、生徒でキリスト教に転んじゃう人も多いらしい。
親が仏教徒でも、仏教の事をキチンと教わる訳じゃ無い。
その状況でキリスト教の事を教え込まれたら。
子供なんてイチコロよ。

話が逸れちゃった。
その教会本部にシスターたちが寝泊まりする場所も有る。
由羅も一緒だ。
教会本部に住んでるの。

そしてその方向に不気味な男どもは向かってる。

アタシは走る。
先回り。
裏側の小学校の入り口に向かう。
けど、遅かったか。
教会の建物にもう男どもが詰め寄せてる。
シスターや関係者と揉めている。
それを見ながら裏側から入ってくアタシ。

「佐緒里ちゃん、どうしたの」
「どうしたのじゃないよ。
 無事だった?
 良かったわ、由羅」

「あの表の人達なんなの、不気味」
「アレだよ、狂ったカルト集団。
 蛙人間」

アタシたちは二階の窓から表の騒ぎを眺める。
詰め寄せてる男達は三十人から五十人。
物騒な雰囲気。

なんとなくアタシは妙な気がする。
ブキミな男達。
それでも少しずつ違う。

奥の方遠巻きにしてる連中は顔を隠す服装。
多分緑色の肌を隠してる。

教会に入ってこようとしてる連中はもっと普通の人っぽい。
少し目が飛び出てたり平べったい顔だったりする程度。

中間辺りに居るのは、もっと蛙顔。
顎のエラが這って、目も両脇に分かれてる。
口もきかない。

変さにも程度が有る?
教会は聖なる場所。
完全な蛙人間は近寄り辛かったりして。

教会に入ってくる普通に近い人間は言葉も喋ってる。

「ココハDeep Ones様ノ土地トナルノダ」
「異教ノ建物ハ壊スマデ」

「父ナル『Dagon』様ノ為ニ」
「母ナル『Hydra』様ノ為ニ」

うわー。
本当に言ってる事がヤバイ。
完全にクレイジー。
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