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Scene14 シアカテルと俺の助手席

第77話

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俺達は車で高校を出た。
俺は運転。
円花と逆は後部座席。

「では確認しますわよ」

円花が言う。

「13時には横須賀駅に着けるでしょう。
 そこで逆は米軍基地へ向かう。
 状況を確認。
 七鮎川や他の親族が無事なのか。
 我々を受け入れられる状況なのか」

「わたしと草薙先輩は逗子へ向かいます。
 距離で言えば、3キロ程度。
 車ならすぐ着けます。
 そこで炎城寺由羅さんを捜索」

「15時に横須賀駅でまた集合。
 米軍で夜明かし出来るなら米軍基地へ」

「米軍が受け入れられる状況に無かったら、
 また高校へ」

「いいだろう」
「チッ、やっぱりスマホが使え無いってのは不便だな」

俺は車を走らせる。
通常道路を南下する。
たまに事故を起こしてる車や、打ち壊されてる大型車両を見かけるが通行の妨げという程ではない。
暗がりに見かける。
赤く浮かび上がる目、蠢く気配。
普通の人間は見かけない。
自宅に閉じこもっているのか。
映画のパターンだとショッピングモールにでも集合しているかもしれない。

やがて円花と逆は後部座席で寝てしまった。
江の島に行った事が有るとか、鎌倉なら親戚が住んでるとか言っていた。
女子の会話は限りなく続き、終わりが無い。
俺はあまり口を挟まず運転に集中していた。
気が付いたら寝息が聞こえてきたのだ。

ウツは二人とも明け方まで起きていたと言っていた。
ニ、三時間しか寝ていない。

いかんな。
寝息を聞いてると俺まで眠くなる。
俺の方は深夜寝て、早朝ウツに起こされた。
睡眠時間は短めだが、女子よりは長い。

車の助手席は空っぽ。
しかしその空間に幾何学的文様と象形文字は浮かび上がる。

「何だ、眠気覚ましに来てくれたのか?」
「そんな筈は無いでしょう」

「なら、何だ?」
「昨夜はまさかと思いましたが、その落ち着き。
 やはり貴様…………
 いや貴方は……」

そこには女性が居た。
いや、いない。
うっすらと透けて見える女性。

素晴らしいプロポーション。
高く突き出た胸を申し訳のような鎧が覆う。
下腹部も同じ。
腰のラインがハッキリ見える防具。

黒い肌の女性、闇の妖精。
ウツはデックアールブと言っていたか。
魔王の四将。
シアカテルがそこに居た。
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