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Scene.EX02 速見佐緒里と俺のいない教会

第88話

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EX EPISODE 01

由羅がネックレスを見つけたのは教会だった。
朱く光る宝石のついた首飾り。

由羅はアタシの友達。
彼女の髪は茶褐色。
染めても脱色もしてないけど。
ナチュラルにその色。
多分外人の血が混じっている。

由羅はウェーブの掛かった前髪で目を隠してる。
顔が良く分からないけど。
彫りの深い顔立ち。
でも肌の色はアタシたちとほとんど変わらない。
言わゆるハーフなんじゃないかな。

その由羅によく似合いそうなネックレス。
アタシが彼女の首にそのネックレスをかけると彼女は言った。

「ダメだよ、佐緒里ちゃん。
 落とし物でしょ、届けなきゃ」

彼女はマジメ人間。
背も高くて髪も茶色。
中学生くらいには見られる。
親には不良っぽく見られたりもするのだけど。
実のところ気の弱いマジメ少女。

「いいんだよ。
 落とし主なんて絶対出てこないよ」

もしも出てきたら返せばいい。
それにネックレスは似合ってる。
由羅に誂えたみたいに似合ってるのだ。

「でも」
由羅はまだ逡巡してる。

「んじゃ、これはアタシの。
 アタシが拾った、アタシの物。
 アタシのネックレスを由羅にプレゼントする」

それなら文句ないでしょ。

「分かった……。
 ありがと、佐緒里ちゃん」

由羅は小さく笑った。
やっぱりネックレスは似合う。
前髪で隠しちゃってるけど、由羅は美少女。
たまにこんなオシャレもしないとね。

「可愛いなぁ、チクショウ」

アタシは彼女を抱きしめて振り回す。

「うわっ、止めて。
 止めてよ、佐緒里ちゃん」

アタシもハーフに産まれたかったぜ。
そんな台詞は口に出しては言えない。

12年前のこと。
赤ん坊が教会に置きっぱなしになってた。
それが由羅だ。
いわゆる捨て子ってヤツ。
教会は児童養護施設ともつながりが有って、彼女はそこに預けられた。
それからいろいろ有って、今はシスター・クリスティーナの養女。

彼女の産みの親は不明。
どちらかが外国人。
別の国へ逃げてしまったのかも。

え、え、なんだ?!

由羅の身体が光ってる。
光に包まれた美少女。
何が起きてるの?

やがて光が収まるとそこには魔法少女が立っていた。
朱い身体にピッタリした衣装。
その上に金属製の鎧。
透けるヒラヒラしたマントを羽織ってる。

これは。
なんというかアニメやゲームに出て来る。
魔法少女としか呼びようが無い。

「へー、何か力が溢れてくるのを感じるぜ。
 サンキューな、サオリ」

アナタ誰?

茶褐色な髪から覗く意思の強そうな顔。
ワイルドな笑顔を浮かべる。
アタシの知らない炎城寺由羅がそこに居た。
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