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Scene14 シアカテルと俺の助手席

第78話

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俺は片手運転をして、片手で胸を掴む。
シアカテルの突き出た胸。
俗な言い方をすればおっぱいモミモミ。

片手運転は危険だが、現在車線には俺の車だけ。
対抗車両も、追ってくる車も無い。

残念ながら、俺の片手は空を切る。
魅惑的な胸に触る事は出来ない。
美しい黒い肌に俺の腕はのめり込む。
何の手応えも無い。

「いきなり何をする。
 そこに飛ばしているのは映像と音声のみ。
 触れる事は出来ないぞ」

シアカテルの頬が少し赤らんでる。
胸を揉まれたのは伝わってるのか。
 
「そうか、ついでに感触もとばせないのか」

俺は訊いてみる。
更に腕を上から下の方へ。
ムッチリした太腿を撫で、手を足の付け根の方へと。

「キャッ!
 そんな器用な事出来るものか」
「なら何で反応してるんだ。
 お前の方には感触が有るのか」

シアカテルは可愛い悲鳴を上げる。
俺の手に感触は無いが、彼女の反応を見るだけでも楽しい。
そのまま尻の方に手を伸ばし撫で上げて見る。

「有りません、無い。
 自分が触れられてる映像を見るだけでも、変な感じがするんだ」
「実体も飛んでくればいいじゃないか」

「高速で移動してる物体の中に、空間転移など。
 自殺行為に他ならない」

何だ、原子融合でも起こすのか。
転移魔法とやらも不便だな。

シアカテルは俺の方を眺めてる。

「あの……」
「記憶に混乱は無い。
 変に案ずるな」

「そうなのですか?
 ならば何故」
「……俺は草薙真悟、この世界の高校生だ。
 記憶は有る、有るがそんなモノ実態が伴わなければ妄想と変わらない」

「俺はこの世界ですでに三年暮らしている。
 このまま、生きていくので構わない」

息をのむシアカテル。
ショックを受けたのが伝わってくる。

「それは…………
 でも、しかし……」

何か言おうとした彼女。

しかし後部座席から声がする。

「くー、くー、うん?
 ……何か聞こえたか」

逆の奴が声に気付いたのだ。

俺はすぐにラジオのスイッチを付ける。
ザザザ……ザ。
雑音が流れる。

「ああ、すまん。
 起こしてしまったか。
 眠気覚ましにラジオでも聞こうと思ったんだが、
 やはりまともに放送していない様だ」

俺は逆に言う。

「そうか、まあそうだろうな。
 草薙の、寝ぼけて事故なんて起こすんじゃねーぞ」
「ああ、大丈夫だ。
 コーヒーを飲む。
 安心して逆は寝て置け」

助手席には既に誰もいない。
キラリと光るモノ。
水晶か。
そんなモノが残されていた。
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